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三太郎さん
三太郎
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最初にタイトルを見たときには、いなくなったロシア人を探す話かと思った。
最初にタイトルを見たときには、いなくなったロシア人を探す話かと思いました。これは津村さんがデビューしたての頃に出した短編集で、「カソウスキ」は無論ロシア人の名前ではなくて「仮想好き」のことでした。

三つの短編が入っています。主人公は皆20代後半で、そろそろ結婚しようかどうしようかと思い悩む年頃のようです。

表題の「カソウスキの行方」のイリエはどうも著者の津村さんとよく似た人なんじゃないかと想像してしまいます。イリエは別れた恋人からは結婚に向かない人だと言われ、会社では後輩の女子と課長との情事に巻き込まれて本社から倉庫に移動になり、落ち込んでいます。その職場には未婚の男子が一人しかおらず、その彼、森川はイリエと同い年だと分かります。そこでイリエは、精神の安定を得るため?自分は森川が好きなんだと思うことにしたのですが、森川はどこから見ても好きとも嫌いとも言えない男なのでした。

偶然、近所のホールセンターで顔を合わせたり、イリエがハンドクリームを作るので保湿剤に尿素が欲しいというと、「園芸用だけれど」といって分けてくれます。ひょんなことから、イリエは森川の別れた奥さんに会うのですが・・・二人の距離は近づいてきているようで、何も起こらないという小説です。

この短編は芥川賞の候補作品に挙げられたそうです。デビュー作の「君は永遠にそいつらより若い」とはずいぶん雰囲気が変わってきていて、後の彼女の私小説っぽい、掴みどころのないような小説になっています。芥川賞を受賞した「ポトスライムの舟」は本作の延長線上にあるのかも。

でも僕は、同じころに書かれた「ミュージック・ブレス・ユー!!」の方が好きかな。若い子を主人公にした彼女の小説は伸び伸びとして鬱屈したところが少ない気がします。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:830 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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