書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

かもめ通信
レビュアー:
これは、社会派告発本?!それとも究極のダイエット本なのか?!
著者は酪農家の4代目、アメリカ・モンタナの農場で育ち自身も20年、牛を育ててきたが、廃業して、有機農業を推進する環境団体の中心メンバーとなり、完全なベジタリアンになったという。
この本ではその劇的な変化の理由が語られているのだが、これがもう、とにかくすさまじい。


牛たちはいったいどんなエサを食べさせられているのか。
最初の数ページを読んだだけでも、気が遠くなりそうだ。


頭、ひずめ、内臓、骨、血、牛の食肉とならない部分、あるいは病気で死んだ牛やその他の家畜、動物管理局に捕獲された野良犬、野良猫……そういったものは「レンダリング・プラント(動物性脂肪精製工場)」に集められる。
そこで精製された脂肪分は化粧品や潤滑油、石けんや蝋燭の原料に使われる。
残りのタンパク質の原料は肉骨粉に加工。
この肉骨粉、原料の4分の1は糞便で、家畜のエサだけででなくペットフードなどにも使われているというのだけれど……牛がのどかに牧草を食べている…などというのは遠い昔の話らしい。


病気の予防のため、成長を促すため、衛生状態を保つため等々の理由で、どんな薬剤が使われているのかという話もまた恐ろしい。
ステーキを口にするとき、残留農薬の心配をいったい誰がするだろうか。
でも、考えなければいけないのだ。それがアメリカの現実。


加えてすさまじい環境破壊。
水も石油も森林も…?!
アメリカのハンバーガーをたった5セント値下げするために、アマゾンの熱帯雨林が危機に瀕する?!


いやいや、いやいや、これはもう、ホラー小説なんかよりずっと怖くて恐ろしい。


ちなみにこの本、日本語版が2002年に出版されているので、内容は少し古い。
といっても、状況は改善されているわけではなく、むしろ悪化しているようだ。
アメリカ産牛肉はその残留農薬などの高さから長い間EUから閉め出されていたが、 近年、FTA(自由貿易協定)の推進によって、その垣根が取り払われてきているらしいし、枯れ葉剤など強力な農薬の空中散布は、牧草地だけでなく、遺伝子組み換え作物の普及によって、人間が直接口にする作物へも広がっている。


もしTPPが決まったら、私たちの食卓にもこれまで以上に様々な食材が提供されることになりそうだが、せめて、自分たちがどんなものを食べているのか、知っておきたいものだと思う。


そうは思うが……あれこれと知ったとき、安心して食べられるものは残っているんだろうか…。
なんだか本当に怖くなってきた。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2228 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

素晴らしい洞察:2票
参考になる:21票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. 祐太郎2013-11-29 22:47

    お店で米国産あきたこまちが10キロ2480円で売っていました。関税が撤廃されたらいくらになるのか恐ろしい限りです。

  2. かもめ通信2013-11-30 07:48

    そうですね。
    今は「買うなら国産米」と思っていても、品種が同じで値段が全く違うのなら、やっぱり安い方がいいとなることも大いに考えられますし。
    補助金削減でも日本の農家は大打撃でしょうし。
    日本の農業、私たちの食卓、本当に心配です。

  3. 篠田くらげ2013-11-30 10:39

    読んでこわくなったボタン、押します。

  4. かもめ通信2013-11-30 21:48

    さまよいくらげさん!この本は本当に怖いですよ~。
    ベジタリアンにならなくても、食欲減退でダイエット効果もあるかもしれません。(汗)

  5. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『まだ、肉を食べているのですか―あなたの「健康」と「地球環境」の未来を救う唯一の方法』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ