薄荷さん
レビュアー:
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ああ、そうか。私は孤児になったんだ。
遠い異国の著者は、どこの誰よりも『親を亡くした人』としての共感と、心慰める言葉をくれました。
最近の出来事でなくても、親を亡くした方すべてにお勧めです。
本書の冒頭から数ページで、ストンと胸に落ちるものがあると思います。
父が亡くなって数年後、独りで暮らしていた母が亡くなった・・・著者は両親が住んでいた家を片付けるために訪れた。
膨大な遺品を片付けるうちに知ったのは、生前の両親が自分には一切語らなかった「二人がそれぞれ強制収容所から奇跡的に生き残った」という重すぎる事実。
幼い頃から感じていた親と自分の間にある見えない壁、特に母の攻撃的な頑なさの理由がそれに起因しているとようやく知り、今度こそ理解できる・・・と思ったときに両親はいない。
秘密にされた事へのやりきれなさと、怒りと悲しみ。
全く手の付け所が分からず山積されていく公的処理。
膨大な遺品から捨てるものと、自分が所有するものと、人に譲るものの分別。
何よりその遺品たちは法的には自分のものとされたけど、親から譲ると一言も言われていない以上、手を付けることの罪悪感とそれ故に抱く理不尽な苦悩と怒り。
ありとあらゆる事に心身疲れ果てながらも、著者の心は「親の死」にゆっくりと折り合いをつけ、時間は穏やかにそれを助長してくれる・・・まだ途上ではあるけれど。
親不孝だったからでしょうか。私は父・母、どちらの死に目にも会えませんでした。
子供のころから霊柩車を見る度に、ちゃんと親指を隠していたんですけどねぇ。
10年以上も昔、親の亡骸を目の前にして、当たり前の悔恨と悲しみ以外の感情も抱いた事に酷く戸惑いました。
こんなに大人になったのに、
帰る場所が無くなった事が不安で恐くて心細くて、
酷く虐げられた子供のようなやり場の無い怒りをどろどろと抱き、
その反面で変な解放感に眩暈がする・・・。
身勝手で人でなしの自分に愕然とし、それが誰かにバレる恐怖に怯えました。
叶うならあの時の自分にこの本を薦めてやりたい。
人でなしだと自分を憎悪する必要は無く、
奇妙な開放感も異常なことではなく、
孤独も怒りも恐怖も心細さも、とりあえず否定しなくて良いと。
そんな風に自分を肯定できたなら、あの時どれだけ慰められたでしょう。
おそらく多くの方が、これから経験する事かと思います。
本当に親を見送るために、自分に絶望しないために、読んでみてください。
最近の出来事でなくても、親を亡くした方すべてにお勧めです。
本書の冒頭から数ページで、ストンと胸に落ちるものがあると思います。
父が亡くなって数年後、独りで暮らしていた母が亡くなった・・・著者は両親が住んでいた家を片付けるために訪れた。
膨大な遺品を片付けるうちに知ったのは、生前の両親が自分には一切語らなかった「二人がそれぞれ強制収容所から奇跡的に生き残った」という重すぎる事実。
幼い頃から感じていた親と自分の間にある見えない壁、特に母の攻撃的な頑なさの理由がそれに起因しているとようやく知り、今度こそ理解できる・・・と思ったときに両親はいない。
秘密にされた事へのやりきれなさと、怒りと悲しみ。
全く手の付け所が分からず山積されていく公的処理。
膨大な遺品から捨てるものと、自分が所有するものと、人に譲るものの分別。
何よりその遺品たちは法的には自分のものとされたけど、親から譲ると一言も言われていない以上、手を付けることの罪悪感とそれ故に抱く理不尽な苦悩と怒り。
ありとあらゆる事に心身疲れ果てながらも、著者の心は「親の死」にゆっくりと折り合いをつけ、時間は穏やかにそれを助長してくれる・・・まだ途上ではあるけれど。
親不孝だったからでしょうか。私は父・母、どちらの死に目にも会えませんでした。
子供のころから霊柩車を見る度に、ちゃんと親指を隠していたんですけどねぇ。
10年以上も昔、親の亡骸を目の前にして、当たり前の悔恨と悲しみ以外の感情も抱いた事に酷く戸惑いました。
こんなに大人になったのに、
帰る場所が無くなった事が不安で恐くて心細くて、
酷く虐げられた子供のようなやり場の無い怒りをどろどろと抱き、
その反面で変な解放感に眩暈がする・・・。
身勝手で人でなしの自分に愕然とし、それが誰かにバレる恐怖に怯えました。
叶うならあの時の自分にこの本を薦めてやりたい。
人でなしだと自分を憎悪する必要は無く、
奇妙な開放感も異常なことではなく、
孤独も怒りも恐怖も心細さも、とりあえず否定しなくて良いと。
そんな風に自分を肯定できたなら、あの時どれだけ慰められたでしょう。
おそらく多くの方が、これから経験する事かと思います。
本当に親を見送るために、自分に絶望しないために、読んでみてください。
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スマホを初めて買いました!その日に飛蚊症になりました(*´Д`)ついでにUSBメモリーが壊れて書きかけレビューが10個消えました・・・(T_T)
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この書評へのコメント
- 薄荷2017-04-19 08:05
掲示板「【公式】自薦レビューを募集します!!」のためにちょっと書き直しました。
本文の末尾に書いてたあんまり本の内容と関係ない(笑)所を削ったので、こっちに覚書。
『さて、ついでに言えば本編と全く関係ないですが、遺言状を含めて『終活』しておくことは絶対必要です。
財産分与、相続税、葬儀会社との契約、葬儀の知らせを出す人のリスト・・・などなど、心身ともに正常に動くうちに当人がやっておけば、遺された人の負担がかなり減ります。
・・・それに加えて、「あの引き出しに入っている物は、中身を見ずに棺に入れて一緒に燃やしてくれ!」とか言いたい「アレ」がありませんか?
ほら、「アレ」ですよ・・・家族にも誰にも見られたくない、見られたら死んでも死に切れない「アレ」です(笑)。
心当たりのある方は・・・今のうちに「アレ」を何とかするか、終活しときましょ。』クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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