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こんなに面白く、切なく、言葉にすることが難しい複雑な思いまでをも表現できるものだろうか。
書店員の方やらBOOKSHOP LOVER TVで知り合った方やら各方面から勧められていたので、ついに読んでみることにした。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』。
米原万里は本読みの人々の間では有名かもしれないが、ぼくは本書を読むまで詳しく知らなかったのでまず紹介をすることにしよう。
ロシア語の同時通訳者でありながら数々のエッセイやノンフィクションを書き、小説も一作書いている作家で、
"9歳から14歳まで少女時代の5年間、現地にあるソビエト連邦外務省が直接運営する外国共産党幹部子弟専用の8年制ソビエト大使館付属学校に通い、ロシア語で授業を受けた。"
その経験を書いたのが本書である。
触れようと思わなければあまり知る機会のないソ連について、学校にいた子供視点からであるものの窺いしることができる点も嬉しいが、本書のおもしろさはとにかく著者の瑞々しい表現力である。
こんなに面白く、切なく、言葉にすることが難しい複雑な思いまでをも表現できるものだろうか。
去年自著を出していろいろな本屋で自分について話す機会を得たが、未だに自分がなぜ本屋を好きなのかについてうまく話すことができない。本書を読んでいるとこの人ならば自分のことをどんな風に書くだろうかと思わずにいられなかった。自伝はあっただろうか。
最後に良かった部分を引用する。
→人の言動に対する自分の好き嫌いや違和感の根拠を説明するのにこんなやり方があったのかと驚いた。
→表題作の末尾の文章。いままでの著者のアーニャに対する違和感が凝縮されておりこれを末尾に持ってくるなんて、あぁもう!悶える!
→良かったというわけではないけども以前読んだ『戦争広告代理店』とつながると思ったので。強烈なパブリック・リレーションの力を持ってしても個人の違和感を拭い去ることはできないのである。
さて、次は『オリガ・モリヴソナの反語法』が読みたいな。
米原万里は本読みの人々の間では有名かもしれないが、ぼくは本書を読むまで詳しく知らなかったのでまず紹介をすることにしよう。
ロシア語の同時通訳者でありながら数々のエッセイやノンフィクションを書き、小説も一作書いている作家で、
"9歳から14歳まで少女時代の5年間、現地にあるソビエト連邦外務省が直接運営する外国共産党幹部子弟専用の8年制ソビエト大使館付属学校に通い、ロシア語で授業を受けた。"
その経験を書いたのが本書である。
触れようと思わなければあまり知る機会のないソ連について、学校にいた子供視点からであるものの窺いしることができる点も嬉しいが、本書のおもしろさはとにかく著者の瑞々しい表現力である。
こんなに面白く、切なく、言葉にすることが難しい複雑な思いまでをも表現できるものだろうか。
去年自著を出していろいろな本屋で自分について話す機会を得たが、未だに自分がなぜ本屋を好きなのかについてうまく話すことができない。本書を読んでいるとこの人ならば自分のことをどんな風に書くだろうかと思わずにいられなかった。自伝はあっただろうか。
最後に良かった部分を引用する。
それでも、私の美意識はミルチャの側にあった。 p.184
→人の言動に対する自分の好き嫌いや違和感の根拠を説明するのにこんなやり方があったのかと驚いた。
「そういう狭い民族主義が、世界を不幸にするもとなのよ」
丸い栗色の瞳をさらに大きく見開いて真っ直ぐ私の目を見つめるアーニャは、誠実そのものという風情だった
→表題作の末尾の文章。いままでの著者のアーニャに対する違和感が凝縮されておりこれを末尾に持ってくるなんて、あぁもう!悶える!
にも拘らず、セルビア人勢力のそれだけが衝撃的なニュースとなって世界を駆けめぐり強固な「セルビア悪玉論」を作り上げてしまった
→良かったというわけではないけども以前読んだ『戦争広告代理店』とつながると思ったので。強烈なパブリック・リレーションの力を持ってしても個人の違和感を拭い去ることはできないのである。
さて、次は『オリガ・モリヴソナの反語法』が読みたいな。
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本屋を応援する活動BOOOKSHOP LOVERです。本が好き!の中の人でもあります。
主に本屋の本と本の本、デザイン周りが好きですが、SFも好きです。社会系の本もちゃんと読みたいところ。積ん読しまくりであります。
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- 出版社:角川書店
- ページ数:301
- ISBN:9784043756018
- 発売日:2004年06月01日
- 価格:580円
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