はるほんさん
レビュアー:
▼
三島作品に、なぜか世界の○○が重なった…?
三島由紀夫レター教室以外にも
「えっ、これが三島由紀夫!?」的作品が結構あると知り、
もう1冊読んでみることにした。
演歌か任侠映画みたいなタイトルだが
中身は古典的なハードボイルドと
現代風のライトコミカルを織り交ぜたようなストーリーだ。
「週刊プレイボーイ」に連載されていたという
これまたちぐはぐなカンジがなんとなく興味深い。
ある日、新聞の文字が全部ゴキブリに見えてしまい、
生きることが嫌になってしまった羽仁男。(←はにお、と読む。なんかこれもワロタ)
だが自殺にも失敗し、自分の命を売る新聞広告を出す。
意外にも次々と買い手がつくも、彼自身は不思議にも死にそびれる。
不倫した女房と死んでくれという老人。新薬実験を依頼する女。
母に生き血をすすらせてくれという少年に、
某国の情報漏洩を調査中のスパイまで。
しかしここで「休暇」をいれたあたりから、彼の人生設計(?)は狂いだす。
死を連呼する女と暮らしはじめてから、何かが恐ろしくなってきたのだ──
面白いか面白くないかと言われたら
前 半 は 不 思 議 な ほ ど 面 白 く な い 。
いや、すごく読みやすいし、面白い設定なんである。
すらすらと読めるのだが、これだけコミカル調の設定を
こんなに淡々と読んでいいのだろうかと思うくらいに起伏が無い。
原因は多分、文体だ。
レター教室を読んだときにもソレは感じたが、
三島の文章は非常に正しいと言うか、キッチリしている。
情景や風景も主語と述語と置いて的確に描き出そうとするために
どこか冷静な距離を保ったうえで、ストーリーが進んでいく。
レター教室は単純に娯楽作品だったから気にならなかったが、
「エンターテイメント」と「生死というシリアスな素材」の取り合わせに
そのちぐはぐさが妙に浮彫になっている。
が逆に、三島作品に改めて興味を持った。
このちぐはぐさをどこかで知っている。
村上春樹だ。
春樹作品を全部読んだわけではないので
ファンの方には「はぁ?」と言われるかもしれないし、
自分でも上手く説明できないのだが。
ついでに三島のことをいろいろぐぐってみたが
英語やフランス語を話している動画があって、ちょっと吃驚した。
略歴によるとドイツ語も話せたらしい。
病弱な身体を筋肉改造したという話からも
彼は結構な完璧主義者だったのかもしれない。
人は精一杯生きて、精一杯死ぬべきだとでもいうような
彼なりのカタルシスがあったんではないだろうか。
その辺は春樹作品には見られない力技だ。
時代を不透明にしてしまう中性的な春樹作品と違って、
三島作品からは昭和臭も男臭さもプンプンする。
だが修飾語が多いと言うか、「~のような」という表現法が
二人には共通している気がする。
死を達観したというか、死をも文字で表現しようとする距離感が
どことなく春樹を思わせたような気がしたのだ。
上手く言えないが。
死というテーマを軽く始めた前半から
物語の後半はやや生々しさを持つ。
「プレイボーイ」を読む世代に合わせた死生観を狙ったのだろうか。
程よく男女仲を入れたあたりにも、そんな狙いを感じないでもない。
なかなか計算された作品かもしれない。
もう少し三島作品を読んでみたくなった。
だが女性の乳房の表現が「古墳のよう」だったのは
はたして青少年たちにウケたのかどうか。(笑)
「えっ、これが三島由紀夫!?」的作品が結構あると知り、
もう1冊読んでみることにした。
演歌か任侠映画みたいなタイトルだが
中身は古典的なハードボイルドと
現代風のライトコミカルを織り交ぜたようなストーリーだ。
「週刊プレイボーイ」に連載されていたという
これまたちぐはぐなカンジがなんとなく興味深い。
ある日、新聞の文字が全部ゴキブリに見えてしまい、
生きることが嫌になってしまった羽仁男。(←はにお、と読む。なんかこれもワロタ)
だが自殺にも失敗し、自分の命を売る新聞広告を出す。
意外にも次々と買い手がつくも、彼自身は不思議にも死にそびれる。
不倫した女房と死んでくれという老人。新薬実験を依頼する女。
母に生き血をすすらせてくれという少年に、
某国の情報漏洩を調査中のスパイまで。
しかしここで「休暇」をいれたあたりから、彼の人生設計(?)は狂いだす。
死を連呼する女と暮らしはじめてから、何かが恐ろしくなってきたのだ──
面白いか面白くないかと言われたら
前 半 は 不 思 議 な ほ ど 面 白 く な い 。
いや、すごく読みやすいし、面白い設定なんである。
すらすらと読めるのだが、これだけコミカル調の設定を
こんなに淡々と読んでいいのだろうかと思うくらいに起伏が無い。
原因は多分、文体だ。
レター教室を読んだときにもソレは感じたが、
三島の文章は非常に正しいと言うか、キッチリしている。
情景や風景も主語と述語と置いて的確に描き出そうとするために
どこか冷静な距離を保ったうえで、ストーリーが進んでいく。
レター教室は単純に娯楽作品だったから気にならなかったが、
「エンターテイメント」と「生死というシリアスな素材」の取り合わせに
そのちぐはぐさが妙に浮彫になっている。
が逆に、三島作品に改めて興味を持った。
このちぐはぐさをどこかで知っている。
村上春樹だ。
春樹作品を全部読んだわけではないので
ファンの方には「はぁ?」と言われるかもしれないし、
自分でも上手く説明できないのだが。
ついでに三島のことをいろいろぐぐってみたが
英語やフランス語を話している動画があって、ちょっと吃驚した。
略歴によるとドイツ語も話せたらしい。
病弱な身体を筋肉改造したという話からも
彼は結構な完璧主義者だったのかもしれない。
人は精一杯生きて、精一杯死ぬべきだとでもいうような
彼なりのカタルシスがあったんではないだろうか。
その辺は春樹作品には見られない力技だ。
時代を不透明にしてしまう中性的な春樹作品と違って、
三島作品からは昭和臭も男臭さもプンプンする。
だが修飾語が多いと言うか、「~のような」という表現法が
二人には共通している気がする。
死を達観したというか、死をも文字で表現しようとする距離感が
どことなく春樹を思わせたような気がしたのだ。
上手く言えないが。
死というテーマを軽く始めた前半から
物語の後半はやや生々しさを持つ。
「プレイボーイ」を読む世代に合わせた死生観を狙ったのだろうか。
程よく男女仲を入れたあたりにも、そんな狙いを感じないでもない。
なかなか計算された作品かもしれない。
もう少し三島作品を読んでみたくなった。
だが女性の乳房の表現が「古墳のよう」だったのは
はたして青少年たちにウケたのかどうか。(笑)
投票する
投票するには、ログインしてください。
歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
- この書評の得票合計:
- 44票
| 読んで楽しい: | 25票 | |
|---|---|---|
| 参考になる: | 17票 | |
| 共感した: | 2票 |
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。
この書評へのコメント

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:筑摩書房
- ページ数:269
- ISBN:9784480033727
- 発売日:1998年02月01日
- 価格:714円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。























