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武藤吐夢
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直接聞かされるより、違うところからより漏れ聞いた話しの方が人は信じるという心理を扱った表題作「傍聞き」。他、三作品。第61回日本推理作家協会賞短編部門受賞作品。
 ミステリーは、切れ味鋭い、どんでん返しのある短編に限る。
 そういう人に、この4つの話しは、おすすめです。

 表題作の「傍聞き」は、第61回日本推理作家協会賞短編部門受賞作品。
 人の微妙な心理を逆手にとった秀作です。
 「これはXXです」と言われても、人は、なかなか聞かない。
 でも、直接ではなく、間接的に「XXだそうですよ」と聞いてしまうと、何だか、それが本当のことのようだと思ってしまう。
 その効果を使った2つの傍聞きが、この物語をおもしろくしています。

 「迷い箱」という話しは、人は、なかなか物を捨てられないという心理を取り扱っています。
 作中の人物が、そんな人に、迷い箱のアドバイスをします。
 とりあえず、捨てていいかなという物を、箱に入れて目立つところにおいておき、捨てるかどうかは後で決めるというものです。
 おもしろい考え方ですね。実生活にも応用できそう。ある男性の自殺未遂の原因と、この話しが関わってきます。

 「899」、これは、消防署の無線の符牒です。
 意味は「要救助者」あり。
 誰もいないはずの火災現場に赤ちゃんがいるというのです。
 突入した隊員。でも、その赤ちゃんはいなかった。
 3分後、仲間が見つけるのだが・・・。
 簡単に言うと、この仲間が隠していたのです。
 その理由が深い。理由を知った時、「なるほど!!」となります。この消防署員のとった行動に納得できます。

 僕が、一番好きだった作品は、「迷走」です。
 これは救急車の話しなのですが、運ばれてきた患者は、隊長の娘を車椅子生活にした裁判の検事。近くには、犯人の外科医もいて、どうやら、二人は繋がっている。
 救急車は、その患者を乗せて暴走する。よくある「たらいまわし」かと思いきや、ラストで凄いどんでん返しがあって景色が一変します。
 娘の敵討ちではありません。
 もう一人の隊員に、ずっと、自分の携帯を耳に当てさせ、「何か、音がしたら教えろ」。ここが大切。ラストに怒濤の展開。
 「何だ、そうだったのか!」と、この隊長に対する不信感が尊敬に変ずる瞬間。
 やられたと思いました。
 無理設定だけど、ラストがおもしろすぎて、これが一番好きですね。
 評判通りの本でした。満足しました。

ページ数 218
読書時間 4時間

読了日 11/9
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
書評掲載URL : http://m181.livedoor.blog/
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武藤吐夢
武藤吐夢 さん本が好き!1級(書評数:1378 件)

よろしくお願いします。
昨年は雑な読みが多く数ばかりこなす感じでした。
2025年は丁寧にいきたいと思います。

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