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DBさん
DB
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異界に足を踏み入れた話
この作品が上梓されたころに、金魚の表紙とタイトルが気になって読もうかと思っていたけれどそのまま忘れていました。
ちょっと前な気がしていたけどすでに十五年前のこと、それが一番のホラーだったりして。

まずは「夜市」です。
学校蝙蝠が「今宵は夜市が開かれる」とふれて回った日の夕暮れ。
大学生のいずみは高校の同級生で最近たまたま出会った知人というくらいの間柄の裕司に呼び出され、岬の公園の方で開かれる夜市に誘われた。
部屋でコーヒーを飲んで話題もなく気まずくなるよりはと誘いに乗ったいずみは、帰りたい気持ちを抱えつつも裕司に連れられて青白い光に包まれた夜市へ足を踏み入れた。
黄泉の河原で拾った石を売っていたり、着物を着た狸がのんびり歩いていたり。
静かに店が並ぶ中を鬼火が漂い、現実感薄れる中に刀剣屋があった。
そこで老紳士が何でも切れるという刀を買うのに付き合い、夜市を案内してもらうことになる。
だが子供の頃に一度夜市に来たことがあるという裕司の方は明確な目的があったらしく、人攫いがやっている店へと向かう。
彼は子供の頃に野球の才能を買った代金に置いてきたものを買い戻すために来たのだった。
怪しい夜市の雰囲気と人の心がうまく描写されていて楽しめる作品だった。

続く「風の古道」は、町並みの裏に存在する異次元の道の話だ。
時折普通の世界との間に出入りできる場所があるが、主人公の少年は七歳の時に偶然古道に迷い込む。
その時は教えられるがままに道を歩いて家の近くの生垣から元の世界へと変えることができた。
五年後、十二歳になった主人公は友人のカズキに昔迷い込んだ古道の話をする。
子供だから当然というべきか二人は生垣から古道へと入り込んだ。
赤い着物の女性たちが浮いた状態で通り過ぎていくのを見て、そこが人街の物が通る道だということに気づく。
古道に出ていた茶店の店主にその場所がどんなところなのかを聞かされ、たまたま店に居合わせた若い青年レンの道案内で出口を探すことに。
だが道半ばで事件が起こり、道行きはどんどん暗くなっていきます。
レンと道を歩き旅籠に泊まりながら進んでいく中で、古道のことや古道の中で生まれたというレンの生い立ちを聞いていく。

どちらの話も異界に吞まれる人があり辛さや悲しみもありでハッピーエンドとは言い難いが、世界観がうまく伝わってきていい雰囲気の話だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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