無縁・公界・楽―日本中世の自由と平和
異端の歴史学者・網野善彦が、中世日本史を舞台に「無縁」の原理によって支配された人々、場所に就いて、実証的な研究成果を踏まえ、斬新な展望を語り尽くした重要な著作。
網野善彦の「無縁・公界・楽」(平凡社ライブラリー)を読了したので、徒然なるままに感想を書き留めてお…
本が好き! 1級
書評数:41 件
得票数:579 票
どうも皆さんこんにちは、サラダ坊主と申します。
はてなブログで、雑多な内容のブログを運営しています。
このたび、御誘いを受けて、こちらの「本が好き!」というサイトに書評を投稿してみました。今後も機会があれば順次投稿させて頂きます。
どうぞよろしく御付き合いくださいませ。
異端の歴史学者・網野善彦が、中世日本史を舞台に「無縁」の原理によって支配された人々、場所に就いて、実証的な研究成果を踏まえ、斬新な展望を語り尽くした重要な著作。
網野善彦の「無縁・公界・楽」(平凡社ライブラリー)を読了したので、徒然なるままに感想を書き留めてお…
戦後日本文学の旗手として今も走り続ける巨人・大江健三郎の出世作。 奇妙なアルバイトに関わった大学生の体験を通じて、敗戦が齎した社会的衝撃の或る断面を写し取る、独特の佳品。
優れた作家であればあるほど、その社会的な名声が広範囲に行き渡っていればいるほど、毀誉褒貶の振幅が劇…
西洋社会の歴史に関する該博な知識を縦横無尽に駆使し、熟成された蒸留酒のように芳醇で奥行きのある精緻な文体で、奇想天外な物語を臆面もなく語り尽くす鬼才、佐藤亜紀の素晴らしい処女作。
どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜は佐藤亜紀氏の小説「バルタザールの遍歴」について書…
苛酷な「戦争」によって未曽有の混乱を強いられた戦後日本で、死んでいった者たちの「記憶」に固執し続けた大岡昇平の初期の代表作。
大岡昇平の「野火」は不穏な小説である。その不穏さは、題材の異様さ、つまり敗色濃厚な南方戦線への従軍…
車谷長吉が現代日本に書き遺した最大の傑作。尼ヶ崎の「苦界」に沈み込んだ男女の愛憎を通じて、欺瞞的な自意識を徹底的に抉り出す「私小説」の極北。
車谷長吉の「赤目四十八瀧心中未遂」は、今まで読んだ中では屈指の精神的衝撃を、私の心に齎した異様な小…
20世紀を代表する作家として、常にその名が語られるフランツ・カフカの代表作。しかし、余計な先入観に眼を曇らされて取り組むのは望ましい態度ではない。ここには小説というより、世界そのものが存在している。
フランツ・カフカの名高い小説「変身」(新潮文庫)を読み終えた。 彼是と文学的な話柄に就いて…
20世紀フランス文学の最高峰「異邦人」。植民地アルジェリアの貧しい家庭に生まれ、地中海の焼けるような陽射しを浴びて生まれ育った孤高の作家・カミュは、彼自身が紛れもない「異邦人」であった。
アルベール・カミュの「異邦人」(新潮文庫)は、世界的にも日本国内においても非常に有名な小説だが、実…
20世紀の人類社会に巨大な思想的衝撃を及ぼした哲人であるカール・マルクスの苛烈な「宣言」の書。そのアクチュアルな分析力は21世紀を迎えた今も、全く衰弱していない。
私は共産主義という思想の意味を少しも理解していない。私の父親が学生だった頃には、共産主義の思想に取…
20世紀の日本を代表する文芸批評家であり、硬派の論客である江藤淳の代表作の一つ。若さゆえの溌溂とした知性の輝き、論争を辞さない不敵な姿勢が、読む者の精神をはげしく眩惑します。
私が江藤淳という評論家の名前を初めて知ったのは確か、中学三年生の頃に柄谷行人の「意味という病」とい…
優雅でマニアックな稀代の読書家・澁澤龍彦の極めて主観的で趣味的な作家論集です。批評文として優れているのみならず、文学や芸術に対する作者の深い造詣と愛情が感じられる、魅惑的な一冊。
社会に出て、来る日も来る日も額に汗して働く勤人になってみると、どうしても生活の大半を労働に割かねば…
昭和期の日本を代表する屈指の「語り部」である太宰治が、故郷である「津軽」への愛憎入り混じった執着を、含羞と機智に包まれた達者な文体で描き尽くした、軽妙な名著です。
太宰治の「津軽」という半ば随筆めいた小説、いや、そもそも随筆とか小説といった区分が問題にならぬよう…
現代日本語文学を牽引する孤高の作家・村上春樹の生々しい肉声が閉じ込められた半生の自叙伝。彼を忌み嫌う人々も、一度ならば繙いてみる価値もあるのではないでしょうか?
先日、村上春樹の「職業としての小説家」(新潮文庫)という自伝的なエッセイの本を読み終えた。近所の書…
日本語幻想文学の最前線に位置する華麗なる旗手・乾石智子の処女長篇小説です。癖の強い独特の文体が、どこにも存在しない神秘的な「異郷」の芳香を、私たち読者の鼻先へ運んできてくれるような、稀有の傑作。
2011年に発表され、著者の出世作となったこの小説は、巷間に蔓延る凡百の安っぽいファンタジーとは一…
私が最も敬愛する日本人作家・坂口安吾の随筆の集成です。単なる小説家の域を超えた、偉大な思想家としての外貌を存分に味わえる珠玉の一冊だと思います。
今日は坂口安吾の「堕落論」に就いて書くことにする。 このブログでは、過去にも幾度か「堕落論…
被差別部落に生まれ、生涯「ふるさと」への愛憎入り混じった執着を持ち続け、それを巨大な文学的活力として炸裂させた夭折の作家、中上健次の静謐な迫力に満ちた出世作です。
戦後生まれの作家として初めて芥川賞の栄誉に輝いたこの作品は、和歌山県新宮市で生まれ育った中上氏の故…
批評家・柄谷行人の文学的出発を彩る、輝かしい出世作。初期の作者の、若々しく犀利な批評眼と鋭敏な感受性が織り成す「評論」の魔術を、存分に堪能できる素晴らしい一冊です。
「文学」という言葉を聞いてどのようなイメージを浮かべるのかは、人によって意見の分かれるところだろう…
ファンタジー仕立ての世界観に、一人の男の数奇な遍歴を詰め込んだ、簡潔にして充実した名著。何もかもが作者の奇想に立脚しているというのに、読後に押し寄せるのは「人生」に触れたという濃密な手応えです。
吉田健一の「金沢」を繙くことに飽きて、新たに筒井康隆の「旅のラゴス」という小説を読み出した。文頭か…
市民的な「自由」の在り方について深い考察を加えた、ジョン・スチュアート・ミルの古典的名著。世界的に反動的な保守化の風潮が強まっている今だからこそ、改めて読み耽る意義のある一冊です。
ジョン・スチュアート・ミルの「自由論」(光文社古典新訳文庫)を少しずつ読んでいる。マルクスの「共産…
谷崎潤一郎の文学的出発点。身も蓋もない真実を描き出すことに主眼を置いた自然主義文学の旋風が吹き荒れる時代に、敢えて耽美的で悪魔的な世界観を打ち出した作者の反骨精神を堪能してください。
谷崎潤一郎の実質的な処女作「刺青」は、一篇のグロテスクな御伽噺のような風合いを備えている。その印象…
遠藤周作の代表作「沈黙」。世界的に高い評価を受けるキリスト教文学の傑作だが、その本質は決して宗教的な問題だけに限られている訳ではない。彼は「信じること」の絶望的な困難について語っているのだ。
遠藤周作の代表作とされる小説「沈黙」を初めて読んだのは数年前のことで、その作品の名声については、そ…