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mono sashi
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#ナツイチ 「ナツイチ2017」を制覇しよう!参加書評。「旅」と「電車」に関連した経済小説と知って手にとったものの……。 
祐太郎さんが主催されている「ナツイチ2017」を制覇しよう!の読書企画に参加すべく、城山三郎『臨3311に乗れ』を手にとった。

本書は昭和30年に誕生した「近畿日本ツーリスト株式会社」の前身のひとつ「日本ツーリスト」(後に株式会社)の経営陣に焦点を当て、会社の草創期、経営拡張期、合併期を経て、社長の馬場勇氏が鬼籍に入るまでの足跡を追った、「社史-近畿日本ツーリスト-」とも言うべき経済小説だ。タイトルに付く”臨3311”とは、戦後まもなく「日本ツーリスト」が「安全でスピーディーな夢の旅行」の実現を掲げて、国電と掛け合い準備した東京ー関西間を結ぶ、修学旅行者専用の臨時列車のことである。

舞台は戦後三年近く経った東京・秋葉原から幕を開ける。その高架下の小さな事務所には「現代版の蜂須賀小六と野武士の一党」と著者が形容するような、およそ旅行業界とはかけ離れた風采をもつ人々が寄り集まっていた。その構成員には、引揚者、ヤミ屋・医者・音楽家の卵・旧軍人・元教師と、学歴も年齢もさまざまな顔ぶれが揃い、まさにそこは梁山泊と呼ぶにふさわしい所帯をなしていた。彼らが後に「近畿日本航空観光株式会社」と合併する「日本ツーリスト」の面々である。

どこの馬の骨とも知れぬメンバーを束ねるのは、東大経済学部出身で色眼鏡をかけたアクの強さと強烈なキャラクターで組織を引っ張る、社長の馬場勇。彼は「学歴なんて、ないものと思え」「学歴なんて、バカみたいなもんだ」と豪語し、世界規模の事業を展開する「アメリカン・エキスプレス、トーマス・クック社に追いつけ」との目標を掲げて、戦後の荒廃期に旅行業界へ殴り込みをかける。本書には馬場社長をはじめ、時代の空気に支えられて、強烈なバイタリティーと猛烈な仕事ぶりで会社を急成長させた男たちの姿が、簡潔な筆致で描かれている。

その仕事ぶりと使命感に燃えた彼らの姿を知るにつけ、怠け者の私も「胸を打たれた!」と言いたいところだったが、如何せん中盤から終盤にかけての構成に工夫が感じられずひどく単調で、途中で読むのもをやめようかと思ったほど。「誰々が何々をした式」の記述に終始するのではなく、もう少し大きな構えをとって、当時の時代情勢や旅行事情を彼らの軌跡にあわせて丁寧に織り込んでいけば、また違った読み物になると思ったが、これは自分の好みに淫した感想なのかもしれない。

ちょっと期待外れだったが、この他にも「紫電改」の”川西航空機”をテーマにした『零からの栄光』、”花王”の高級石鹸の歴史を追った『男たちの経営』なども発表しているようなので、機会があったら手にとってみよう。
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mono sashi
mono sashi さん本が好き!1級(書評数:91 件)

サイトへの出没回数がメタキン並みにレアなので、
皆さまの書評は、投票してくださった方のものを読むようにしています。
ごめんちゃい。
(2019/11/16)

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