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kon吉さん
kon吉
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人という音楽が爆音で流れている。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

ドストエフスキーは『カラマーゾフの兄弟』が最も有名だが、個人的には本書『罪と罰』の方が圧倒的に面白い。それはもう、小説史上NO5には入るであろうと、独断で太鼓判を押したくなる面白さだ。

そもそも長い小説だが、ドスト特有の冗長さが本書にはない。確か1巻の終わりごろ、主人公のラスコーリニコフが、ちょっと頭のいかれた犯罪論をぶちまけ、あれよあれよと加速度的に面白くなる。

外から見ると、しかめつらでダンマリなこの青年は、内面では非常に愚痴っぽく陰鬱で、おしゃべりだ。既存の道徳や神の存在を信用しないため、自分ひとりの利益や価値においてのみ、是非を決定していく。

そんなラスコーリニコフが金目当てで、ある老婆を殺害する。天性の知性と気概で罪を逃れようとするのだが・・・。 

『月と六ペンス』の著者、サマセット・モームは『読書案内-世界文学・岩波文庫』の中で、『罪と罰』の登場人物たちを~自然災害がそのまま人として具現化したような~と表している。(手元にありませんのでニュアンスです。)

ドスト自身の過敏すぎる神経性が登場する人物たちにそれぞれ反映されている。彼らは見ていられないほど堕落していたり、信じられないほど過剰に友情に厚かったり、大蛇のように執拗で力強かったり、悪魔のように狡猾で、キリストのように聖人であったりする。それはまるで、彼ら自身がまるで毛色の異なる音楽の化身であるかのようだ。

物語半ばまで、とんでもない変人たちに囲まれながらもラスコーリニコフの変人性もまた揺らぐところを全く見せず、冒頭ただの暗い青年と思っていた彼の奏でる音楽が非常に力のあるものだと気づき始める。石の都サンクトペテルブルクは、強大な意志たちのぶつかり合う巨大なコンサートホール、ライブハウスでもあるのだ。ジャズもロックも演歌もクラシックもそこでは各々勝手に爆音で演奏し、歌われる。

ラスコーリニコフの音楽は、ある音色に出会い変わってゆく。その結末は清らかでカタルシスを感じる。

※本レビュ-は1巻~3巻を通してのレビューです。また、微細な記憶違いありましたらお許しください。

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kon吉
kon吉 さん本が好き!1級(書評数:192 件)

かしこまったものは書けませんが、
マイペースに書いていけたらと思います。

よろしくお願いします.

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素晴らしい洞察:7票
参考になる:16票
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この書評へのコメント

  1. 有坂汀2014-01-30 11:20

    現在読んでいる『カラマーゾフの兄弟』が終わったら、これを再読したいと思っております。

  2. かもめ通信2014-01-31 19:06

    kon吉さんのレビューに触発されて、私も今年はこれを再読しようかという気になってきました。ああまたドスト穴に落ちていく予感が…ww

  3. kon吉2014-01-31 21:54

    有坂丁さん、コメントありがとうございます。
    「カラマーゾフ」では次兄のイワンが好きでした。
    彼とアリョーシャのちょっとした会話が印象に残っています。

  4. kon吉2014-01-31 22:03

    かもめ通信さん、コメントありがとうございます。
    ドスト穴・・・。すっごく深そうですね。

    私も再読したい本が多いんですが、内容の重い本が多く
    決心がなかなかつきません( ̄▽ ̄)

    かもめ先生。
    「読みたいけど読むのが面倒臭い」病の治し方教えてください。

  5. かもめ通信2014-02-01 06:28

    私は逆に、どうしたら再読の呪いにかからずに、新しい本をどんどん読めるのか、その秘訣が知りたいのです。
    目の前にある山は、読みたくて積んだ本たちに違いないのに。。。。( ̄▽ ̄)

  6. kon吉2014-02-02 15:34

    自分の場合は、以前読んだ本は読後感が良ければ良いほどそのままの形で
    記憶にのこしておきたいんです。

    再読すると印象とか違っちゃう場合や、世界観の新鮮味が薄れて
    いく一方かと思ってます。

    実をいうと、ツンドク本がたまるほど罪の意識があるので
    再読する時間無いだけですけどね(笑

    かもめ通信さんとのやり取りで寺山修司の短歌を思い出しました。
    ありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ

    人生は たった一個の質問に すぎぬと書けば 二月のかもめ

  7. そのじつ2014-03-02 00:37

    まず書評タイトルに惹かれました。
    まる1年積んでいた本書を手に取ったのは、NHKの「100分で名著」で本書が取り上げられた事と(読了後見るつもりで録画)kon吉さんのこの書評タイトル!そしてかもめ通信さんのドスト話(^^)

    期待どおりのカッチョイイ締めにしびれました。
    いや〜ホントだ。「爆音」ってすごく腑に落ちるわ。
    「浪花節だよ人生は」的なとこもあるし♪
    現在3巻を堪能中です。最高におもしろい小説を読んでいる喜びをかみしめております。

  8. kon吉2014-03-02 18:52

    そのじつさん、ありがとうございます。

    ドストエフスキーにはゴッホやニーチェと同じく
    狂気の一歩手前の人間にしか書くことの出来ない
    凄みがあると思います。

    予測不可の面白さ、初読の時しか味わえない特権ですね。

    そのじつさんのレビュー、今までにない切り口で次巻の書評が待ち遠しいです。ありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ

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