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祐太郎さん
祐太郎
レビュアー:
「ネットを捨て、自然に出よう」。これから六花亭のお菓子を食べるとこの本を思い出しそうだ。
東京多摩地方の我が家は、大雪が年に1回あるかどうかの地域。
子どもたちは、「雪が降る」という予報がでると、そりゃ大喜びです。
もし「雪ってどんな形しているの?」と聞かれたら、
スマホで検索して、「ほら」と言いそうな自分がここにいますが、
それでは、いけませんね。ちゃんと虫眼鏡と下敷きを渡して観察させないと
という気に本当にさせてくれた1冊。

岩波文庫のコーナーに行けば、表紙に有名な雪の結晶の図が掲載されており、
「ああ、雪の結晶の話でしょ、俺、知っているからいいよ」
と早合点していましたが、これまたいけませんでした。

冒頭、「雪害」から話がスタートします。「東北史を開く (史学会125周年リレーシンポジウム)」にもありますが、地方公共団体の財源が乏しかった戦前。
雪に埋もれるほかなかった日本海側。
それが、今では新幹線も高速道路も走っていると考えると、
「雪」そのものの研究から雪害をなくすという著者の思いを見るようです。

そのうえで、「雪の形」へと話が進んでいきます。
雪には結晶の核になるものが必要です。まさかその話題の中で

この頃になってイオンが衛生学上にも重要な問題となって来た。例えば雨上りの清々すがすがしい大気の中には陰イオンが多く、また活動小屋の中などで空気が汚れて頭が重くなるというような現象も、その空気中にある炭酸瓦斯ガスなどの作用ではなく、陽イオンが多くなるためといわれている。

まんま、21世紀にもその理論使われていますよ。
あのマイナスイオン云々の歴史って戦前にはわかっていたと言われてしまうと、
頭を抱えてしまいます。

それにしても、先行研究者ベントレーの雪の結晶の写真を見て、札幌のオレもやってみようと思って、極寒の中、それを敢行する著者の努力に敬服します。そして、先行書評でも書かれていますが、その実験風景も、まるで結晶ができていくような美しさで語られていきます。これは、見事というほかないでしょう。名科学者が必ずしも名文書家でないことを考えると、雪の結晶のような奇跡と良いでしょう。
真暗なヴェランダに出て懐中電燈を空に向けて見ると、底なしの暗い空の奥から、数知れぬ白い粉が後から後からと無限に続いて落ちて来る。それが大体きまった大きさの螺旋形らせんけいを描きながら舞って来るのである。そして大部分のものはキラキラと電燈の光に輝いて、結晶面の完全な発達を知らせてくれる。標高は千百米位に過ぎないが、北海道の奥地遠く人煙を離れた十勝岳の中腹では、風のない夜は全くの沈黙と暗黒の世界である。その闇の中を頭上だけ一部分懐中電燈の光で区切って、その中を何時いつまでも舞い落ちて来る雪を仰いでいると、いつの間にか自分の身体が静かに空へ浮き上って行くような錯覚が起きて来る。



最後に、帯広のお菓子屋「六花亭」の「六花」って、雪の結晶の六花からきているんですね。
もう、読みながらバターサンドが食べたくて仕方がありませんでした(苦笑)





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祐太郎
祐太郎 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2353 件)

片道45分の通勤電車を利用して読書している
アラフィフ世代の3児の父。

★基準
★★★★★:新刊(定価)で買ってでも満足できる本
★★★★:新古書価格・kindleで買ったり、図書館で予約待ちしてでも満足できる本
★★★:100均価格で買ったり図書館で何気なくあって借りるなら満足できる本
★★:どうしても本がないときの時間つぶし程度ならいいのでは?
★:う~ん
★なし:雑誌などの一言書評

※仕事関係の本はすべて★★★で統一します。

プロフィールの画像はうちの末っ子の似顔絵を田中かえが描いたものです。
2024年3月20日更新

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