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DBさん
DB
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ガリア遠征の経過の本
ユリウス・カエサルが八年間にわたるガリア遠征の成果を報告としてまとめたものです。
二千年前に活躍した歴史上の人物の著作が読めるというだけでも素晴らしい。
カエサルは本書をガリアでの戦闘中に口述筆記して、それがローマに送られ元老院の報告書がわりにしたと同時にローマ市民に向けて出版もされたそうだ。

ローマ市民でガリアに行ったことのある人はそうそういるわけもなく、そういった人々にわかりやすいようにという配慮なのかガリアの地理的な特徴の説明から入る。
ガリアは三つに分かれていて、ベルガエ人、アクィーターニー人、そしてケルタエ人とそれぞれ言語も制度も違う集団だそうです。
部族同士の対立やゲルマン人の侵攻といった出来事に揺れるガリアとローマの役割を語っていく。
地図を見ても長くて覚えにくいガリアの氏族の名前が延々と出てくるのだけど、カエサルの手にかかるとそれさえも未開の冒険談のように思えてしまえるのが不思議だ。
単なる戦闘の報告で終わらず、ガリアという地域の特色を説明した上でガリア戦役がなぜ必要なのかが遠いローマにいても理解できるようになっていた。

そして繰り返される戦闘シーンですが、カエサルの抜きん出た才能がその行動で現れるように際立たせて書かれています。
自らを「カエサル」と三人称で書き進められている点も、客観的な視線を保ったという点もあるだろうがカエサルの名を繰り返し出てくることで読者にカエサルの偉業を刷り込む役割も果たしているのではないだろうか。
勝利を華々しく描くのは当然だが、アンビオリクスとの戦いで負けて第十四軍団が壊滅した事情についても報告している。
未開の蛮族に圧勝したというよりは、これだけ強い相手と戦って勝利したという方がよりローマ軍とカエサルの能力を引き立てるのかもしれない。

戦争で勝つためにはまず補給、そして有利な地点に最適の形で布陣すること。
つまり開戦前に勝敗はおおかた決まっているのであって、個人の勇猛さや天才的な戦術はそれが勝敗を決するのが例外的なだけに光るという一点が印象に残った。
恭順と反乱を繰り返すガリアでカエサルが得たものは何だったのだろう。
戦利品と自分の親衛隊のようになった軍団、そしてローマでの人気といったところかな。
優れた弁論家だったというカエサルだが、某大国の大統領選挙の宣伝を見ているような気にさせられた。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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