Yasuhiroさん
レビュアー:
▼
川上弘美初挑戦、まずは一番有名なこの作品から。ゆる~い感じが良い作品なのでゆる~くレビューしてみよう。
昨年度は女性作家としてルーチンの方々に加えて、江國香織をかなり読んだのですが、江國が好きなら川上弘美はいかがですか、と三太郎さんからアドバイスを受けました。
その時のアドバイスによると、このお二人かなりお互いを意識しているらしいです。早速ネットで調べてみると、うん、どっちも美人だ、こりゃ意識するわな(違。
まあそれはさておき、私は川上弘美さんの作品を全く読んだことがありません。今までの経験からして発表順に読むのが一番作家を理解できるのだろうとは思いますが、とりあえずこんな私でも題名だけは知っている一番有名(多分)な「センセイの鞄」を読んでみることにしました。
谷崎潤一郎賞を受賞しているそうですが、それに相応しいのは飲み屋と異界を往復する「干潟-夢」くらいかな。十七章あるんですが、その他は文章・話とも程よく力が抜けていてゆる~い感じがいいですね。
なんてね、何でもない文章でもホッと頬が緩む、そんな感じです。
そのアラフォー独身のツキコさんが主人公なんですが、高校で国語を教えてもらった(けどすっかり忘れていた)松本春綱先生(aka'センセイ')とふとしたきっかけで知り合い、ゆる~く飲み友達でい続けながら、だんだんそのうちに、となっていくわけです。
緩くじれったく話が進むので、センセイがようやく意を決し「恋愛を前提として」おつきあいを申し込むのはラス前です(「公園で」)。そしてオーラス「センセイの鞄」では、、、おっとこれはネタバレさせぬが花。
で、この雰囲気は江國香織というよりも梨木香歩に近い気がします。とくに「冬虫夏草」。「キノコ狩 その1」に「冬虫夏草」が出てきますけど、そういう意味じゃなくってね。
ちょっと古風なゆるめの文章で、季節の移ろいを一章一章丁寧に描いていくところとか、美味しそうな和風料理とか、何気ない、あるいはかみ合わない会話とか。
かみ合っているようないないような最初の頃の会話はなんとなく梨木の「冬虫夏草」の綿貫君と高堂の会話と似ていませんか。そう、似ていませんか。(これ、センセイの真似)
でもね、そんな中にドキッとするような文章をひそませているところなんか、川上弘美センセイ、侮れませんね、いや、侮っているわけじゃないんですけれど。(これ、ツキコさんの真似)
例えば序盤で早くもセンセイを意識し始めるところ
とか、酔った勢いでついにツキコさんが告白しちゃう会話の一行前の文章
とか。
そして二人のふと口をついて出てくる、丁寧語がいいですね。
なんて、私も実際によく使ってるんですよね。時々相手に変な顔されますけど(苦笑。でも綺麗な言葉じゃありませんか、ね。
とここまでは褒めちぎって(もないか)来たわけですけど、全てOKと言う訳でもないんですよね。嫌なのは臭いですね。
私は全く酒が飲めないもんで、酔った人、特に泥酔した人の酒臭い息が大嫌いなんですよ。ツキコさん、よく正体がなくなるまで飲んでますし、センセイはかなりいけるくちらしく、平然と飲み続けてます。ほぼ全ての章で酒臭い息を吐きかけられているようで、ゾワッとするんですよね。
それにセンセイ、息子が50歳越えてるんですよ。どう考えても70は越えてるでしょう。老人臭、気になりますね。でもまあそこはツッコまないのがルールですかね。
とかなんとかなんやかんや言いながらも、最終章でのきっちりとした締め方は、大変ようございました。
その時のアドバイスによると、このお二人かなりお互いを意識しているらしいです。早速ネットで調べてみると、うん、どっちも美人だ、こりゃ意識するわな(違。
まあそれはさておき、私は川上弘美さんの作品を全く読んだことがありません。今までの経験からして発表順に読むのが一番作家を理解できるのだろうとは思いますが、とりあえずこんな私でも題名だけは知っている一番有名(多分)な「センセイの鞄」を読んでみることにしました。
谷崎潤一郎賞を受賞しているそうですが、それに相応しいのは飲み屋と異界を往復する「干潟-夢」くらいかな。十七章あるんですが、その他は文章・話とも程よく力が抜けていてゆる~い感じがいいですね。
そういえば、ツキコさんのする酌は色気がないね、と以前会社の同僚に言われたことがあった。色気という言葉も大時代だが、酌をするのが女であるというだけで色気を求めることも、大時代である。(「ひよこ」より)
なんてね、何でもない文章でもホッと頬が緩む、そんな感じです。
そのアラフォー独身のツキコさんが主人公なんですが、高校で国語を教えてもらった(けどすっかり忘れていた)松本春綱先生(aka'センセイ')とふとしたきっかけで知り合い、ゆる~く飲み友達でい続けながら、だんだんそのうちに、となっていくわけです。
緩くじれったく話が進むので、センセイがようやく意を決し「恋愛を前提として」おつきあいを申し込むのはラス前です(「公園で」)。そしてオーラス「センセイの鞄」では、、、おっとこれはネタバレさせぬが花。
で、この雰囲気は江國香織というよりも梨木香歩に近い気がします。とくに「冬虫夏草」。「キノコ狩 その1」に「冬虫夏草」が出てきますけど、そういう意味じゃなくってね。
ちょっと古風なゆるめの文章で、季節の移ろいを一章一章丁寧に描いていくところとか、美味しそうな和風料理とか、何気ない、あるいはかみ合わない会話とか。
かみ合っているようないないような最初の頃の会話はなんとなく梨木の「冬虫夏草」の綿貫君と高堂の会話と似ていませんか。そう、似ていませんか。(これ、センセイの真似)
でもね、そんな中にドキッとするような文章をひそませているところなんか、川上弘美センセイ、侮れませんね、いや、侮っているわけじゃないんですけれど。(これ、ツキコさんの真似)
例えば序盤で早くもセンセイを意識し始めるところ
光っている刃物を見ているうちに、センセイに会いたくなった。そこに肌が触れれば、すっと切れて赤い血がにじみ出るだろう鋭い刃物を見ているうちに、センセイに会いたくなった。刃物の光がなぜそんな心もちを引き出すのかそのからくりは判らない、しかし無闇矢鱈とセンセイに会いたくなった。(「二十二個の星」より)
とか、酔った勢いでついにツキコさんが告白しちゃう会話の一行前の文章
夜の雲が、速い。風が、強くなってきている。空気が湿り気を帯びて、重い。(「梅雨の雷」より)
とか。
そして二人のふと口をついて出てくる、丁寧語がいいですね。
それはようございました。
たいへんおいしゅうございました。
なんて、私も実際によく使ってるんですよね。時々相手に変な顔されますけど(苦笑。でも綺麗な言葉じゃありませんか、ね。
とここまでは褒めちぎって(もないか)来たわけですけど、全てOKと言う訳でもないんですよね。嫌なのは臭いですね。
私は全く酒が飲めないもんで、酔った人、特に泥酔した人の酒臭い息が大嫌いなんですよ。ツキコさん、よく正体がなくなるまで飲んでますし、センセイはかなりいけるくちらしく、平然と飲み続けてます。ほぼ全ての章で酒臭い息を吐きかけられているようで、ゾワッとするんですよね。
それにセンセイ、息子が50歳越えてるんですよ。どう考えても70は越えてるでしょう。老人臭、気になりますね。でもまあそこはツッコまないのがルールですかね。
とかなんとかなんやかんや言いながらも、最終章でのきっちりとした締め方は、大変ようございました。
そんな夜には、センセイの鞄を開けて、中を覗いてみる。鞄の中には、からっぽの、何もない空間が、広がっている。ただ儚々(ぼうぼう)とした空間ばかりが広がっているのである。
お気に入り度:







掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
この書評へのコメント
- Yasuhiro2018-01-30 08:51
ほぅ、そうですか、それはようございました。(センセイ風)
って、ありがとうございます。まったくノーマークでびっくり。2,3日でたしか25票いってなかったし、週刊書評ランキングでも提督と二人で56票だったし、まあ30票弱くらい、ありがたい数字だと思ってました。まさかこれほど投票してもらえるとは、こんなゆるいレビューでありがたい限りです。All The Pretty Horsesでこれくらい入れてもらえればガッツポーズするけどなあ(笑。
にしても4冊同時1位、あと三冊全部ヤーチャイカさん、どんだけ強いねん!
貴婦人Aがいつの間にか5位に入っていたのもびっくり(w。
海も同時5位ですな、エロおめでとうございます。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:文藝春秋
- ページ数:278
- ISBN:9784167631031
- 発売日:2004年09月03日
- 価格:560円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















