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ikuttiさん
ikutti
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雇われの市へ連れていかれた夢見る少女サリー。19世紀後半のアイルランドを舞台に13歳にして親元を離れ働く成長の物語。
サリー・ガラハーは13歳。雇われの市に11歳の妹ケイティと共にやってきている。どうしてこんなことになったかというと、父に死が突然降りかかり、ガラハー家に不幸が押し寄せたからだ。畑、牧場、漁に加え、なんでも屋をやっていた父がいなくなってしまうと生計が成り立たなくなってしまったからだ。地主に支払う代金を得るための母の苦肉の策だった。

しっかり者でよく手伝いをするケイティと違ってサリーは読書好きの夢見る少女だった。家事はできるだけ逃げ、自分の世界を作ってきた。雇われの市は子供だけではなく大人もいる。値段交渉し、働き切った半年後に代金が支払われる。

「雇われの市? それって、奴隷と同じじゃない! 『アンクルトムの小屋』そのものだわ! そんなもの、行かない。母さん、いやよ!」


母親の機転でサリーとケイティは奉公先が近いところで働けることになった。ケイティはおばあさんの手伝い、サリーは牧場と子供たちの世話。一日がかりでバリゴールへ。3人の子供と間もなく臨月を迎える奥様の元、朝食、牧場、昼食、子供たちの世話と慣れない仕事をこなしていくサリー。何よりも辛いのは母国語を話せないこと。週末ケイティと会えることを楽しみに。

産後の肥立ちが悪かった奥様が入院することになり、サリーは子供たちと共に残される。このひと月は家を仕切り、子供たちが許されなかったことを許し、クリスマスもパーティを開こうと楽しみにしていた。サリーは徐々に大人たちに信頼をされていく。クリスマスの前日帰宅したご主人に驚くご褒美をもらったのだった。

物語の中によく出てくるパーネルという人物はアイルランドの自治を訴える政治指導者でした。サリーとケイティの奉公先の主人やおばあさんはパーネルを嫌っていました。サリーの故郷ドニゴールは北西部の海岸沿いの町で現在のアイルランドにある。奉公先のティローン地方は現在はイギリスの一部で北アイルランドと呼ばれるところにあります。当時支配していたイギリスはプロテスタントに改宗を受け入れないアイルランド貴族から土地を取り上げ、プロテスタント入植者に土地を与えました。サリーたちの雇い主はイングランド人だったのです。授業で習った英語で彼らと会話をしていたのです。

当時のアイルランドの情勢を物語に加えながら、大人に変わろうとする少女の苦難を描いた良書でした。この本は三部作のようで続きがあるとのこと。サリーの成長を見守りながら次も読もうと思います。

『ステフィとネッリの物語』シリーズを読み終えたときに読みたい本に入れた一冊。『赤毛のアン』あたりにも近い。
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ikutti
ikutti さん本が好き!1級(書評数:421 件)

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  読書&書評リハビリ中

  山登り始めてみました

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