Yasuhiroさん
レビュアー:
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小川洋子の残酷系短編集の落穂拾い。彼女にしてはそれほどレベルは高くないが、何かを喪失していく人々を描くそのディテイルはやはり小川洋子そのものであり、奇妙で残酷で不条理で美しい。
先日紹介した「寡黙な死骸、みだらな弔い」と同系統の小川洋子の短編集を紹介したいと思います。発刊は1996年と2年古く、あのSMポルノ系「ホテル・アイリス」と同年の作品です。が、こちらは「ホテル・アイリス」ほどひどくない(をい。
十作収められていますが、はっきり言って小川洋子としてはそれほどレベルは高くありません。ただ、何かを喪失していく人々の、彼女らしいディテイルの書き込みはやはり奇妙で残酷で不条理で美しい。その中から三つほど選んで寸評してみます。
「刺繍する少女」 余命幾ばくもない母とホスピスにやって来たぼくの前に現れたのは、昔隣の別荘にいて刺繍を教えてくれた喘息の少女。ホスピスで過ごすうちに僕はその少女とまた仲良くなるが、母の死とともに彼女は姿を消す。まあ、タイトル作だけあって王道系です。
「森の奥で燃えるもの」 その収容所へ入れられるものは左耳から針金で「ぜんまい腺」を抜き取られ、それがないと元の世界へ戻れない。外界の人である登録係の少女に恋をした僕はぜんまい腺を取り返さないといけないが。。。異界の不条理と静謐さは村上春樹の「世界の終わり」のような感触で、これが今回の作品群の中では一番良かったと思います。
「図鑑」 愛人との逢瀬の前に図書館に立ち寄り、ふと手に取った「寄生虫図鑑」。そこからおぞましいラストへ転がり落ちていく、救いのない気持ちの悪さもまた小川洋子の持ち味。。。ではあるのですが、私のような怖がりにはゾワ~と来ます。
その他の作品は私にはまあまあの出来程度の感触でしたが、小川洋子ファンと言っても各人各様、スイートスポットは人によって異なると思うので、気に入った作品が見つかるかもしれません。
十作収められていますが、はっきり言って小川洋子としてはそれほどレベルは高くありません。ただ、何かを喪失していく人々の、彼女らしいディテイルの書き込みはやはり奇妙で残酷で不条理で美しい。その中から三つほど選んで寸評してみます。
「刺繍する少女」 余命幾ばくもない母とホスピスにやって来たぼくの前に現れたのは、昔隣の別荘にいて刺繍を教えてくれた喘息の少女。ホスピスで過ごすうちに僕はその少女とまた仲良くなるが、母の死とともに彼女は姿を消す。まあ、タイトル作だけあって王道系です。
「森の奥で燃えるもの」 その収容所へ入れられるものは左耳から針金で「ぜんまい腺」を抜き取られ、それがないと元の世界へ戻れない。外界の人である登録係の少女に恋をした僕はぜんまい腺を取り返さないといけないが。。。異界の不条理と静謐さは村上春樹の「世界の終わり」のような感触で、これが今回の作品群の中では一番良かったと思います。
「図鑑」 愛人との逢瀬の前に図書館に立ち寄り、ふと手に取った「寄生虫図鑑」。そこからおぞましいラストへ転がり落ちていく、救いのない気持ちの悪さもまた小川洋子の持ち味。。。ではあるのですが、私のような怖がりにはゾワ~と来ます。
その他の作品は私にはまあまあの出来程度の感触でしたが、小川洋子ファンと言っても各人各様、スイートスポットは人によって異なると思うので、気に入った作品が見つかるかもしれません。
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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