ぱとるなさん
レビュアー:
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この本を読んでいる時、私の心には、孤独感が雪のように降り続けていた。冷たさのあまり痛さを感じるほどだった。ジョーンには、この雪が見えていなかったのだろうか。それとも見えないふりをしていたのだろうか。
本当に不思議でした。
どうすれば、この強烈な孤独感を無視して生活することができたのか。
父(ロドニー)と子どもたちの間には双方向の親しみや信頼感があるのに、母(ジョーン)と子どもたちの間には一方的な押しつけとそれに対する拒絶…あるいはあきらめによる肯定しかない。
夫(ロドニー)は農業の話になると目を輝かせて夢中になるのに、話しても理解してもらえないと分かっているから、妻(ジョーン)にはその話をしない。
このように家族の誰もが、ジョーンと心から向き合うことを避け、分かり合うことをあきらめていたのです。
それはきっと、ふとした時の眼差しや声の調子、笑顔の陰りなどとして現れていたと思うから、ジョーンだって感じたはずなのに、認めたくなくて気づかないふりでもしたのでしょうか。そしてそのうちに感じなくなってしまったのでしょうか。それとも本当に感じなかったのでしょうか。
子どもたちはジョーンを軽蔑しつつ、その思いと背中合わせになるような形でロドニーには同情しますし、ジョーンを嫌悪する一方でロドニーのことは愛するのです。
ロドニーは表面的には優しい夫のように見えるのですが、本心ではジョーンに対してとても冷たい感情を持っているのです。
こんな現実、たしかに目をそらせたくなるかもしれません。
鈍感になることで、自分の心を守っていたのかもしれません。
ジョーンがかわいそうに思えてきますが、実をいうと、私も最初はジョーンが苦手でした。
ジョーンが旅先から家に戻る途中、学生時代の友人ブランチと、約15年ぶりに偶然の再会をする場面から物語は始まるのですが、この始まりの部分で、私は、早くも本を置きたくなってしまったくらいです。
ジョーンの印象があまり良くなくて、うまく感情移入できなかったのです。
ジョーンが心の中でブランチについて考えてることが、めちゃめちゃ失礼で、なんだか引いてしまうせいでもありました。
そして、その時のブランチとの会話がきっかけになって、ジョーンは寝る前にお祈りをするのですが、その内容は、もっとひどいのです。
ブランチをかわいそうだと言いつつ、自分は彼女のようでなくてよかったと神に感謝するのです。そんな風に思うのだったら、ブランチの幸せも祈ってあげればいいのに…みたいな感じで、ジョーンに対して反感を抱いていたのです。
次の日、ジョーンはひとりで別の宿泊所へ行くのですが、雨のために数日間、足止めされます。
手紙を書いたり、持ってきた本を読んだり、暇つぶしに散歩をしたり…。
このぽっかり訪れた暇な時間がジョーンの転換点になります。
考えることしか、することがないから、過去のことを振り返り、その結果、自分自身と向き合うことになるのです。
そしてそれは、足止めされている間、毎日繰り返されました。
不思議なことに、過去を振り返る作業を繰り返すうちに、今まで見えていなかったものが見えるようになり、気づかなかったことに気づけるようになります。
それはジョーンにとって、嬉しい変化ではなかったらしく、最初のうちは否定したり、考えることをやめようとしたりするのですが、だんだんと、認めていきます。
完全に幸せだと思っていた自分の人生に疑問を持ち、不安を感じるようになるのです。
あまりにも明るい日差しが見せてくれた蜃気楼のような経験だったかもしれないけど、それらときちんと向き合って、時々逃げ腰になりながらも、自分を見つめ続けたジョーンはステキだと思いました。
最初は苦手だったけど、この時…この数日間のジョーンを、私は尊敬します。
心から応援したいと思いました。
ああ、それなのに…。(>_< )
ここから先のあらすじを紹介してしまうのは、気が引けるので、やめておきます。
…が。とても深いお話でした。
この本を本当に理解するためには、私は、もっと成長しなければいけない気がします。
私には、この本の表面的なことしか見えていなくて、その奥にもっと何かがあるのではないか、という気がするのです。
今回、見えなかったことが、次に読んだ時には見えたらいいなと思います。どんな風に感じるかも楽しみです。
何度も読みたい本に出会えました。
もし、ステキな出会いがあって、結婚することになったなら、私は、この本を必ず読み返すと思います。
それが自分自身への何よりの贈り物になると思うからです。
それほど、心に響く1冊でした。
この本は、復活!課題図書倶楽部・2015に選ばれた1冊です。
おかげで素晴らしい本に出会えました。
ありがとうございます。
どうすれば、この強烈な孤独感を無視して生活することができたのか。
父(ロドニー)と子どもたちの間には双方向の親しみや信頼感があるのに、母(ジョーン)と子どもたちの間には一方的な押しつけとそれに対する拒絶…あるいはあきらめによる肯定しかない。
夫(ロドニー)は農業の話になると目を輝かせて夢中になるのに、話しても理解してもらえないと分かっているから、妻(ジョーン)にはその話をしない。
このように家族の誰もが、ジョーンと心から向き合うことを避け、分かり合うことをあきらめていたのです。
それはきっと、ふとした時の眼差しや声の調子、笑顔の陰りなどとして現れていたと思うから、ジョーンだって感じたはずなのに、認めたくなくて気づかないふりでもしたのでしょうか。そしてそのうちに感じなくなってしまったのでしょうか。それとも本当に感じなかったのでしょうか。
子どもたちはジョーンを軽蔑しつつ、その思いと背中合わせになるような形でロドニーには同情しますし、ジョーンを嫌悪する一方でロドニーのことは愛するのです。
ロドニーは表面的には優しい夫のように見えるのですが、本心ではジョーンに対してとても冷たい感情を持っているのです。
こんな現実、たしかに目をそらせたくなるかもしれません。
鈍感になることで、自分の心を守っていたのかもしれません。
ジョーンがかわいそうに思えてきますが、実をいうと、私も最初はジョーンが苦手でした。
ジョーンが旅先から家に戻る途中、学生時代の友人ブランチと、約15年ぶりに偶然の再会をする場面から物語は始まるのですが、この始まりの部分で、私は、早くも本を置きたくなってしまったくらいです。
ジョーンの印象があまり良くなくて、うまく感情移入できなかったのです。
ジョーンが心の中でブランチについて考えてることが、めちゃめちゃ失礼で、なんだか引いてしまうせいでもありました。
そして、その時のブランチとの会話がきっかけになって、ジョーンは寝る前にお祈りをするのですが、その内容は、もっとひどいのです。
ブランチをかわいそうだと言いつつ、自分は彼女のようでなくてよかったと神に感謝するのです。そんな風に思うのだったら、ブランチの幸せも祈ってあげればいいのに…みたいな感じで、ジョーンに対して反感を抱いていたのです。
次の日、ジョーンはひとりで別の宿泊所へ行くのですが、雨のために数日間、足止めされます。
手紙を書いたり、持ってきた本を読んだり、暇つぶしに散歩をしたり…。
このぽっかり訪れた暇な時間がジョーンの転換点になります。
考えることしか、することがないから、過去のことを振り返り、その結果、自分自身と向き合うことになるのです。
そしてそれは、足止めされている間、毎日繰り返されました。
不思議なことに、過去を振り返る作業を繰り返すうちに、今まで見えていなかったものが見えるようになり、気づかなかったことに気づけるようになります。
それはジョーンにとって、嬉しい変化ではなかったらしく、最初のうちは否定したり、考えることをやめようとしたりするのですが、だんだんと、認めていきます。
完全に幸せだと思っていた自分の人生に疑問を持ち、不安を感じるようになるのです。
あまりにも明るい日差しが見せてくれた蜃気楼のような経験だったかもしれないけど、それらときちんと向き合って、時々逃げ腰になりながらも、自分を見つめ続けたジョーンはステキだと思いました。
最初は苦手だったけど、この時…この数日間のジョーンを、私は尊敬します。
心から応援したいと思いました。
ああ、それなのに…。(>_< )
ここから先のあらすじを紹介してしまうのは、気が引けるので、やめておきます。
…が。とても深いお話でした。
この本を本当に理解するためには、私は、もっと成長しなければいけない気がします。
私には、この本の表面的なことしか見えていなくて、その奥にもっと何かがあるのではないか、という気がするのです。
今回、見えなかったことが、次に読んだ時には見えたらいいなと思います。どんな風に感じるかも楽しみです。
何度も読みたい本に出会えました。
もし、ステキな出会いがあって、結婚することになったなら、私は、この本を必ず読み返すと思います。
それが自分自身への何よりの贈り物になると思うからです。
それほど、心に響く1冊でした。
この本は、復活!課題図書倶楽部・2015に選ばれた1冊です。
おかげで素晴らしい本に出会えました。
ありがとうございます。
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子どもの頃は読書が大好きでした。
でも、長い間、本から遠ざかっていました。
また読み始めたのは最近です。
なので、本をめぐる世界については、知らないことだらけなのですが、よろしくお願いします。
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この書評へのコメント
- 2015-02-26 13:17
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クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2015-02-26 10:18
あれあれ?今度はリンクは貼れているけれどURLが間違っているという表示になりますね??
<a href="http://www.honzuki.jp/smp/bookclub/theme/no217/index.html?latest=20"target=new”>復活!課題図書倶楽部・2015</a>としてみてください。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:早川書房
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