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ぷるーと
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衰退する施設や町の、さまざまなかたち。
短編集『海に沈んだ町』のテーマは、「衰退する施設や町」だ。

「遊園地の幽霊」
かつて遊園地だった地区が町となり、その町の住民が繰り返し遊園地にいる夢を見る、というもの。土地にはその土地の記憶があって、それを知らない者にも「覚えておいてほしい」と訴えかけてくるのかもしれない。

「海に沈んだ町」
故郷がある日突然海に沈んでしまう。だが、鉄道はその海より高いところを走っている。政府は、この町が海に沈むことを知っていて、鉄道を高架にしていたのだという。
その地に住んでいる者は知らないことを上層部は知っていて密かに計画が進んでいる。確かに、いつだって庶民は何も知らされない。大切なことほど。

「団地船」
かつて、かなり不便なところでさえ開発して、ニュータウンや団地ができた。この物語では、そんな団地を船として海に浮かべている。できたときは歓迎され、そこに移ることを羨望された団地船。だが、老朽化過疎化した団地船は、いまや誰にも見向かれもしない。同級生が越していった団地船が停泊していることを知りかつての同級生の住居に行って見ると、迷路のように入り組んだ先の小さな住まいだった。憧れの団地も、最初から夢の生活ではなかった。まして、今や・・・。

「四時八分」
5年前の明け方の四時八分。そのときから夜に占拠されてしまった町。その時間に寝ていた者は眠り続け、起きていた者はずっと起き続けている。これは、自分で自由に行動することを禁止される、ということの暗喩だろうか。
ここまでの4編、前の作品の中に次の作品の題がしこまれていて、内容は全く違うのだが連作といっていいのだろう。

「彼の影」「ペア」は、町の衰退というテーマとは異なり、相手との関わり方を描いたもの。「ペア」のラストが、なんとも薄気味悪く、この作者らしさを感じた。

「橋」「ニュータウン」
廃れるニュータウンと、行政の対応。話はどちらもかなり大仰なものになっているが、高齢化過疎化しているニュータウンの問題は、とても他人事ではない。

「巣箱」
行政の裏細工を一番感じる、イヤな感じの話。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2932 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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