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DBさん
DB
レビュアー:
視覚と脳の認識についての本
錯視というと、平面なのに下に向けて穴が開いているように見える柄や、静止しているのに動いて見える幾何学模様のような図が思い浮かぶ。
視覚を勘違いさせるようなトリックである錯視の技術についてグラフィック・デザイナーである著者が追及していく。

古代エジプトの壁画にも使われている正投影は正面と真横を同時に見せるもので、具象描写の基本的な技術だった。
そこから発展して光を物体に平行にあてて影が映った壁に物体の形を写していく正投影図や、斜めの位置からの斜投影によって物体を描写することで芸術表現の可能性は一気に広がったそうです。

さらに地平線上の一点に収束するような遠近法を用いることで絵画に奥行きを持たせることができるようになり、多方向の消失点を使うことで垂直方向の表現が可能になる。
文章で読んでいるとよくわからない話も、挿絵を見れば一瞬で理解できるのが視覚のすごいところであり、それをだますことができるというのが面白い。
遠近法が生み出す目の錯覚は非常に強力で、物の長さや大きさが同じものなのに違うように見えてしまう。
こうした錯覚の多くは遠近法で描かれた絵画や都会の風景を見慣れていない未開の人間にはさほど強く表れないことから、錯視が脳の働きによっておこるものだということがわかるそうです。

さらに影の描き方や反射、そして自然が生み出した錯視ともいうべき蜃気楼とブロッケン現象についても解説してある。
ブロッケン現象は雲に巨大な影を映し出すという、特殊な気象条件下で夕暮れ時の山頂に立つことで起こる現象だが、聖書の神話で山頂で神が現れて預言者と語り合ったというような奇跡はこの現象に由来したのかもしれないと思いました。

人間が物を見る時に判断する物の陰影は錯覚を増大させる効果も持つし、空気遠近法という空気のかすみを利用することで距離や奥行きを表現することができる技法もある。
またルビンの壺のように、人間の脳が二つの者を同時に把握することを好まないので視点を変えることで一つの絵が二つの見え方になるのも面白い。

人の視覚も人それぞれで、共感覚という聴力情報が色や形に変換されて感じ取れる特殊な感覚を持つ人もいれば、生体の発する地場を感知してオーラを見る人もいる。
視覚というのが実は騙されやすいものなのだというのがよくわかった本だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2049 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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