ことなみさん
レビュアー:
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素晴らしい天才の世界は、4大悲劇と呼ばれる、中でもリア王の大惨劇の世界は、登場人物の惨めさが群を抜いていて。舞台用の残酷できらびやかな詩的な言葉で語られていく。
愚かな親の決断は愚かな子供をますます愚かな泥沼に引きずり込む。ブリテンという広大な領土と位を餌に老後を安楽に暮らそうとしたのが間違い。見る目が曇っていたのに気がついた時は手遅れ。
いつの世にも変わらない心情は身に染みて読める。老いに心身ともに蝕まれ、恵まれた生涯だと思っていたのが、権威も位もなくなって初めて経験するような、並みでない恐怖と落胆。幾重にも重なったショックのあまり命を縮める結果になった。
それでもなかなか自分を顧みることはなく、なまじ力と地位があると、深い落とし穴に気がつかないということか。
いい人と悪い人、腹黒い人と真実に生きる人が対照的に鮮明に描き分けられて効果的、わかりやすい。
そんなありきたりのストーリーに残酷な衣を着せた作品で、これを宮中の劇場で上演すれば、高貴な方々も他人ごとのように鑑賞し、作者の作り出した見事な物語のテンポのいい劇中の世界に拍手喝采だったでしょう。
昔の劇団民藝(今を知らないもので)ならきっと力のある世界を見せてくれたかもなどと横道にそれたり、今を見ていないだけかもしれないが、ふと舞台好きだったころを思い出してしまったり。
今回再読「読み直し、学び直し」ができた。
シェイクスピアという人は汚れた貪欲な人間を深く客観的に、それも酷な肉親の愛憎にして見せる。やっと目が開けた王が見たのは、純な末娘だったが、既に彼女は生きていなかった(お伽話とはここが違う)。
こういった心の裏表を運命に紛れこませる演出は、読むときは目的が鮮明で、分かりやすい。
濁流と清流が出会って波にもまれ、巧妙に騙され(今なら通用しないようなやり方かもしれないが)唆され、純すぎて盲目のまま斬り合い殺し合う。今でも見ごたえのある舞台でしょう。
荒野を彷徨うリアの最後の姿を見せることで観客を魅了したでしょう。
中でも狂言回しのような道化が素晴らしい。語りはきらびやかな詩のようで、当てこすりや箴言や、もう一つの進言や、気にもかけられない立場を使っての台詞がシェイクスピアの独壇場のようだ。これが読者や観客の心を覗かれるような、ふざけた台詞であっても、言葉に包み込んだ奥にあるもろもろのむき出しの真理を鮮明に語る。面白い。
兄の庶子故の恨みやいじけた生い立ちが悪なら、嫡子で恵まれた弟は疑わず彼の言葉に従って愚かな選択をする。生きる辛酸をなめたのち人生に目覚めていくのも純粋過ぎて愚か。荒野で巡り逢ったリア王の狂った姿に出会い過酷な人生に目覚めていく、ここは物語的で最後の華か。
一方悪は悪なりに悩み死んでいく兄。これも哀れと思えば悲劇。
こういった人々を絵のような形で動かしているが、ハムレットの心理劇のような苦しみとは一味違う、欲望で殺し合う世界。今でも形を変えて充分に通じる現実的な泥沼を鮮やかに見せている、改めてとても面白かった。
いつの世にも変わらない心情は身に染みて読める。老いに心身ともに蝕まれ、恵まれた生涯だと思っていたのが、権威も位もなくなって初めて経験するような、並みでない恐怖と落胆。幾重にも重なったショックのあまり命を縮める結果になった。
それでもなかなか自分を顧みることはなく、なまじ力と地位があると、深い落とし穴に気がつかないということか。
いい人と悪い人、腹黒い人と真実に生きる人が対照的に鮮明に描き分けられて効果的、わかりやすい。
そんなありきたりのストーリーに残酷な衣を着せた作品で、これを宮中の劇場で上演すれば、高貴な方々も他人ごとのように鑑賞し、作者の作り出した見事な物語のテンポのいい劇中の世界に拍手喝采だったでしょう。
昔の劇団民藝(今を知らないもので)ならきっと力のある世界を見せてくれたかもなどと横道にそれたり、今を見ていないだけかもしれないが、ふと舞台好きだったころを思い出してしまったり。
今回再読「読み直し、学び直し」ができた。
シェイクスピアという人は汚れた貪欲な人間を深く客観的に、それも酷な肉親の愛憎にして見せる。やっと目が開けた王が見たのは、純な末娘だったが、既に彼女は生きていなかった(お伽話とはここが違う)。
こういった心の裏表を運命に紛れこませる演出は、読むときは目的が鮮明で、分かりやすい。
濁流と清流が出会って波にもまれ、巧妙に騙され(今なら通用しないようなやり方かもしれないが)唆され、純すぎて盲目のまま斬り合い殺し合う。今でも見ごたえのある舞台でしょう。
荒野を彷徨うリアの最後の姿を見せることで観客を魅了したでしょう。
中でも狂言回しのような道化が素晴らしい。語りはきらびやかな詩のようで、当てこすりや箴言や、もう一つの進言や、気にもかけられない立場を使っての台詞がシェイクスピアの独壇場のようだ。これが読者や観客の心を覗かれるような、ふざけた台詞であっても、言葉に包み込んだ奥にあるもろもろのむき出しの真理を鮮明に語る。面白い。
兄の庶子故の恨みやいじけた生い立ちが悪なら、嫡子で恵まれた弟は疑わず彼の言葉に従って愚かな選択をする。生きる辛酸をなめたのち人生に目覚めていくのも純粋過ぎて愚か。荒野で巡り逢ったリア王の狂った姿に出会い過酷な人生に目覚めていく、ここは物語的で最後の華か。
一方悪は悪なりに悩み死んでいく兄。これも哀れと思えば悲劇。
こういった人々を絵のような形で動かしているが、ハムレットの心理劇のような苦しみとは一味違う、欲望で殺し合う世界。今でも形を変えて充分に通じる現実的な泥沼を鮮やかに見せている、改めてとても面白かった。
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徹夜してでも読みたいという本に出会えるように、網を広げています。
たくさんのいい本に出合えますよう。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:232
- ISBN:9784102020050
- 発売日:1972年03月03日
- 価格:420円
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