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Wings to fly
レビュアー:
このお話、ちょっと読んでみんち。思いっきり夏休みらしくて、楽しいがやぞ。
「あっらー!みち君、大きゅなって!はよ、あがらんちまん。おなかすいとるがやろ?スイカ食べまっし。あっらー!」
「みち君に会いたかったがやよ、みんな。ほして、みち君のこと、はよ好きになりたいが。」

父の田舎にひとりで夏休みを過ごしに来た道夫は、こんな風に伯父一家に迎えられる。道夫が来るのを待っていて、優しい眼差しを注ぐのは人間だけじゃなかった。アロハシャツにサングラスとか、ジーンズにTシャツとか、今風な格好で駅にいた三人組が、まさか土地の神様たちだなんて、その時は知らなかったのだけれど。まさか神様に頼みごとをされるとは、思いもしなかったのだけれど。

都会育ちの道夫は、最初はみんなが何を言っているのかわからない。「だら(ばかもん)!」にこめられた気持ちに気づかなくて、帰りたくなったりする。
「わりがみんなを嫌いやったら、ヒマワリでもごろつきになって喧嘩吹っかけるわい。」と“ブンガブンガキャー”は道夫に言う。「そのかわり、わりがちゃんとしとったら、草でも花でも畑のカボチャでも、わりに何でも教えてくれるわいや。」
そのためには、どうしたらいいがい?・・・素敵な問いかけだなあと思う。

そしてまあ、方言で喋る神様たちのキャラが愉快なこと!隣町の温泉で遊んでいる間に、何者かにビュンッと白羽の矢を射られてしまった土地の氏神・イツオ彦さんの面目は丸つぶれ。可愛いヒスイちゃんとタッグを組んでの犯人捜しの過程で道夫少年は、持っていることすら知らなかった大切なものとか、人と人に結ばれる縁とか、自分を温かく包みこんでいる目に見えない物事に気づいてゆく。このひと夏の出来事で、彼は心の幅を広げるのである。

川にも松の木にも畑にも守り神がいて、地元の人々を見守りながら時々賑やかに宴会している。盆踊りにもこっそり参加している。私はこのお話を読み返すたびに、八百万の神のいる日本に生まれてホントに良かったと思うのだ。彼らは、見えないけれど存在するものの化身なのだろうな。
“ブンガブンガキャー”も神様たちも、また夏に五尾村で会おうね。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2017-07-29 18:05

    今朝ほど、この書評に目を留めて下さった著者の茂田先生からツイッターでコメントをいただきました。作品に対する思い入れの深さがにじみ出る素敵な言葉でしたので、ご紹介したいと思います。

    ”いまレビュー読んで(他の方のも)、うるうるきてましたが、いちばん、苦労せずに書けたのが「ふるさとは、夏」だったなあ、と思い出しました。そっか。「ゆだねて」たんだ。だから書き終えた時「あーこれ、だれにも見せないで、こっそり持っていよう」なんて気持ちになったんだろうと思います。”

    茂田先生、ありがとうございました。

  2. No Image

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