死んでいない者




通夜という非日常の一体感の中に、ありふれた日常を折り重ね、未知と既知とを同時に現出させるまさしくすごい小説であった。
本書は文庫本で220頁ほど、それでも本書を積んでいたのはひとえに「薄いから」である。薄いがためにカ…

本が好き! 2級
書評数:18 件
得票数:204 票
歴史・民俗・SFが特に好きです。
分かりやすい文章を書く練習中。




通夜という非日常の一体感の中に、ありふれた日常を折り重ね、未知と既知とを同時に現出させるまさしくすごい小説であった。
本書は文庫本で220頁ほど、それでも本書を積んでいたのはひとえに「薄いから」である。薄いがためにカ…




日常なのか特別な日常なのか
長嶋有の特徴として、世代を反映するような固有名詞が織り込まれる点が挙げられる。 「タンノイの…



男子が厨房に入ること、厨士が文房に入ることが当たり前になった今、文士が厨房に入ることになんの驚きがあるだろう?
厨房のわたしは、枝葉末節にうるさいくせに不安でたまらない、ひとりの文士である。 文士とは、文筆…



終末に囲まれて人々はなぜ死を選ぶのか?
まるで内容の想像がつかないタイトルである。二つが同立するのか対立するのかも分からない。二つの単語を…




蕎麦屋のヨウム年代記。または優しさをつなぐことについて。
津村記久子さんが毎日新聞にて連載されていた(らしい)小説が単行本化されました。 18歳の少女が…



異常を呑み込む女たちの日常
「日常と異常の狭間」と紹介されているのを見て購入しました。 七人の女性の日常を描いた短編集です。 …


レース編みのリボンで繋がれたホヤのブツ切りを喰らえ
自殺したアイドル志望の少女が、親友の医師によってアイドルを体現する生命体へと超改造される表題作。 …



失踪した詩人の残した小説に、事件の真相は記されているのだろうか?ひたすらに求める者はあらゆる所に「手がかり」を見いだしてしまう。
あらかじめ書いておくと、私はミステリ小説読みではなく幻想小説の愛好家である。また著者の作品を読むの…




人の中に棲む虎が人を喰らう。その人を生かし、その人たらしめる自我がその人を殺す。「人」とは他人のことではありません。悩みは遠いものではないのです。
「狼疾の人」中島敦の短篇、「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」四篇を収録。 教科書で読んだ方…




美しい三姉妹の、狂おしい恋愛。内容には触れなくても良い、面白いから。今少し「雛の家」に纏わる空気について書いてみたい。
人形店「津の国屋」の美しい三姉妹の恋愛の顛末を、再び世界大戦に向かう東京のありさまと絡めて描く。 …



純粋な想像の楽しみ/本書を「大人になってから読み返す」ことができなかったのは非常に残念。大人のための「鳥の物語」
インドの詩聖ことタゴールの短編10編を収録。 表題作は孫娘と祖父の対話の形をとる。世の中には「ほ…



人の中に潜む善と悪は割り切れない。では人の外は…?魔使いの弟子トムは大きな「何か」に触れる。/上橋菜穂子氏の解説も必読。
こちらは献本頂きました。ありがとうございます。 前作「魔使いの弟子」にて、魔使いグレゴリーに弟…

私たちが町の小さな本屋さんが好きな理由/あるいは、「ヘン」な本の旅に出るために。
最近流行の○○のどうしようもない〜さにうんざりしている(本書中のテンプレです)諸君に送る書評集。表…



他の人には見えないものを見る力を持った少年トム。彼が見た魔と人、魔使いと人々、昼と夜の「境界」をしっとり描いたファンタジー。内容に反して訳は軽快なので、気軽に読める。
「だれかがやらなくてはならないことです。だったら、ぼくがやってもいいはずです」怖がりで、特別な力と母…

乗り物酔い注意、豪快な起承転転…結が脳にキます。
ディーヴァ―の「ひねりの効いた」短編16本を所収。私には酷く読みづらく、何度か時間を置いて読み終え…




描かれるのは幻の女?私たちは「言葉」からどれほどの「真実」を受け取ることが出来るのか…
天性の才を持つ画家ピアンボの元に、風変わりな以来が舞い込む。それは、屏風を隔てた向こうに居るシャル…




登場人物たちが紙の中と外を認識した結果、読者は彼らと心を通じさせることができなくなった。美しき主従の逆転と断絶を味わう小説である。
「登場人物たちを上空から見下ろす作者=《土星》」との戦い、「作者自身を取り込む語りというメタフィク…


司書を務める著者は、刑務官側でありながら、受刑者への共感と同情を捨てきれない。刑務所と本とはどちらも自己と向き合う機会を与えてくれる。
非常に分厚く持ち出すのが難しいため、しばらく枕元においていたが、これが失敗だった。まだ首がひきつるよ…