tamupoyoさん
レビュアー:
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完全に舐めてました、死の接吻。
ごめんなさい!
とんでもなく面白い本だった……。
面白すぎて嫉妬するぐらい……。
アイラ・レヴィン(1929-2007)
1953年発表
大学生の主人公は、同級生の恋人から妊娠を理由に結婚を迫られ、窮地に立たされていた。
厳格な彼女の父は、学生結婚など断じて許さないだろう。
確実に彼女は勘当される。
父の恩恵を受け取れなくなった彼女に用などないというのに。
恋人になったのは、彼女の父親が大会社の社長であるからなのだ。
彼はごく自然に計画を練り始めた。
彼女を殺害する計画を。
夜の九時。
外は土砂降り。
物語は佳境。
いったん敢えて手を止めて、これが忘れられない読書になることを改めて確信する。
読み終えて今。
夜食のラーメンを啜りながら、落ち着いてから感想を書くべきか、勢いに任せるか迷っている。
うーむ。
どうしたものか。
で、結局、勢いのまま書くことにした!
ほんとに面白い本ってのは、そうそう出会えるものではないし、読み終わっても興奮するものとなると、さらに貴重だ。
今後、もう一度この本を読むときには、ここまでの興奮を味わえないことはわかっている。
だったら尚更、記録で残しておかなくては。
最初の衝撃は、二章の終わりで訪れた。
正直そこまでは、「ふーん、たしかにオールタイムベストで上位に食い込むだけあって、こなれた文章してんな。プロットに無駄がないし、アメリカ人作家特有の饒舌な語り口のわりに、それについてまわる脱線が全然ない。なーるほどねえ」と、超絶上から目線読みをしていた。
なんでそんな敵意剥き出しだったかというと、(こいつ、もしや例のアレじゃないか?)と警戒していたからだ。
例のアレとは、 『死の蔵書』 でも熱く語ったハードボイルドヤロー小説のことである。
だってこの、往年のポケミスを思わせる表紙!
それから、死の接吻というタイトル!
食わず嫌いハードボイルドのわたしからすると、ハードボイルドの匂いが、ものすごくしてくるのだ。
一章を読み始めて、ハードボイルドというよりは、主人公やな奴ジャンルの小説だなと気づいても、まだ警戒は続いた。
ちなみに結構なやな奴っぷりなので、もし今後この本を手にとって、その部分で挫折しそうになった場合、とにかく一章を耐えぬいてください。
投げ出してしまうには、ほんとに惜しい物語なので。
わたしも「げっ、これはあの憎きライト(デスノートの主人公)じゃないか!!」と憤慨した。
ここで、『赤と黒』や『罪と罰』を思い出せない自分が悲しい。
そんなこんなで、警戒心とむしゃくしゃとで読み進めていったところ、先刻言った二章の終わりで、完全に不意打ちをくらい、ひっくり返るかと思った。
ああああ!!!! と絶叫した。
心の中で。
でもちょっと声が出たかも。
死の接吻の感想サイトには、ほとんどの場合「ネタバレは絶対見てはならぬ! むしろ、あらすじも危険!」と書いてある。
その理由がここで判明する。
完全に舐めてました、死の接吻。
ごめんなさい!
とんでもなく面白い本だった……。
面白すぎて嫉妬するぐらい……。
こういう本当に予想外のところから、わっ! って驚かされるから読書はやめられない。
驚かされてるのに、その後ものすごくスッキリするんだから、どんでん返しは堪らない。
作者にすっかり騙されること以上の喜びはないなとさえ思う。
普段、書評を書くときは、なるべく本から受け取ったことを吟味して、自分なりの考えを見つけていこうと意識している。
でも、ネタバレが怖くて、今回はそれが難しい。
唯一わかっている点、今回の殺人の動機について、気になったことがあったので、それだけ書いておこう。
今回の殺害理由は、野心。
主人公は成り上がるために愛情を利用し、相手が邪魔になったら、簡単に自分の人生から追い出してしまう。
野心のために、ここまでできるのって、アメリカっぽいなとなんとなく思う。
日本でもありえるだろうけれど、アメリカのほうが自然な感じ。
ジリ貧で最低な環境で育った主人公が、どうしても成り上がりたいと思う気持ちまでは理解できる。
その手段で、人を利用するとか、金持ちと結婚とか、なんか努力の方向が不思議。
自分の手で掴み取りたいと思わないのかな。
激しい野心のわりに、手段はできるだけ楽に、簡単にってのが見えて、そんなもんかなあとなる。
わたしの野心のイメージには、根本に源氏というか、頼朝の姿があって、だから野心ていうと、どうもストイックな激情みたいなのを想像しちゃう。
最後にどうしても言っておきたい。
表紙を変えて、タイトルを死の接吻から、直訳『死ぬ前にひとつ口づけを』にしたほうが売れると思う、ハヤカワさんっ!!
接吻って単語が、ものすごく恥ずかしいんだってば!!
1953年発表
大学生の主人公は、同級生の恋人から妊娠を理由に結婚を迫られ、窮地に立たされていた。
厳格な彼女の父は、学生結婚など断じて許さないだろう。
確実に彼女は勘当される。
父の恩恵を受け取れなくなった彼女に用などないというのに。
恋人になったのは、彼女の父親が大会社の社長であるからなのだ。
彼はごく自然に計画を練り始めた。
彼女を殺害する計画を。
夜の九時。
外は土砂降り。
物語は佳境。
いったん敢えて手を止めて、これが忘れられない読書になることを改めて確信する。
読み終えて今。
夜食のラーメンを啜りながら、落ち着いてから感想を書くべきか、勢いに任せるか迷っている。
うーむ。
どうしたものか。
で、結局、勢いのまま書くことにした!
ほんとに面白い本ってのは、そうそう出会えるものではないし、読み終わっても興奮するものとなると、さらに貴重だ。
今後、もう一度この本を読むときには、ここまでの興奮を味わえないことはわかっている。
だったら尚更、記録で残しておかなくては。
最初の衝撃は、二章の終わりで訪れた。
正直そこまでは、「ふーん、たしかにオールタイムベストで上位に食い込むだけあって、こなれた文章してんな。プロットに無駄がないし、アメリカ人作家特有の饒舌な語り口のわりに、それについてまわる脱線が全然ない。なーるほどねえ」と、超絶上から目線読みをしていた。
なんでそんな敵意剥き出しだったかというと、(こいつ、もしや例のアレじゃないか?)と警戒していたからだ。
例のアレとは、 『死の蔵書』 でも熱く語ったハードボイルドヤロー小説のことである。
だってこの、往年のポケミスを思わせる表紙!
それから、死の接吻というタイトル!
食わず嫌いハードボイルドのわたしからすると、ハードボイルドの匂いが、ものすごくしてくるのだ。
一章を読み始めて、ハードボイルドというよりは、主人公やな奴ジャンルの小説だなと気づいても、まだ警戒は続いた。
ちなみに結構なやな奴っぷりなので、もし今後この本を手にとって、その部分で挫折しそうになった場合、とにかく一章を耐えぬいてください。
投げ出してしまうには、ほんとに惜しい物語なので。
わたしも「げっ、これはあの憎きライト(デスノートの主人公)じゃないか!!」と憤慨した。
ここで、『赤と黒』や『罪と罰』を思い出せない自分が悲しい。
そんなこんなで、警戒心とむしゃくしゃとで読み進めていったところ、先刻言った二章の終わりで、完全に不意打ちをくらい、ひっくり返るかと思った。
ああああ!!!! と絶叫した。
心の中で。
でもちょっと声が出たかも。
死の接吻の感想サイトには、ほとんどの場合「ネタバレは絶対見てはならぬ! むしろ、あらすじも危険!」と書いてある。
その理由がここで判明する。
完全に舐めてました、死の接吻。
ごめんなさい!
とんでもなく面白い本だった……。
面白すぎて嫉妬するぐらい……。
こういう本当に予想外のところから、わっ! って驚かされるから読書はやめられない。
驚かされてるのに、その後ものすごくスッキリするんだから、どんでん返しは堪らない。
作者にすっかり騙されること以上の喜びはないなとさえ思う。
普段、書評を書くときは、なるべく本から受け取ったことを吟味して、自分なりの考えを見つけていこうと意識している。
でも、ネタバレが怖くて、今回はそれが難しい。
唯一わかっている点、今回の殺人の動機について、気になったことがあったので、それだけ書いておこう。
今回の殺害理由は、野心。
主人公は成り上がるために愛情を利用し、相手が邪魔になったら、簡単に自分の人生から追い出してしまう。
野心のために、ここまでできるのって、アメリカっぽいなとなんとなく思う。
日本でもありえるだろうけれど、アメリカのほうが自然な感じ。
ジリ貧で最低な環境で育った主人公が、どうしても成り上がりたいと思う気持ちまでは理解できる。
その手段で、人を利用するとか、金持ちと結婚とか、なんか努力の方向が不思議。
自分の手で掴み取りたいと思わないのかな。
激しい野心のわりに、手段はできるだけ楽に、簡単にってのが見えて、そんなもんかなあとなる。
わたしの野心のイメージには、根本に源氏というか、頼朝の姿があって、だから野心ていうと、どうもストイックな激情みたいなのを想像しちゃう。
最後にどうしても言っておきたい。
表紙を変えて、タイトルを死の接吻から、直訳『死ぬ前にひとつ口づけを』にしたほうが売れると思う、ハヤカワさんっ!!
接吻って単語が、ものすごく恥ずかしいんだってば!!
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最近は海外ミステリを中心に
まずはオールタイムベストを塗りつぶすことが目標
時々、文学も読みます
今読んでる本
・夜歩く
読む予定の本
・死体が多すぎる
・樽
・半身
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- 出版社:早川書房
- ページ数:377
- ISBN:9784150711511
- 発売日:1976年01月01日
- 価格:714円
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