風竜胆さん
レビュアー:
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目高組壊滅! ええっ~!
 少し前に「ふたり」を読んでから、自分の中では、プチ赤川次郎ブームが来ている。先般近所の本屋に行った際に、古書コーナーで目に留まったのが、このなつかしの「セーラー服と機関銃」。積読の山もあることだし、しばらくは買うのを控えていたのだが、目にした時から、頭の中に、来生たかおによるテーマ曲がうずまいて、とうとう買ってしまった。
この作品は、普通の女子高生だった星泉が、高校生活という日常から、ヤクザの組長という非日常な世界を体験することになった数か月の物語だ。目高組というヤクザ組織の先代組長が、自分の甥を跡目に指名して亡くなった。ところがその甥である泉の父親も同じ時期に事故死していたため、彼女にお鉢が回ってきたという訳である。
この目高組、昔はそれなりに大きかったらしいが、現在は弱小も弱小。組員は、なんと4人しかいない。組長にさせられたおかげで、泉は高校を退学になってしまうし、エリートサラリーマンだった父親にもヘロインの運び屋だったという疑惑が浮かび、そのヘロインを巡って血なまぐさい事件が続いていく。
ところで、「セーラー服と機関銃」といえば、薬師丸ひろ子が機関銃を持って「カイカーン」とつぶやいているシーンの印象があまりに強くて、肝心のストーリーの方は、ほとんど覚えていない。少なくとも、長澤まさみ版のテレビドラマは完璧に視ているはずなのだが、なぜかコミカルな作品というようなイメージが焼き付いてしまっている。何しろ、泉が組長を務める組の名前が「目高(メダカ)組」だし、組員も4人しかいないし・・・。
だが、原作となっている本書を読んで、そのシリアスな内容に驚いた。組員はたった4人しかいないのに、一人は、拉致され、拷問された挙句に顔を硫酸で焼かれて殺される。一人は、散弾銃で撃ち殺された。泉のマンションの部屋でも殺人が行われ、その他にも人が殺されている。泉自身にしても、全裸で手術台に拘束されて、敵の変態ボスから、もう少しで生体解剖をされるところだったのだ。まさか、こんな場面がそこかしこにあるとは。人の記憶とは、あてにならないものである。
すべてが終わったあと、泉は復学し、自分のマンションで、親友の和子と同居するようになった。和子は、殺人のあった部屋で平気で眠っており、泉にとっては、一連の出来事はまるで夢の中の出来事のように思える。
どんなショッキングな出来事も、やがては日常生活の中に溶け込んで、セピア色になっていく。人はいつまでも過去の出来事にとらわれては生きていけないのだ。大切なのはこれから。この作品は、一義的には、女子高生がヤクザの組長になったらというミスマッチの面白さを描いたエンターテインメントなのだが、こういったメッセージも込められているように思える。
○関連過去記事
・セーラー服と機関銃・その後――卒業――
この作品は、普通の女子高生だった星泉が、高校生活という日常から、ヤクザの組長という非日常な世界を体験することになった数か月の物語だ。目高組というヤクザ組織の先代組長が、自分の甥を跡目に指名して亡くなった。ところがその甥である泉の父親も同じ時期に事故死していたため、彼女にお鉢が回ってきたという訳である。
この目高組、昔はそれなりに大きかったらしいが、現在は弱小も弱小。組員は、なんと4人しかいない。組長にさせられたおかげで、泉は高校を退学になってしまうし、エリートサラリーマンだった父親にもヘロインの運び屋だったという疑惑が浮かび、そのヘロインを巡って血なまぐさい事件が続いていく。
ところで、「セーラー服と機関銃」といえば、薬師丸ひろ子が機関銃を持って「カイカーン」とつぶやいているシーンの印象があまりに強くて、肝心のストーリーの方は、ほとんど覚えていない。少なくとも、長澤まさみ版のテレビドラマは完璧に視ているはずなのだが、なぜかコミカルな作品というようなイメージが焼き付いてしまっている。何しろ、泉が組長を務める組の名前が「目高(メダカ)組」だし、組員も4人しかいないし・・・。
だが、原作となっている本書を読んで、そのシリアスな内容に驚いた。組員はたった4人しかいないのに、一人は、拉致され、拷問された挙句に顔を硫酸で焼かれて殺される。一人は、散弾銃で撃ち殺された。泉のマンションの部屋でも殺人が行われ、その他にも人が殺されている。泉自身にしても、全裸で手術台に拘束されて、敵の変態ボスから、もう少しで生体解剖をされるところだったのだ。まさか、こんな場面がそこかしこにあるとは。人の記憶とは、あてにならないものである。
すべてが終わったあと、泉は復学し、自分のマンションで、親友の和子と同居するようになった。和子は、殺人のあった部屋で平気で眠っており、泉にとっては、一連の出来事はまるで夢の中の出来事のように思える。
みんなそんなものだ、と泉は思う。日常の感覚というのは、たぶん、どんなショックよりも強いものでないかしら、と・・・・・・(p365)
どんなショッキングな出来事も、やがては日常生活の中に溶け込んで、セピア色になっていく。人はいつまでも過去の出来事にとらわれては生きていけないのだ。大切なのはこれから。この作品は、一義的には、女子高生がヤクザの組長になったらというミスマッチの面白さを描いたエンターテインメントなのだが、こういったメッセージも込められているように思える。
○関連過去記事
・セーラー服と機関銃・その後――卒業――
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昨年は2月に腎盂炎、6月に全身発疹と散々な1年でした。幸いどちらも、現在は完治しておりますが、皆様も健康にはお気をつけください。
この書評へのコメント
- ぽんきち2015-09-25 09:39あ、これは赤川次郎でしたっけ・・・? 
 
 このお話と「二代目はクリスチャン」が何だか記憶の中で混じってしまっています(^^;)。
 シスターはセーラー服着ないよなぁ・・・。
 
 *あれ、添付したつもりだったのについていないみたいなので、リンク貼っておきます~。
 二代目はクリスチャン(原作・つかこうへい)
 http://www.honzuki.jp/book/229717/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
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書評一覧を取得中。。。
- 出版社:角川書店
- ページ数:378
- ISBN:9784041879870
- 発売日:2006年09月15日
- 価格:580円
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