efさん
レビュアー:
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な、なんと! こ、これは史上最低の戦いだぁ…(゚д゚lll)
地上のどっかにある中国っぽい国。
そこの皇帝が腹上死しました(だから後に諡して腹宗なんて名前をつけられたわけなんですが)。
帝位は弱冠17歳の皇太子に継がれたわけなのですが、そうなると後宮も新たに作り直しになります。
宦官たちは、それぞれ地方に散って後宮に入れる宮女候補を探しにかかります。
緒陀(おだ)というド田舎にも宮女募集のお触れが立ち、その地方に住んでいた銀河(もうすぐ14歳)は「応募してみよっかな~」とか考えています。
後宮の実情については部外秘で固く口留めされているため、その実態は庶民が知るところではないのですが、噂だけは色々流れてきます。
銀河が聞いた噂は、宮女になると『三食昼寝付き、贅沢し放題』というものでした。
父親が止めるのもきかず、銀河は宮女に応募し、まぁ、それなりに可愛らしいところもあったのでしょう、採用されて仮宮(宮女養成所みたいな所です)住まいを認められ、宮女としての修養を積むことになりました。
で、この後、しばらく銀河の仮宮での生活が描かれるのですが、まぁ、本作はフィクションなんで結構いい加減でありまして、銀河はめでたく後宮入りを果たし、しかも、当面のポジションとして正妃という第一位に就いてしまうのです(何故田舎出の作法も何も分かっていない銀河がそんなことになったのかについては、実はちょっとした裏があるんですけれどね)。
一方で後に史実に語られる『幻影達の乱』というものが起きます。
これは、皇帝の治世に対する庶民の不満を代弁した乱とされていますが……実はそんなもんじゃありませんでした。
ごろつきの幻と、その兄弟分の混沌らが何の大義名分も無いのに挙兵したというもので、何でそんなことをしたかというと、「ヒマだったから」。
で、この乱が何だかんだ上手くいっちゃうんですよ。
ほとんど運で勝ち進み、しかも本人たちもそんなに真面目に乱を起こしているつもりもないので、物見遊山気分で進軍コースを決めちゃったりするもんだから、逆に官軍の裏を突くことになったりしてどんどん勝ち進んでしまうのです。
まぁ、実態は地方の役所を襲って金を奪い、近くの遊郭などで飲めや歌えの大騒ぎをしているという、ほとんど強盗団みたいなもんなんですけどね。
最初は地方の小さな騒動程度に考えていた帝も本気になり、王斉美という軍才優れた男を軍師にして討伐軍を送り出したのです。
通常ならこれで幻影達の乱もジ・エンドとなるはずなのですが、実は宮廷にも内紛があり、また、帝を弑逆して帝位を乗っ取ろうとする陰謀などもあって、有能な王は戦中に味方から殺されてしまい、軍師を失った討伐軍は潰走してしまったのです。
あらら、また勝っちゃった。
実は、混沌は王の人となりに惚れ込んでおり、敵ながらある種の敬意も抱いていたのですが、それがこんな形で殺されてしまったことに激怒します。
ここから歯車がちょっとずつ狂い始めて行くのですが、混沌はもはや乱などどうでもよくなり(まぁ、最初からどうでも良かったんですけれど)、この後はただただ王の仇を討ってやるという一念で戦いに臨むことになります。
幻影達らは、遂に王宮を取り囲むところまで攻め入り、幻は根が助平ですから、「皇帝を廃した後は後宮は自分のものにするかんね~。待っててね~(はーと)」なんて公言してしまうのです。
これを聞いた銀河は、「何言ってんだこの助平オヤジ!」ってなわけでいきり立ち、何と、宮女たちだけで軍を組織してしまいます(ほとんどの宮女は嫌々なんですけれど、何せ正妃の命令ですからねぇ)。
仮宮で同室だった、無口だけどなかなか鋭いところがある江葉に対して「あんた将軍をやりなさい」と言いつけ、言われた江葉も「無茶をいう」とは言いながら、武器庫を開けさせて銃やら大砲やらを後宮に運び入れさせ、にわか軍事訓練を始めます。
江葉は、王宮を試射の的にして大砲を撃ち込んでしまうなどもう無茶苦茶やります(ま、籠城覚悟なので、侵入口になる部分を潰したと言えばそうなんですけれどね)。
宮女たちも段々面白くなってきて、大砲撃ってはきゃっきゃと騒ぎまくります。
これに対して、混沌はあくまでも王の仇討ちに専念していて全体的な戦力には貢献せず、後宮へは幻影達率いる反乱軍が攻め入ろうとするのですが、馬鹿な力押し一本なので江葉らの大砲の餌食になってしまい、結構な被害を被っています。
あぁ、ここに史上最低の戦いが……。
というわけで、タイトルからすると後宮に渦巻く女たちの陰湿な陰謀……なんていう内容を想像してしまうのですが、実際にはかな~りあっけらかんとした銀河を中心とするユーモラスで明るく楽しい小説になっています。
なんでもアニメ化もされたのだそうですよ(『雲のように風のように』というタイトルだそうです……確かに可愛い女の子を沢山出せるアニメになりそうではありますが)。
良い意味ですっかり予想を裏切られました。
読了時間メーター
□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)
そこの皇帝が腹上死しました(だから後に諡して腹宗なんて名前をつけられたわけなんですが)。
帝位は弱冠17歳の皇太子に継がれたわけなのですが、そうなると後宮も新たに作り直しになります。
宦官たちは、それぞれ地方に散って後宮に入れる宮女候補を探しにかかります。
緒陀(おだ)というド田舎にも宮女募集のお触れが立ち、その地方に住んでいた銀河(もうすぐ14歳)は「応募してみよっかな~」とか考えています。
後宮の実情については部外秘で固く口留めされているため、その実態は庶民が知るところではないのですが、噂だけは色々流れてきます。
銀河が聞いた噂は、宮女になると『三食昼寝付き、贅沢し放題』というものでした。
父親が止めるのもきかず、銀河は宮女に応募し、まぁ、それなりに可愛らしいところもあったのでしょう、採用されて仮宮(宮女養成所みたいな所です)住まいを認められ、宮女としての修養を積むことになりました。
で、この後、しばらく銀河の仮宮での生活が描かれるのですが、まぁ、本作はフィクションなんで結構いい加減でありまして、銀河はめでたく後宮入りを果たし、しかも、当面のポジションとして正妃という第一位に就いてしまうのです(何故田舎出の作法も何も分かっていない銀河がそんなことになったのかについては、実はちょっとした裏があるんですけれどね)。
一方で後に史実に語られる『幻影達の乱』というものが起きます。
これは、皇帝の治世に対する庶民の不満を代弁した乱とされていますが……実はそんなもんじゃありませんでした。
ごろつきの幻と、その兄弟分の混沌らが何の大義名分も無いのに挙兵したというもので、何でそんなことをしたかというと、「ヒマだったから」。
で、この乱が何だかんだ上手くいっちゃうんですよ。
ほとんど運で勝ち進み、しかも本人たちもそんなに真面目に乱を起こしているつもりもないので、物見遊山気分で進軍コースを決めちゃったりするもんだから、逆に官軍の裏を突くことになったりしてどんどん勝ち進んでしまうのです。
まぁ、実態は地方の役所を襲って金を奪い、近くの遊郭などで飲めや歌えの大騒ぎをしているという、ほとんど強盗団みたいなもんなんですけどね。
最初は地方の小さな騒動程度に考えていた帝も本気になり、王斉美という軍才優れた男を軍師にして討伐軍を送り出したのです。
通常ならこれで幻影達の乱もジ・エンドとなるはずなのですが、実は宮廷にも内紛があり、また、帝を弑逆して帝位を乗っ取ろうとする陰謀などもあって、有能な王は戦中に味方から殺されてしまい、軍師を失った討伐軍は潰走してしまったのです。
あらら、また勝っちゃった。
実は、混沌は王の人となりに惚れ込んでおり、敵ながらある種の敬意も抱いていたのですが、それがこんな形で殺されてしまったことに激怒します。
ここから歯車がちょっとずつ狂い始めて行くのですが、混沌はもはや乱などどうでもよくなり(まぁ、最初からどうでも良かったんですけれど)、この後はただただ王の仇を討ってやるという一念で戦いに臨むことになります。
幻影達らは、遂に王宮を取り囲むところまで攻め入り、幻は根が助平ですから、「皇帝を廃した後は後宮は自分のものにするかんね~。待っててね~(はーと)」なんて公言してしまうのです。
これを聞いた銀河は、「何言ってんだこの助平オヤジ!」ってなわけでいきり立ち、何と、宮女たちだけで軍を組織してしまいます(ほとんどの宮女は嫌々なんですけれど、何せ正妃の命令ですからねぇ)。
仮宮で同室だった、無口だけどなかなか鋭いところがある江葉に対して「あんた将軍をやりなさい」と言いつけ、言われた江葉も「無茶をいう」とは言いながら、武器庫を開けさせて銃やら大砲やらを後宮に運び入れさせ、にわか軍事訓練を始めます。
江葉は、王宮を試射の的にして大砲を撃ち込んでしまうなどもう無茶苦茶やります(ま、籠城覚悟なので、侵入口になる部分を潰したと言えばそうなんですけれどね)。
宮女たちも段々面白くなってきて、大砲撃ってはきゃっきゃと騒ぎまくります。
これに対して、混沌はあくまでも王の仇討ちに専念していて全体的な戦力には貢献せず、後宮へは幻影達率いる反乱軍が攻め入ろうとするのですが、馬鹿な力押し一本なので江葉らの大砲の餌食になってしまい、結構な被害を被っています。
あぁ、ここに史上最低の戦いが……。
というわけで、タイトルからすると後宮に渦巻く女たちの陰湿な陰謀……なんていう内容を想像してしまうのですが、実際にはかな~りあっけらかんとした銀河を中心とするユーモラスで明るく楽しい小説になっています。
なんでもアニメ化もされたのだそうですよ(『雲のように風のように』というタイトルだそうです……確かに可愛い女の子を沢山出せるアニメになりそうではありますが)。
良い意味ですっかり予想を裏切られました。
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:新潮社
- ページ数:303
- ISBN:9784101281117
- 発売日:1993年04月01日
- 価格:500円
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