Yasuhiroさん
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くまにさそわれて散歩に出る。のはいいけれど、メタファーすりゃいいってもんでもない。ちょっと気の抜けたサイダーのような寓話集。
川上弘美を読んでいくシリーズ、次は「神様」という短編集を選んでみました。生まれて初めて活字になった小説「神様」がパスカル短編文学新人賞を受賞して世に出、その後マリ・クレール誌に連載した作品が単行本となり、ドゥマゴ文学賞、紫式部賞を受賞しているそうです。そんな賞あるんですか、てな賞ばっかりです。。。
で、思い出すのは以前レビューした東野圭吾の「超・殺人事件―推理作家の苦悩」。その結びで東野は
とぼやいていましたが、なんかそんな感じで嫌な予感。実際寓話・怪異譚・幻奇譚(のような)九編が収録されているのですが、なんだか気の抜けたサイダーのようなあっさりとした読後感でした。
という事で寸評。
「神様」 三部屋隣に越してきたくまと散歩する話。くまは本当の熊、
「夏休み」 自分がずれていく青年が梨もぎのバイトをする。三匹の何かが出てきて梨を齧る。農園主は慣れている。季節が終わると消えていくから大丈夫と。これはなんとなくいい、という程度。フロイドを持ち出すまでもない。
「花野」 出た、死んだ人が出てきても驚かず、普通に会話する話。もうええわ、というほど書かれているネタ。
「河童玉」
「クリスマス」
「星の光りは昔の光」
中盤に至り「わたし」がちょっと落ち着いて語るようになります。ウテナさんというちょっと変わった友達、コスミスミコという壺から出てくるあくびちゃん成人版みたいな女性、隣の隣の部屋のえび男君と言った存在も、それぞれの話を連関させて流れをスムーズにしています。
ウテナさんと河童の世界へ行ったり、チゾーノモチレで殺されて壺の中の住人となったコスミスミコとウテナさんとクリスマスをうだうだ過ごしたり、
「春立つ」
「離さない」
この二編は短いながらよくできた怪異譚。昔崖から転げ落ちて入り込んだ雪の世界で男と出会い、それ以後雪の季節だけ一緒に暮らしていた飲み屋のお婆さん、人魚を海でつかまえてきて風呂で飼っているうちに魅入られていく友人とそれを助けようとして自分も魅入られてしまうわたし。いずれももう少しじっくりと語ってほしかったところです。
「草原の昼食」
最後はまたくまが話を閉めに出てきます。
ということで、江國香織さんのような才気煥発を感じさせる文章とはまた違った、落ち着いた文章を書ける方だと思います。彼女が尊敬し目標にしているという内田百閒の香りも確かに漂っています。まだまだこんなものじゃない、というところを今後読む作品で見せていただけるのではと期待しつつ、まあ肩の力を抜いて追っかけていきましょう。
川上弘美を読むシリーズ
センセイの鞄
で、思い出すのは以前レビューした東野圭吾の「超・殺人事件―推理作家の苦悩」。その結びで東野は
さほど売れていないのにベストテンが発表されたりする。一般読者が知らないような文学賞が増えている。本という実体は消えつつあるのに、それを取り巻く幻影だけが賑やかだ。
とぼやいていましたが、なんかそんな感じで嫌な予感。実際寓話・怪異譚・幻奇譚(のような)九編が収録されているのですが、なんだか気の抜けたサイダーのようなあっさりとした読後感でした。
という事で寸評。
「神様」 三部屋隣に越してきたくまと散歩する話。くまは本当の熊、
種類は判らないって日本の本州なら月の輪、北海道ならヒグマでしょ。くまが、熊の神様が、何のメタファーなのかよくわからないまま、ささっと終わります。雰囲気だけを楽しめと言われても、って感じです。彼女のデビュー作ということですが、普通デビュー作と言えば入れ込み過ぎることが多いのに、このゆるさは一体?これが今後の彼女の持ち味になるんでしょうかね。
「夏休み」 自分がずれていく青年が梨もぎのバイトをする。三匹の何かが出てきて梨を齧る。農園主は慣れている。季節が終わると消えていくから大丈夫と。これはなんとなくいい、という程度。フロイドを持ち出すまでもない。
「花野」 出た、死んだ人が出てきても驚かず、普通に会話する話。もうええわ、というほど書かれているネタ。
「河童玉」
「クリスマス」
「星の光りは昔の光」
中盤に至り「わたし」がちょっと落ち着いて語るようになります。ウテナさんというちょっと変わった友達、コスミスミコという壺から出てくるあくびちゃん成人版みたいな女性、隣の隣の部屋のえび男君と言った存在も、それぞれの話を連関させて流れをスムーズにしています。
ウテナさんと河童の世界へ行ったり、チゾーノモチレで殺されて壺の中の住人となったコスミスミコとウテナさんとクリスマスをうだうだ過ごしたり、
昔の光はあったかいけど、今はもうないものの光、終わった光だから僕は泣く、というえび男君と一緒に星を眺めたり、ホノボノ系の三編はまずまずの出来。
「春立つ」
「離さない」
この二編は短いながらよくできた怪異譚。昔崖から転げ落ちて入り込んだ雪の世界で男と出会い、それ以後雪の季節だけ一緒に暮らしていた飲み屋のお婆さん、人魚を海でつかまえてきて風呂で飼っているうちに魅入られていく友人とそれを助けようとして自分も魅入られてしまうわたし。いずれももう少しじっくりと語ってほしかったところです。
「草原の昼食」
最後はまたくまが話を閉めに出てきます。
ということで、江國香織さんのような才気煥発を感じさせる文章とはまた違った、落ち着いた文章を書ける方だと思います。彼女が尊敬し目標にしているという内田百閒の香りも確かに漂っています。まだまだこんなものじゃない、というところを今後読む作品で見せていただけるのではと期待しつつ、まあ肩の力を抜いて追っかけていきましょう。
川上弘美を読むシリーズ
センセイの鞄
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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- ページ数:203
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