かもめ通信さん
レビュアー:
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生と死も、空と海も、物語と現実も、あるはずの境目に行き着くことは難しい。ならばいっそ溶けてしまおう。空の青さと海の青さが溶け合うように。私もタブッキの物語の中に。
スピーノはとある港町の寂れた病院の遺体安置室に勤めている。
彼は、遺体の側で過ごしながら
そうして少なくても彼らは、
もちろん、心の中でのことではあるけれど。
ある日、スピーノの職場に、身元不明の青年の遺体が運ばれてくる。
警察が踏み込んだ現場で犯行グループの仲間によって撃たれたのだというその青年が、所持していた身分証明書は偽物で、いつまでたっても身内だと名乗り出る者もいない。
スピーノはその身元不明の遺体のことが気になって、独自に調べはじめるのだが……。
生と死について語りはじめる冒頭はちょっぴり哲学的で、恋人とのあれこれを描くあたりの心理描写は繊細で、小さな手がかりを元に調査をはじめればサスペンス調と、読みながら全体像をつかみきれずに戸惑う。
スピーノの行く手に危険が迫っているに違いない!と、読み手の緊張感が高まったところで、1羽のカモメにスパイ容疑がかかる………。
ああそうか。
ジャンルも筋もつかみきれなくても良いのだ。
生と死も、空と海も、物語と現実も
あるはずの境目に行き着くことは難しい。
ならばいっそ溶けてしまおう。
空の青さと海の青さが溶け合うように。
私もスピーノとともに物語の中を漂うように……。
彼は、遺体の側で過ごしながら
生者と死者のあいだの距離は、そもそも、そんなに大きいのだろうか。と考える。
そうして少なくても彼らは、
番号札で分類されているなんてきっと嫌に違いないと、それぞれの遺体にあだ名をつけて、その名前で呼びかけることにしている。
もちろん、心の中でのことではあるけれど。
ある日、スピーノの職場に、身元不明の青年の遺体が運ばれてくる。
警察が踏み込んだ現場で犯行グループの仲間によって撃たれたのだというその青年が、所持していた身分証明書は偽物で、いつまでたっても身内だと名乗り出る者もいない。
スピーノはその身元不明の遺体のことが気になって、独自に調べはじめるのだが……。
生と死について語りはじめる冒頭はちょっぴり哲学的で、恋人とのあれこれを描くあたりの心理描写は繊細で、小さな手がかりを元に調査をはじめればサスペンス調と、読みながら全体像をつかみきれずに戸惑う。
スピーノの行く手に危険が迫っているに違いない!と、読み手の緊張感が高まったところで、1羽のカモメにスパイ容疑がかかる………。
ああそうか。
ジャンルも筋もつかみきれなくても良いのだ。
生と死も、空と海も、物語と現実も
あるはずの境目に行き着くことは難しい。
ならばいっそ溶けてしまおう。
空の青さと海の青さが溶け合うように。
私もスピーノとともに物語の中を漂うように……。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2014-09-27 07:14
勝手にタブッキ祭り静かに開催中♪
ROOKにタブッキ棚を作ろうと思ったのですが、なぜだか上手くいかないので、とりあえず関連レビューをここに貼ります。
・『供述によるとペレイラは……』http://www.honzuki.jp/book/17800/review/68279/
・『逆さまゲーム』http://www.honzuki.jp/book/17937/review/73839/
・『時は老いをいそぐ』http://www.honzuki.jp/book/192349/review/80581/
・『いつも手遅れ』http://www.honzuki.jp/book/210091/review/109465/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2014-09-27 07:15
・『夢の中の夢』http://www.honzuki.jp/book/204897/review/99077/
・『ユリイカ2012年6月号 特集=アントニオ・タブッキ』http://www.honzuki.jp/book/194835/review/73093/
・『インド夜想曲』http://www.honzuki.jp/book/2924/review/121061/
・『島とクジラと女をめぐる断片』http://www.honzuki.jp/book/220536/review/126606/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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