書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

かもめ通信
レビュアー:
いやいや君たち、いくら仕事が楽しいからって、ちょっと働き過ぎだから!!
プログラマーであるぼく(ブリワーロフ)は休暇中だった。
レンタカーを借りて友人と落ち合うためレニングラードから地方都市へ向う途中、ヒッチハイクをする二人の男を拾ったのは、まったくの偶然だった(はず)。
二人の紹介で泊まることになったのは、ちょっと変わった博物館。
疲れたぼくはソファーに横たわりぐっすり眠り込むはずが……不審な侵入者やら弦楽器をつま弾きながら歌う猫やらしゃべる鏡に遭遇するはめに?!
あれよあれよという間に、ちょっと変わった連中のペースに巻き込まれ、いつの間にやらプログラマーを探しているという彼らの手伝いをすることに?!
【第1話「ソファーをめぐるてんやわんや」】


そんなわけでぼくが働くことになったのは、「ソ連邦科学アカデミー MYKK」。
なんの略かって?それはつまり「魔法妖術科学研究所」だ。
プログラマーのぼくが働いているのは電算室だが、ここに持ち込まれる依頼ときたら!
研究所には線形幸福部に生命の意味部、防護魔術部や予報・予言部、絶対認識部など、昼夜を問わず、あやしげな実験を繰り返す部署があり、そこで働く“人”たちは、ソロモン王の時代からその名を轟かせていたという大魔法使いやら、生前の功績が認められて死後も研究を続けることを許可されている幽霊やら、ジンやら吸血鬼やらで?!
大晦日の当直をいいつかったぼくは、その夜は誰も働かせてはいけないときつく言われていたのだけれど…………。
【第2話「うたかたの夢」】


ある日1羽のオウムが死んでいた。
翌日オウムは瀕死の状態だった。
そして翌々日、オウムは元気に話をしていた!!
えっ……?!
【第3話「てんてこまい」】


1960年代半ばにソ連で書かれた物語は、SFとファンタジーが入り交じり、あちこちで小難しい“理論”が展開されるユーモア小説。
少々理屈っぽい出だしから、主人公による「あとがきと註釈」に至るまでとことん面白く、すっかり夢中になってしまった。


作者のA&B・ストルガツキイは、アルカージイ・ストルガツキイとボリス・ストルガツキイという兄弟コンビ。
タルコフスキー監督の映画『ストーカー』の原作者としてご存じの方もいるかもしれない。(…などと知ったかぶりをして書いてはみたものの、実のところ私はこの映画、観たことがない。)
兄のアルカージイは英語と日本語の通訳者を経た後日本文学研究者として、弟のボリスは天文学者兼コンピューター技師としても働いていたのだとか。

この作品にもところどころに風刺がちりばめられているが、後年発表した続編は体制批判とみなされて時の政府によって発禁処分を受けるなど、長い不遇の時代があったらしい。
物語の“続き”も気になるが、この作風で体制批判?いったいどんな??と興味は尽きない。

積読本をようやく1冊減らしたつもりが、この物語の続編も含め新たに彼らの作品を積み上げてしまうことになりそうだ。

お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2233 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

読んで楽しい:15票
参考になる:16票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. ef2016-02-23 19:29

    昔、ストルガツキイ兄弟のSFを読んだなぁ……。今や段ボール箱の中に入っていて、再読するためにはそれこそ掘り出さなければ……。

  2. かもめ通信2016-02-23 19:37

    そうそうSF作家なんですよね?
    群像社のサイトにも“20世紀後半のロシアSFをリードした”とありました!
    私、SFは苦手なはずなんですが~ww
    とりあえずこの本の続編(だけどだいぶ雰囲気が違うらしい)『トロイカ物語』と、タイトルが素敵な『そろそろ登れカタツムリ』と『モスクワ妄想倶楽部』を読みたい本のリストに入れましたw
    でもその前に既に枕元にスタンバイ中のブルガーコフを読まないと……w

  3. かもめ通信2016-02-24 06:55

    そうそう、先日一部誤報(?)もありましたが、ツイッターにて細々と「#勝手に群像社まつり」やっています。よかったら覗いてみて下さい。
    https://twitter.com/search?q=%23%E5%8B%9D%E6%89%8B%E3%81%AB%E7%BE%A4%E5%83%8F%E7%A4%BE%E3%81%BE%E3%81%A4%E3%82%8A&src=typd

  4. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『月曜日は土曜日に始まる―若い科学者のための物語』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ