かもめ通信さん
レビュアー:
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え?「六の宮の姫君」をジェンダー読み?!
児童文学評論家の赤木かん子の編集によるジュニア向けのアンソロジーシリーズのうちの1冊をタイトルに惹かれて読んでみた。
収録されているのは
山岸涼子 「朱雀門」
芥川龍之介 「六の宮の姫君」
福永武彦 「六の宮の姫君がはかなくなる話」
今昔物語 「六宮姫君夫出家語」
赤木かん子 「少し長い解説」
収録順もこのとおりで新しいものから順次時代を遡っていく。
福永武彦の「六の宮の姫君がはかなくなる話」は原典に忠実な現代語訳で
読みやすい平易な日本語が好印象。
芥川龍之介による翻案小説は、とりわけラストが原典と大きく異なる。
また原典では、
男が姫君に想いを残しながらも長い間放っておかざるを得なかった理由にも
かなりの文字が割かれるだけでなく、
ついには出家するに至るまでを描いていて、
ある姫君と関わった男の物語という風にさえとらえられなくない中味なのだが、
芥川のそれは、そういった男の事情をスパッと切り捨てて
「姫君」にスポットを当てて改変している点も興味深い。
読み手はこうした改変から
芥川がこの物語をどう解釈していたかを推し量ることになるわけだが、
どうやら山岸涼子の漫画「朱雀門」は、
この芥川の六の宮の姫君を
“自分の「生」を満足に生きてこなかったために
「死」も受け入れられなかった女性”と捉えた上でストーリーを構築している模様。
編者の赤木も同様のとらえ方のようで、
芥川が女性の自立の必要性を描いていると高く評価している。
もっとも芥川自身はそういった解釈は的外れだと考えていたと
北村薫が自身の著作 「六の宮の姫君」の中で紹介していたような気も……。
(手元にないのでうろ覚えなのだけれど)
確かその根拠は「文放古」だったか……。
芥川のジェンダー観は
他の著作などをみても、
女は文学など読まなくてもいい、
針仕事しているときが一番美しい的なものだったようにも思うので
山岸や赤木のような好意的な解釈は
芥川本人にとってはやっぱり憤懣ものなのかもしれない。
まあしかし、
作者の意図はさておいて、
作品自体が一人歩きして、
読み手があれこれ解釈するのはこれはもう名作の宿命とでもいうべきもの。
北村版「六の宮の姫君」で紹介されていたように
作者である芥川の抗議に対し正宗白鳥が「私はそうは思わない」って
言い切ったというエピソードもあることだし!
ただしジュニア版読み比べアンソロジーという本の性格を考えると
ほかの解釈をする人もいるが
こういう解釈もできる~ぐらいにとどめておいた方が良かったかも…
…という気がしないでもなかった。
(私は十分楽しめけれどね!)
追記:芥川の 「文放古」レビュー(?)をアップしました。
収録されているのは
山岸涼子 「朱雀門」
芥川龍之介 「六の宮の姫君」
福永武彦 「六の宮の姫君がはかなくなる話」
今昔物語 「六宮姫君夫出家語」
赤木かん子 「少し長い解説」
収録順もこのとおりで新しいものから順次時代を遡っていく。
福永武彦の「六の宮の姫君がはかなくなる話」は原典に忠実な現代語訳で
読みやすい平易な日本語が好印象。
芥川龍之介による翻案小説は、とりわけラストが原典と大きく異なる。
また原典では、
男が姫君に想いを残しながらも長い間放っておかざるを得なかった理由にも
かなりの文字が割かれるだけでなく、
ついには出家するに至るまでを描いていて、
ある姫君と関わった男の物語という風にさえとらえられなくない中味なのだが、
芥川のそれは、そういった男の事情をスパッと切り捨てて
「姫君」にスポットを当てて改変している点も興味深い。
読み手はこうした改変から
芥川がこの物語をどう解釈していたかを推し量ることになるわけだが、
どうやら山岸涼子の漫画「朱雀門」は、
この芥川の六の宮の姫君を
“自分の「生」を満足に生きてこなかったために
「死」も受け入れられなかった女性”と捉えた上でストーリーを構築している模様。
編者の赤木も同様のとらえ方のようで、
芥川が女性の自立の必要性を描いていると高く評価している。
もっとも芥川自身はそういった解釈は的外れだと考えていたと
北村薫が自身の著作 「六の宮の姫君」の中で紹介していたような気も……。
(手元にないのでうろ覚えなのだけれど)
確かその根拠は「文放古」だったか……。
芥川のジェンダー観は
他の著作などをみても、
女は文学など読まなくてもいい、
針仕事しているときが一番美しい的なものだったようにも思うので
山岸や赤木のような好意的な解釈は
芥川本人にとってはやっぱり憤懣ものなのかもしれない。
まあしかし、
作者の意図はさておいて、
作品自体が一人歩きして、
読み手があれこれ解釈するのはこれはもう名作の宿命とでもいうべきもの。
北村版「六の宮の姫君」で紹介されていたように
作者である芥川の抗議に対し正宗白鳥が「私はそうは思わない」って
言い切ったというエピソードもあることだし!
ただしジュニア版読み比べアンソロジーという本の性格を考えると
ほかの解釈をする人もいるが
こういう解釈もできる~ぐらいにとどめておいた方が良かったかも…
…という気がしないでもなかった。
(私は十分楽しめけれどね!)
追記:芥川の 「文放古」レビュー(?)をアップしました。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2017-06-07 06:26
掲示板企画:文芸部2017(久々のリレー小説)
ただいま部員8名ほどで先の読めない物語を執筆中。
どなたでも1行から参加できます。
ぜひぜひ遊びに来てください。
http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no289/index.html?latest=20クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ことなみ2017-06-07 08:33
ありがとうございました。いろいろ教われて。
レビューは全くニュートラルなものは面白くありませんね。皆様の解釈の違いが面白くて読んでいますが、なるほどととっても勉強になります。
私は芥川の作品は、彼の現実との距離感が好きです。正宗白鳥があれこれ言う筋合いではないかとも思います。彼のものも読んでみないと何とも言えませんが。
姫が真正、受け身女で、(その頃は自立しているなんて稀かもしれませんが)境遇の変化になす術もなく孤独と虚しさの果てに死んだと思えます。こういう人には恥の概念もなく流されてこの姫なら生きていることが地獄で。そんな中で高名な僧侶が来て、死ぬ間際であったとしても、ありがたい経文が読めるかなというのが本音です。諦めていた中で愛情を与えられ、奪われることは、何もないままに生きるより残酷だと思います。男の都合に同情の余地があっても、それを計れる姫や時代ではなかったかも。
芥川作品偏愛でしょうか。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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