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はるほん
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空海は──北斗神拳継承者である。
上巻の続き。

空海の話をするには「密教」が不可避だ。
コレを分かりやすく説明できないだろうかと考えていたのだが
北斗の拳に例えてみようと思う。

南斗聖拳は奈良仏教である。
多くの分派があり、強ければ誰でも習得できる。
北斗神拳は密教である。
奥義を極めた者だけに継承される、一子相伝の拳である。
最澄は南斗聖拳を体系化してまとめるために、
空海は北斗神拳を学ぶため唐に来たのである。

が空海は師より、北斗神拳を伝承してしまう。
最澄は黙々と南斗聖拳を学び、ついでに北斗神拳のことも知る。
が帰国したらば、北斗神拳は天皇のマイブーム中だったのだ。

密教とは。
字面通りに説明すると「秘密」の仏教。
当時の日本には「秘伝の呪文」的な伝わり方をしてしまい、
丁度病床にあった天皇は、密教でパッと治るんでしょ?と期待する。
無茶ブリである。

正しくは「こっそり教わる」の意だ。
経典の深層にある世界──すなわち「神」を知ることを意味する。
大日如来である。
大日如来=「世界の理(ことわり)」というカンジなのだが
この辺はわからんなーで片づけてくれていい。
北斗神拳でも奥義の真髄は「悲しみ」だから、分からんでOKである。

この北斗と南斗の相容れなさに、空海と最澄も決裂するのである。

最澄「もっと密教勉強するから、本貸して?」
空海「まあいいですけど」
最澄「奥義の本も貸して?」
空海「帰れ」
最澄は真面目に空海に教えを乞うたのだが、
空海に「半年ROMれ」と追い返される。無理もない。

空海はすごい。
「大日如来が頂点であり、世界に因果している」という教えは
一神教でありながら、八百万の神を持つ神道も否定しない。
合理的というと罰当たりかもしれないが、
空海には完全解のような隙の無さを感じる。

しかし「仏教を万民に開く」という目的は、最澄と同じなのだ。
だが「大日如来を感じろ!」と言われて、ピンとくる人は少なかろう。
「この順番でやれば悟れるよ!」と言われても
農民たちにすれば「そんな時間ねぇよ」であろう。

万民へ開かれる1歩ではあったものの、
まだ二人は宗教という高みに在ったと、自分は感じる。

真言宗は今もほぼ空海の説いた路線上にあるが
天台宗はその後、日蓮・栄西・法然・親鸞・道元など
鎌倉仏教と呼ばれる様々な派生宗教を生み出す。
最澄が「不完全」だったからこそ
生徒たちは万民に開く仏教を追求したと言える。

空海に隙はない。
だが「真言宗の国」にならなかった
日本という不可思議な宗教観が、自分は好きだ。
都合のいいときに都合のいい神をチョイスする
八百万の神の国・日本。

自分の好みの為には、空海も最澄も不可欠なのだ。
北斗の拳だってライバルあってこその名作だ。
故に本書のイケメン空海だけでなく
ドジっ子最澄も見限らないで欲しいのである。

って私、最澄さんディスってないか大丈夫か。
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はるほん
はるほん さん本が好き!1級(書評数:684 件)

歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。

年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。

秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。

2018.8.21

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この書評へのコメント

  1. 風竜胆2018-06-12 10:55

    元斗皇拳は、もしかして、陰陽道の安倍晴明?w

  2. はるほん2018-06-12 12:25

    >風竜胆さん
    二部は北斗に宗家や本家が出てくるので避けたいトコですが
    元斗皇拳陰陽道は面白すぎますwww

    読み直して全部仏教に当てはめたくなるからやめてwww

  3. サカナ男爵2018-06-17 08:18

    北斗神拳の例えが分かりやす過ぎました(笑)。

  4. はるほん2018-06-17 20:38

    >サカナ男爵さん
    マジすか!嬉しいぞ敵(とも)よ…!

  5. サカナ男爵2018-06-18 20:34

    学生時代、空海とか最澄って覚えにくかったように思います。
    北斗で例えるとこれほど分かりやすいとは。
    お前もまさしく強敵(とも)だった!

  6. No Image

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