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ぽんきち
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少年の<神>と<魂>が殺された夜
トランシルヴァニアの小都市のユダヤ人コミュニティで、少年は家族と穏やかに暮らしていた。神秘思想に惹かれ、神を信じていた。
1940年代、ナチス・ドイツの台頭とともに、きな臭い噂は流れてきたものの、小さな街の人々は、どこか高をくくっていた。本当に手遅れになるまで、逃げ出す者もほとんどいなかった。

そしてついにドイツ軍が姿を現し、人々はなすすべもなくゲットーへ移送され、さらに収容所へと送られる。
収容所に到着した第一夜、「選別」の場で、少年は文字通りの「地獄」を目にする。そこでは信じられないものが焼かれていた。
夜の闇の中、穴から立ち上る巨大な炎は、そのとき、少年の<神>と<魂>も焼き尽くしてしまった。

ホロコーストを生き延びた著者の自伝的作品である。
著者はこの第一夜の後も、いくつものつらい夜を過ごし、最後に収容所生活を支え合った父を失う夜を迎える。これもまた痛切に心に刻み込まれる夜だった。

絶望的で残酷な状況を描きつつ、詩的で静謐ですらある文体である。透徹したまなざしの奥の深い悲しみが、切々と胸を打つ。


*本作品の初版(フランス語による)は1958年刊行であり、邦訳は1967年に出ている。著者の刊行の辞を添えた新版が2007年に出版され、それに伴って邦訳の改稿版が2010年に刊行された。新版への訳者あとがきとヴィーゼルの邦訳書一覧も収録されている。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1828 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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