書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

ソネアキラ
レビュアー:
小説の持つシナジーとは
一ファンとして本作を読むまでかなりの躊躇(ちゅうちょ)があった。

話は前に戻る。『ねじまき鳥クロニクル』。ハードカバー3冊でありながら、あっという間に読めた。でも、見事なまでに何も残らなかった。

地下鉄サリン事件被害者へのインタビュー集。作者初のノンフィクションというのが売りの『アンダーグラウンド』。感想は、ノンフィクションというよりも、テープ起こし(インタビューしたテープをそのまま書き起こしたもの)の生原稿みたい。果たしてこれってノンフィクションなの。田中康夫が「村上春樹はサリン事件ではなく神戸大震災を書くべきだ」という批判を記憶している。

『スプートニクの恋人』。なんだか村上春樹自身のエピゴーネン(亜流)に思えてならなかった。

さて、読了後、印象がさめないうちに、パソコンのキーボードをたたいている。

本作のテーマは、ポスト「神戸大震災」。といっても、そこはそれ、作者のことだから、直接的な話ではない。そのテーマの伝播(でんぱ)したもの、日本人の精神への波及効果を6つの短篇で連ねている。

なるほど、作者は「神戸大震災」への落とし前をこうつけたのか。が、率直な感想。一篇、一篇の世界観は、いままでに感じたことがないほど、いきいきしている。短篇なのに、ひろがりがある。豊かな奥行きとでも言えばいいのだろうか。血の通っている生身の人間の息遣いが伝わってくる。

僕が好きなのは、ちょっとスティーブン・キングっぽい『かえるくん、東京を救う』と『蜂蜜パイ』。表題にもなった『神の子どもたちはみな踊る』も、オウム真理教の子どもたちと重ねてみると、深いものがある。巧さと凄さ。純度の高い作品である。

「これまでとは違う小説を書こう、と淳平は思う」(『蜂蜜パイ』)。
作者は新境地を切り開いたのか。答えは、次作にある。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2197 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

twitter.com/sonenkofu

詩や小説らしきものはこちら。

https://note.mu/sonenkofu

参考になる:25票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『神の子どもたちはみな踊る』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ