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たけぞう
レビュアー:
ちょっと昔の怪奇小説系の作家さんです。
ゴシックホラーを読んでいた時、光文社古典新訳シリーズの巻末紹介で本著を知りました。ホラー系統ですが、百年近く前の作品集なので、怖さよりも味わいのほうが勝りましたね。わたしは現代ホラー小説がとても苦手なので、同じような人に、百年から二百年前のホラーは余裕で読めますよとお伝えしたいです。

初めて聞く作家さんでした。幻想怪奇傑作選とありますが、現代小説の幻想ジャンルとはだいぶ異なり、理解できる作品が並んでいます。全十一本の短篇・中篇集ですが、幽霊ものが結構ありましたね。また、因果応報や、神の罰といった、人智を超えた現象が題材になっています。つまり仕掛け重視で、人間性に迫る作品は少なかったのですが、趣味が分かれる部分でしょうね。とはいえ、百年前なのであっと驚く仕掛けはありませんが、煽りが少ない分、品は悪くないなという印象です。

炎の舌という作品が印象に残りました。貧しいながらも、精一杯のこころづくしをしたパーティを開いた夫婦。お客さんの中に、とても感じがよいアベックがいました。主催の夫婦は二人のことを知っていて、あんなに感じのいい人たちがなぜいまだに未婚なんだろうねと、不思議に思いつつもほめています。

一方、場面は変わって客のアベックが語り手になります。家に帰り、今日のパーティをズタボロにこきおろしています。こんな人は、いまの世の中に間違いなくいっぱいいて、嫌な人たちの話なんだねと読み進めました。半笑いで読んでいて最後に溜飲が下がる構造なのですが、わたしは見え透いた結末よりも、こんな題材と展開を書き連ねた著者の感情を垣間見た思いがしました。うっくつした気持ちが、小説を書く原動力になっていたのかもしれません。

残念ながら、著者の価値観や登場人物の人間性が伝わる作品が少ないところが、わたしの好みとは違ったのですが、ちょっと昔のホラーを味わいたい人にはいい作品だと思いますよ。百年近く前から残っている小説というのは、それだけでも価値があると思います。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1471 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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