たけぞうさん
レビュアー:
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雪の結晶は天から送られた手紙。
「みんなで読みませんか? 課題図書倶楽部・2016」参加書評です。
中谷宇吉郎さんは雪の研究の第一人者です。
十勝岳の白銀荘をベースにし、雪の観察・分類から始め、人工雪の生成に成功し、
天然雪成長の仕組みを掘り下げて重層的に解明しました。
世界で初めて人工雪を作った人なのですよ。
この著書は、研究の成果を読み物のように時系列を追って書き表したものです。
寺田寅彦先生を敬愛しており、小浅間という随筆の中から、こんな一文を紹介しています。
寺田先生は夏目漱石の門下生であり、系譜の面白さに感心してしまいます。
六花型の雪の結晶。中央に正六角形を抱き、六方向に枝葉を伸ばした結晶は、
みなさんがこれぞ雪と思い浮かべる形です。
きれいですね。そして神秘的ですね。
雪の研究は、西欧の昔や江戸の頃にもあったのですが、十九世紀末に顕微鏡写真の
方法が考案されてから飛躍が始まります。
そして、飛躍の立役者は間違いなく中谷先生なのです。
研究成果をもとに、本書は1938年、つまり今から約八十年前にまとめられました。
それ以前に論文は何本もあると思われますが、それはそれとして、一般庶民が楽しめる
ように書かれた功績は大きいと思います。
イギリスやアメリカの研究者たちも追随しますが、研究の手引きとなったのは
ナカヤ・ダイヤグラムというグラフです。
水に対する過飽和度(%)を縦軸に、気温(℃)を横軸に取り、どのようなタイプの
結晶が成長するのかという相関を表したものです。
グラフを見ると、ふわふわと六花の腕が出るのは-15℃付近で、かつ湿度が
極めて高い状態であることが分かります。
さらに気温が下がると、角板をベースにした六方晶になります。
湿雪と乾雪って聞かれたことがあるでしょうか。
文字通り、水分を多く含むかどうかなのですが、雪の核となる結晶の違いも
関係しているような気がします。
最近の天気予報で、上空何千mに-40℃の寒気が入り込み雪をもたらすなどの
解説がありますよね。
この本でも、-40℃になると結晶の形が明確に変化し、結晶粒がばらばらと
小さな塊状にくっついた粉雪型になることが述べられています。
つまり、-40℃の上空で六面体の塊が生成し、降下するとばらけて雪の核となり、
降下に従い気温も上がって枝葉を広げ、あの六花型が形成されることが分かります。
中谷先生は、上空の気象条件はお金がなくてデータをとれないと嘆いています。
しかし先生の成果から導き出される雪の成長過程の推定は、充分な観測体制が整った
現代で証明されたように思います。
-40℃の区分が使われるようになったことは、ひとえに中谷先生の成果の還元です。
自然の解明は、時に芸術的であることを示してくれる一冊です。
八十年も前にこれだけ分析されたことは大変な成果だと思います。
空を見上げる気持ちが変わりますよ。
中谷宇吉郎さんは雪の研究の第一人者です。
十勝岳の白銀荘をベースにし、雪の観察・分類から始め、人工雪の生成に成功し、
天然雪成長の仕組みを掘り下げて重層的に解明しました。
世界で初めて人工雪を作った人なのですよ。
この著書は、研究の成果を読み物のように時系列を追って書き表したものです。
寺田寅彦先生を敬愛しており、小浅間という随筆の中から、こんな一文を紹介しています。
まわりに落ち散らばっている火山の噴出物にも実にいろいろな種類のものがある。(中略)書評のタイトルは、この寺田先生の文章を受けた中谷さんの言葉です。
その他にも色々な種類の噴出物がそれぞれにちがった経歴を秘めかくして静かに
横たわっている。その表面と内部には恐らく数百頁にも印刷し切れないだけの
「記録」が包蔵されている。
悲しいことにはわれわれにはまだ、そのヒエログリフを読みほごす知能が恵まれていない。
寺田先生は夏目漱石の門下生であり、系譜の面白さに感心してしまいます。
六花型の雪の結晶。中央に正六角形を抱き、六方向に枝葉を伸ばした結晶は、
みなさんがこれぞ雪と思い浮かべる形です。
きれいですね。そして神秘的ですね。
雪の研究は、西欧の昔や江戸の頃にもあったのですが、十九世紀末に顕微鏡写真の
方法が考案されてから飛躍が始まります。
そして、飛躍の立役者は間違いなく中谷先生なのです。
研究成果をもとに、本書は1938年、つまり今から約八十年前にまとめられました。
それ以前に論文は何本もあると思われますが、それはそれとして、一般庶民が楽しめる
ように書かれた功績は大きいと思います。
イギリスやアメリカの研究者たちも追随しますが、研究の手引きとなったのは
ナカヤ・ダイヤグラムというグラフです。
水に対する過飽和度(%)を縦軸に、気温(℃)を横軸に取り、どのようなタイプの
結晶が成長するのかという相関を表したものです。
グラフを見ると、ふわふわと六花の腕が出るのは-15℃付近で、かつ湿度が
極めて高い状態であることが分かります。
さらに気温が下がると、角板をベースにした六方晶になります。
湿雪と乾雪って聞かれたことがあるでしょうか。
文字通り、水分を多く含むかどうかなのですが、雪の核となる結晶の違いも
関係しているような気がします。
最近の天気予報で、上空何千mに-40℃の寒気が入り込み雪をもたらすなどの
解説がありますよね。
この本でも、-40℃になると結晶の形が明確に変化し、結晶粒がばらばらと
小さな塊状にくっついた粉雪型になることが述べられています。
つまり、-40℃の上空で六面体の塊が生成し、降下するとばらけて雪の核となり、
降下に従い気温も上がって枝葉を広げ、あの六花型が形成されることが分かります。
中谷先生は、上空の気象条件はお金がなくてデータをとれないと嘆いています。
しかし先生の成果から導き出される雪の成長過程の推定は、充分な観測体制が整った
現代で証明されたように思います。
-40℃の区分が使われるようになったことは、ひとえに中谷先生の成果の還元です。
自然の解明は、時に芸術的であることを示してくれる一冊です。
八十年も前にこれだけ分析されたことは大変な成果だと思います。
空を見上げる気持ちが変わりますよ。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
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- 出版社:岩波書店
- ページ数:181
- ISBN:9784003112427
- 発売日:1994年10月01日
- 価格:525円
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