ゆうちゃんさん
レビュアー:
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星新一の5冊目のショートショート集。自分は、この本から彼の作品を読み始めた。意外な結末、ひねりの利いた落ちが楽しめる作品集である。
星新一の5冊目のショートショート集で表題作の「宇宙のあいさつ」を含め35編が収録されている。自分の星新一への入口は、中学2年の時から聞き始めた25分のラジオドラマで、本書のうち「宇宙のあいさつ」と「願望」がドラマ化されていた。どちらも印象に残る作品で、原作を読みたいと思い最初に買った星新一のショートショートが本書だった。
「宇宙のあいさつ」は、遠い未来、人類が宇宙征服に乗り出した頃の話。ある惑星探査宇宙船が、文明度が高いにも関わらず、好戦的なところが全くない星を発見したのが始まり。「試しに」撃ち込んだミサイルにさえも反応がない。着陸して、そこが地球のリゾート地のような気候で、住民は無気力だが温順で召使にうってつけだとわかる。その宇宙船の艇長はこの星の管理者になり、地球からも高評価をもらった。ところがある日、部下がどこかの倉庫で地球にもない恐るべき兵器がこの星にあるのを発見した。複雑な装置だが使い方は簡単だ。倉庫の近くにいた少年を呼び止めこの装置について訊くと、子供でも威力や使い方を知っている。かつての艇長は、ミサイルを撃ち込んだ時になぜこれで反撃しなかったのか?と訊いた。少年は、「これは祖先の作った兵器で昔の人には意味があったのだろう」という。だが、今の彼らには未来がない。この星の種族は、かつては300歳くらいまで生きられた。世代を重ねるうちに寿命が1割くらいずつ減っていく。祖先が気づいた時に、これをどうしようもなくなっていた。この星の管理者になった艇長は、高度な文明と住民の無気力さ、温順さの理由がわかったと早合点した。この星の種族は老いたる種族なのだという。だが少年はそうではない、ともっと深い事情を説明した。それを聞いた管理者は、「なぜもっと早く教えてくれなかったのか?」と言った。少年は、丁寧な挨拶もなしにこの星に乗り込んで来たからだと答えた。
「願望」はエス氏の正月の夢の話。夢にキツネが出てくる。そのキツネは、エス氏が夕方に訪ねた近所の稲荷の主だという。何でもエス氏のお参りが丁度60万人目で、10万人ごとに願いをかなえることにしているのだと言われた。エス氏は、その参拝の時にも願掛けした深刻な悩みがあったのだが、なかなか思い出せない。キツネは気が短くジリジリして待つのだが、やっとエス氏が叶えて欲しい願いを思い出した時には、キツネは、その願いはかなえられないという。その理由は・・・。
「宇宙のあいさつ」は好戦的な人類を皮肉った作品。「願望」はひねりの利いた滑稽譚。自分は本書を読んですぐ星新一のファンになり、作品を買い集めた。買ったのが中学~高校時代だったので、定期試験が終わると、試験後のリラックスした雰囲気で一冊買っては心行くまで読んだものだった。
どの話にもリアリズムは感じさせない。宇宙を舞台にした星新一の作品はワープなど恒星間移動の手段さえ出ていない。さすがに、田舎に行く時の交通機関に「国鉄」と言う言葉が出てくるが、昭和三十年に書かれた作品なら、それも当然であり、リアリズムと言ってもこの程度である。それが時代を感じない作品に通じるのだと思う。
「宇宙のあいさつ」は、遠い未来、人類が宇宙征服に乗り出した頃の話。ある惑星探査宇宙船が、文明度が高いにも関わらず、好戦的なところが全くない星を発見したのが始まり。「試しに」撃ち込んだミサイルにさえも反応がない。着陸して、そこが地球のリゾート地のような気候で、住民は無気力だが温順で召使にうってつけだとわかる。その宇宙船の艇長はこの星の管理者になり、地球からも高評価をもらった。ところがある日、部下がどこかの倉庫で地球にもない恐るべき兵器がこの星にあるのを発見した。複雑な装置だが使い方は簡単だ。倉庫の近くにいた少年を呼び止めこの装置について訊くと、子供でも威力や使い方を知っている。かつての艇長は、ミサイルを撃ち込んだ時になぜこれで反撃しなかったのか?と訊いた。少年は、「これは祖先の作った兵器で昔の人には意味があったのだろう」という。だが、今の彼らには未来がない。この星の種族は、かつては300歳くらいまで生きられた。世代を重ねるうちに寿命が1割くらいずつ減っていく。祖先が気づいた時に、これをどうしようもなくなっていた。この星の管理者になった艇長は、高度な文明と住民の無気力さ、温順さの理由がわかったと早合点した。この星の種族は老いたる種族なのだという。だが少年はそうではない、ともっと深い事情を説明した。それを聞いた管理者は、「なぜもっと早く教えてくれなかったのか?」と言った。少年は、丁寧な挨拶もなしにこの星に乗り込んで来たからだと答えた。
「願望」はエス氏の正月の夢の話。夢にキツネが出てくる。そのキツネは、エス氏が夕方に訪ねた近所の稲荷の主だという。何でもエス氏のお参りが丁度60万人目で、10万人ごとに願いをかなえることにしているのだと言われた。エス氏は、その参拝の時にも願掛けした深刻な悩みがあったのだが、なかなか思い出せない。キツネは気が短くジリジリして待つのだが、やっとエス氏が叶えて欲しい願いを思い出した時には、キツネは、その願いはかなえられないという。その理由は・・・。
「宇宙のあいさつ」は好戦的な人類を皮肉った作品。「願望」はひねりの利いた滑稽譚。自分は本書を読んですぐ星新一のファンになり、作品を買い集めた。買ったのが中学~高校時代だったので、定期試験が終わると、試験後のリラックスした雰囲気で一冊買っては心行くまで読んだものだった。
どの話にもリアリズムは感じさせない。宇宙を舞台にした星新一の作品はワープなど恒星間移動の手段さえ出ていない。さすがに、田舎に行く時の交通機関に「国鉄」と言う言葉が出てくるが、昭和三十年に書かれた作品なら、それも当然であり、リアリズムと言ってもこの程度である。それが時代を感じない作品に通じるのだと思う。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:398
- ISBN:9784101098104
- 発売日:1977年03月01日
- 価格:580円
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