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DBさん
DB
レビュアー:
秘境を目指す冒険の本
ぽんきちさんの書評で面白そうだと思い手にとってみました。
ご紹介ありがとうございます。

チベットの奥地にある秘境の踏破を目指した冒険物でした。
ツアンポー峡谷は世界でも有数の深さと水量を誇る峡谷だ。
中国の政策もあり、冒険家でさえもなかなか訪れる人はいない。
地理的にも、このチベットを横断したツアンポー川がヒマラヤに入ったあとどこへ行くのかわかっていなかった。
そこへ挑戦したのが1913年のベイリーの探検で、まずツアンポーがアッサムへと抜けて流れることがわかった。
そして1924年キングトン=ウォードが峡谷を探検し、虹の滝とプラマプトラ滝を発見する。
この二つの滝のあいだに挟まれた部分こそ、タイトルにもなっている空白の5マイル、未踏の地だった。

著者はこの未踏の地に足跡を残すべくチベットへと向かう。
ツアンポーをカヌーで探検しようとして死者を出した同じ大学の先輩の話を聞いても、その情熱がさめることはなかったようだ。
こういう冒険家の手記を読むと必ず、仲間や同じ場所に挑んだ人々の名前とともに遭難死や墜死といった言葉が入り混じる。
以前も命をかけて冬山に挑んでいく心境が理解できず、マッターホルンやグランドジョラスに挑んだアルピニストの手記を読んでみたことがある。
それもやはり戦友のような書き方で亡くなった仲間について書かれていたのが記憶に残る。
冒険家の心理って同じようなものなんでしょうか。

著者の旅したツアンポーは壮大な滝と神秘的な洞窟の発見という成功を収めた。
さらに二度目の旅では政治的にいまだ混乱状態にあるチベットへの想いも綴られていた。
北京五輪の時に少しニュースになっていたが、その後どうなったかは目にすることがない。
同じ仏教徒としてはチベットに平和が訪れ、政治的な意味で秘境という場所がなくなればいいとは思うけどね。

本著の末尾で著者は冒険する理由について、死を感じてこそ生きていることを感じられるというような話で結んでいた。
海難事故にあった某ニュースキャスターの弁も聞いてみたい気もするが、きっとチャレンジ精神に男のロマンと生きていることを考えるというような理論がミックスされているのだろう。
ウナギの研究のためにアフリカやアジアの秘境で壮絶な旅をする学者の本も読んだことがあるが、「研究のためには全力を尽くすが、研究のためにも決して命を危険に晒してはいけない」という行動原理は非常に納得できたんだけどね。
自分とは相容れない感性だけど、そういう冒険家たちがいたからこそ人類の発展もあったのだろうとは思える。
シャングリ・ラのイメージとは裏腹にダニと崖にひたすら苦しむ著者の姿が印象に残るが、興味深い本だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2049 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. ラスアル2017-07-26 20:13

    随分前のことです。まさに死を感じる瞬間をこの本の中に見つけてゾクッとした感覚を思い出しました。書評ありがとうございます!当時は書評を書いていなかったので読み返せるメモもなく記憶が薄れつつあるのですが、こうして他の方の書評に出会い、記憶を呼び起こされるのもまた楽しいですね!
    角幡さんの本は何冊か読んだので、また再読して書評を書きたいなと言う気になってきました。ただ、本が好き!を知ったことで書評チェックの時間がやたらと増えて本を読む時間と書評を書く時間が侵食されてるので、いつになることやら(笑)

  2. DB2017-07-26 20:23

    コメントありがとうございます。
    自分ではこんな冒険をすることはないけれど、本著を読んでいて死ぬ時に生きることをどう考えるかなと思いました。
    角幡さんの本はこれが初めてだったのですが、他の本も読んでみようと思います。
    ラスアルさんの書評も気長に待ってますね。

  3. No Image

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