漢詩入門





平易に書かれているものの本格の味わいを薄めることのない漢詩入門。ジュニア新書とはいえ大人も十分楽しめる内容。
本が好き! 2級
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趣味は古本屋巡りです。





平易に書かれているものの本格の味わいを薄めることのない漢詩入門。ジュニア新書とはいえ大人も十分楽しめる内容。




野口体操を竹内式に発展させた「からだ」と「ことば」のレッスン方法が詳細に記されている。「ことば」を発することはまず自分の「からだ」に気づくことから始まる。それは自分の「いのち」に気づくことでもある。



吉田松陰の物語から始まる幕末の志士を描いた小説。全四巻の第一巻は、松陰の青年期が描かれる。愚かしいほどまっすぐな男である。





イギリスの公爵家に仕える執事を描いた小説。静謐な物語世界に魅了される。カズオイシグロの文体を十分に味わえる翻訳となっていると思う。




絵描きの植田さんを描いた物語。実話ではなく創作だろう。植田さんが描く絵の、静かでやさしくどこか遠い世界に、植田さん自身が住んでいるとしたら。そのような構想でいしいさんが小説化したのではなかろうか。





日本文芸を「雅」と「俗」と「俳諧(雅俗)」との座標軸において語る文学史。著者の深すぎるほどの造詣から、日本文芸の何たるかが、200頁程度の本書に凝縮して語られる。



吉田松陰の物語だと思って読んでいたが、全四巻のうちのこの第二巻半ばで松陰は刑死してしまった。この小説は松陰のまいた種が攘夷、倒幕という志士の行動として結実していく幕末の模様を主題としているようだ。



幕末は「狂」の時代。「狂」の時代には「狂」の人が産み落とされるのか、あるいは逆に「狂」の人が「狂」の時代を作り出すのか。高杉晋作、時代と己の性の因縁のなかで躍動する。



吉田松陰、高杉晋作を軸に長州藩の幕末の動きを描き出しているのだが、両名の生涯を史料を基にダイジェストしたNHKの歴史特集番組でもを見ているかのようで、物語として物足りなさを感じた。



江國さんのことばはわかりやすいのに、体にすっと染み込んできて、自分のなかで息づいてくる。身体感覚確かなことばたち。若々しい恋情を描く中編二編。





小学生のころから日記をつけ続けている著者自身の体験から、日記をつける愉しみが、さまざまに語られる。読めば、日記をまだつけていない人はつけたくなり、すでにつけている人はますますつけたくなる。




もっとも幸せで純粋な男女の愛を読むことができる小説。大切なことを思い出させてくれる。好きだなあこれ。



気の利いた西洋菓子を一口食べてほっこり気分になったような読後感。人の言葉をしゃべる小鳥ちゃんと過ごす「日常」なんてものもあっていい。




短編集。各話共通して描かれているのは「喪失」である。あるとき突然、あるいはいつの間にかの「喪失」。それに気づくと、どうしようもないほどの哀しさに襲われる。「号泣」はしない。ただどうしようもなくなる。




いろんな味のドロップがいっぱい。さわやかだったり、あまやかだったり、懐かしかったり。そんな短編集です。



町田氏が悩み相談に答える前半部と、町田氏といしい氏の町を歩きながらの対談の後半部により構成される。悩み相談においても対談においても人生はまったく救われない。でもそれでいい。




いなくなってしまった猫のノラを思う百閒先生の痛切な気持ちがひしひしと伝わってくる。猫よりも百閒先生が愛らしい。




相変わらず笑える。この文体は話芸と言っていいと思う。落語が同じ話を聴いても何度でも楽しめるのと同じように、町田康のこのシリーズも何度読んでも楽しめると思う。4,5と続いていくのだろうか。




最後の主人公の自問にどきりとする。「いまわたしはどこにいるのでしょう?」「わたしはどこへ帰ろうとしているのでしょう?」「帰る場所など本当にあるのでしょうか?」




真っ白できれいな本。白いページの上を呪文のごとき怨恨の言葉がふざけながら踊っているよ。楽しげに。頼もしげに。はは。