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darklyさん
darkly
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希代のストーリーテラーによる鉄板の面白さ
極道小説で売れっ子になった木戸孝之介は極道の叔父が経営するホテルに招待され、愛人の清子とともに向かった。そこは、極道の番頭、フィリピン人の仲居がいる極道御用達のホテルだった。時を同じくして大手ホテルから出向させられた責任感の強い支配人の花沢と腕っこきのフレンチシェフの服部も着任し異様なホテルに戸惑っている。

そこに、夫と不満を抱えながら長年我慢して連れ添ってきた夫に対して離婚届を突き付けてやろうと目論む妻の老夫婦、経営が傾き山の中で一家心中をしようとしたが最後の贅沢をしてホテルで死のうとする家族、いかにも訳ありの若い侠客、そして一家心中したホテルの前経営者の幽霊たちが織り成すドタバタながら人情味溢れる物語。

孝之介は義母にも愛人にも暴力をふるう最低で、しかも精神的にも大人になり切れていない小説家。これは物語の最後につながる伏線となっています。登場人物は、それぞれ世俗の悩みを抱えています。しかし、ある人の命が奪われる事態に遭遇したホテルの従業員や宿泊客たちは気づきます。

今まで生きていた人間の命が失われるという厳然たる事実を目の当たりにして世俗の悩みが命の尊さに比べればいかに小さいかということ。命されあれば人生まだ取返しがつくということに。

そして、そのような経験を共有した人々には仲間意識が芽生えます。戦友、同じ事故から生還した人達などもそうなのでしょう。これは分かる気がします。

それと対照的な自分の人生を投げ出す若い侠客の行動の凄まじさ。ハードボイルド好きな人なら彼の行動の意味がすぐにわかると思います。

しかし、それにしても浅田さんの物語は面白い。笑ったり、うるっときたり。物語の底辺には常に社会的弱者へのやさしいまなざしが溢れており、それは浅田さんの浮き沈みの多かった人生経験によるものなのでしょう。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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