かもめ通信さん
レビュアー:
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恋人でも夫婦でも親子の間であったとしても、互いの精神的自立が必要であることを、恋する乙女の視点で語ってくれるこの物語。若い世代や親世代にはもちろん胸キュン欠乏世代にもしっかりお薦めできる1冊だ。
午後いっぱい一緒にいられると思っていたから
(公園を散歩しよう)(映画を観るのもいいな)ととても楽しみにしていたのに
会ったとたんに「あまり時間がない」という彼。
いつもいつも、待つのは私、我慢するのは私なんだ。
「もういやなの!」気がつくとザビーネは叫んでいた。
ザビーネは17歳、
2つ年上の恋人セバスチアンが大学入学資格試験と
ヴァイオリンの練習で忙しいことは百も承知だ。
それでもつねに後回しにされることに我慢できなくなって思わず叫んでしまった彼女は
そのときはまだ本気で考えていたわけではなかった
大好きなセバスチアンと本気で別れようとは……。
いつもいつでも一緒にいたいと思うような大好きな相手に
嫌われないように、煙たがられないように、喜んで貰えるようにと
いつのまにか相手にあわせることばかり考えてしまい
“都合のいい女(あるいは男)”になってしまったり、
そんな相手の気持ちを“重荷”に感じてしまったりするのはよくある話。
真新しい黄色のシステムキッチンを楽しみにしていた母の元に届いたのは
母の意見を完全に無視して父が自分の好みで発注した真っ白なキッチン。
「白はいいわね」と自分で自分に言い聞かせる母の姿を見て、娘はいらだちを隠せない。
いつの間にか自分が、
(ああはなりたくない)と思っていたいつも父に従うばかりの母と
同じような態度をとっていたことに気付いてザビーネは愕然とするのだ。
(今ここで寄りを戻したところで、また同じことの繰り返しではないか)
仲直りのチャンスは何度も訪れるが、ザビーネはそのたび踏みとどまった。
けれども彼女はまだ、セバスチアンが好きなのだ。
だから考える。
どうして、どこでボタンを掛け違えてしまったのか。
セバスチアンの望みは?
そして自分自身の望みはなんなのか?
この物語はドイツがまだ東西に分断されていた頃に書かれたYA小説なのだが
若者世代も親世代も、古今東西人々の心模様にはあまり変化がないようだ。
単にジェンダーの問題というだけでなく
恋人であっても夫婦であっても、親子の間であったとしても
お互いの精神的自立が必要であること
それぞれがそれぞれの立場で社会とのつながりを常に考えていく必要があることを
恋する乙女の視点でいきいきと語ってくれるこの物語
若い世代や親世代にはもちろん
恋だ愛だといった気持ちはすっかり縁遠くなってしまった
胸キュン欠乏世代にもしっかりお薦めできる1冊だ。
(公園を散歩しよう)(映画を観るのもいいな)ととても楽しみにしていたのに
会ったとたんに「あまり時間がない」という彼。
いつもいつも、待つのは私、我慢するのは私なんだ。
「もういやなの!」気がつくとザビーネは叫んでいた。
ザビーネは17歳、
2つ年上の恋人セバスチアンが大学入学資格試験と
ヴァイオリンの練習で忙しいことは百も承知だ。
それでもつねに後回しにされることに我慢できなくなって思わず叫んでしまった彼女は
そのときはまだ本気で考えていたわけではなかった
大好きなセバスチアンと本気で別れようとは……。
いつもいつでも一緒にいたいと思うような大好きな相手に
嫌われないように、煙たがられないように、喜んで貰えるようにと
いつのまにか相手にあわせることばかり考えてしまい
“都合のいい女(あるいは男)”になってしまったり、
そんな相手の気持ちを“重荷”に感じてしまったりするのはよくある話。
真新しい黄色のシステムキッチンを楽しみにしていた母の元に届いたのは
母の意見を完全に無視して父が自分の好みで発注した真っ白なキッチン。
「白はいいわね」と自分で自分に言い聞かせる母の姿を見て、娘はいらだちを隠せない。
いつの間にか自分が、
(ああはなりたくない)と思っていたいつも父に従うばかりの母と
同じような態度をとっていたことに気付いてザビーネは愕然とするのだ。
(今ここで寄りを戻したところで、また同じことの繰り返しではないか)
仲直りのチャンスは何度も訪れるが、ザビーネはそのたび踏みとどまった。
けれども彼女はまだ、セバスチアンが好きなのだ。
だから考える。
どうして、どこでボタンを掛け違えてしまったのか。
セバスチアンの望みは?
そして自分自身の望みはなんなのか?
この物語はドイツがまだ東西に分断されていた頃に書かれたYA小説なのだが
若者世代も親世代も、古今東西人々の心模様にはあまり変化がないようだ。
単にジェンダーの問題というだけでなく
恋人であっても夫婦であっても、親子の間であったとしても
お互いの精神的自立が必要であること
それぞれがそれぞれの立場で社会とのつながりを常に考えていく必要があることを
恋する乙女の視点でいきいきと語ってくれるこの物語
若い世代や親世代にはもちろん
恋だ愛だといった気持ちはすっかり縁遠くなってしまった
胸キュン欠乏世代にもしっかりお薦めできる1冊だ。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
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- 出版社:福武書店
- ページ数:276
- ISBN:9784828813974
- 発売日:1990年03月01日
- 価格:1325円
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