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DBさん
DB
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帝政ローマ初期の皇帝たちの本
悪名高き皇帝たち。
神君アウグストゥスの後に続いた四代に渡る皇帝たちの物語である。
あれほどまでに自分の血を継ぐものを継承者にすることにこだわったアウグストゥスだったが、その後を引き継いだのは妻リヴィアの連れ子だったティベリウスである。
ディベリウスへの皇帝指名は、アウグストゥスにとっては姉オクタヴィアの孫に当たるゲルマニクスが成長するまでの中継ぎだった。
カエサルが構想し、アウグストゥスが実現した広大なローマ帝国を、ティベリウスは適正に管理し強固にした。
このティベリウスの管理の範囲は経済、軍事の多岐にわたって人と物とを育てる結果になっています。
そのおかげで次代のカリグラ、そして一代おいてネロが無能にも蕩尽できるほどの蓄えがあったくらい。
平和と繁栄を享受したはずのティベリウスの統治を、ローマ帝国の人々はなぜ悪名としたのだろうか。
それはティベリウスが徹底した合理主義者であり厭世家だったからだろう。
首都であるローマさえも捨ててカプリ島に隠棲することで、ローマの首都としてのメンツを潰し元老院の無価値さを喧伝したからだ。
アウグストゥスのように民衆の機嫌を取る必要が、名門出身のティベリウスにはなかったのかもしれない。
他人に、まして後世の人間にどう言われようともティベリウスは気にしなかっただろう。
彼にとって完璧なローマ帝国を作り上げたのだから。

老帝の後を継いだカリグラは、血統は父母ともに由緒正しくアウグストゥスにつながり、そして若く人気が高かった。
それがなぜ三年ちょっとの統治で暗殺されて終わる羽目になったのか。
実子であるドゥルーススについて徹底的に分析した文章を元老院に提出できるほどのティベリウスが、カリグラがどのような人間かを予測できなかったはずはない。
カエサルがアグリッパをオクタヴィアヌスにつけたように、誰かをカリグラに付けてやることもティベリウスならできたはずだ。
血統にこだわったアウグストゥスへの、ティベリウスの意思表示だったように思えた。

次の皇帝はクラウディウス、アウグストゥスが期待を寄せていたゲルマニクスの弟であり、カリグラの叔父に当たる。
ティベリウスの路線を踏襲し、ローマ帝国の維持管理にあたっていたクラウディウスが悪名高いのはなぜか。
それはメッサリーナ、そして皇帝ネロの母親アグリッピーナという二人の妻に依るところが大きい。
公人としてはうまくやっていけても、私人としては苦労人すぎて気の毒になるくらいだ。
しかし皇帝である以上、夫婦喧嘩に負けて妻の我が儘を通した結果として国が傾くこともあるわけで。
最たる例がネロを後継者に据えたことだから、結果論とは言え悪名高くなってしまっても仕方ないかと。

負のイメージで語られるローマ皇帝といえばやはりネロが一番有名ではないでしょうか。
母親の支配が強すぎて人間として失敗してしまったいい例で、これの規模が小さい版は現代にもあちこちで見ることができる。
皇帝であるよりも芸術家でありたいというその嗜好は、スッラにように仕事が出来てなおかつ公私を完全にわけることができれば許されたのかもしれないけれどね。
その芸術への傾倒ぶりに比例することない才能の発露は、ペトロニウスじゃなくても目を覆いたくなるもので。
この辺は名著『クオ・ワディス』をあわせて読みたいところです。
四人の皇帝たちについて、それぞれに詳しく面白く書かれていて非常に興味深かった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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