はるほんさん
レビュアー:
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浅田氏のエッセイとも言える、ちょっとゆるふわな時代小説短編集。
新選組三部作(壬生義士伝・輪違屋糸里・一刀斉夢録)で
不人気な芹沢鴨に魅惑の変身を遂げさせてくれた浅田次郎大先生様。(超敬語)
他に時代物を拝読させていただこうと思っていた所存にござる。(敬語?)
「お腹召しませ」というスゴいタイトル。
6編の短編集だが、少し風変わりな構成になっており
いずれもエッセイのような浅田氏の文章から始まる。
浅田氏の家系は時代を辿れば武家であったのだとか。
また家庭の事情で祖父とふたりで暮らしていたことがあったらしく、
テレビもない家では、祖父の昔語りが娯楽だったのだという。
祖父の語る様子はつぶさに記憶にあるのに
その話の内容は曖昧であったり、
また祖父自身の語りが色んな話でまぜこぜになっていたりする。
浅田氏がさらにそれらを、自身のペンでなぞっていく。
「私ならこんな話にするだろう。そう例えば…」
それは時代考証もざっくりで、断片的なストーリーなのだが
「気楽に語られる時代小説」とでも言えばいいのか、
キッチリ書かれた小説では味わえないであろう
浅田氏の遊び心と言うか、雑談っぽさに味がある。
なんだか江戸時代の武士が、平成のサラリーマンたちに見えてくる。
お腹召しませ
何だかよく分からない理由で切腹を申付けられる武士。
上司どころか妻や娘ですら「お腹召しませ」などと言う。
大手三之御門御与力様失踪事件之顛末
昵懇にしている友が突然行方知れずに。
失踪するような原因も見当たらず、神隠しとか思えぬのだが…。
安藝守様御難事
いろんな因果で、一国の殿様になってしまった武士。
来る日も来る日も妙な稽古ばかりさせられるも、理由が聞けない。
女敵討ち
お役目でずっと国許を留守にしていた武士が、妻の不貞の噂を耳にする。
これが真実なら、己の手で間男と共に討ってやらねばならない。
江戸残念考
幕府が大政奉還をした頃の江戸城下。
無念の思いで江戸を見つめるのは、なんと主人公「浅田次郎左衛門」…!?
御鷹狩
御一新の世に、武士たちは生きる術を失った。
まだ前髪も下ろさぬ少年たちの葛藤は、市井の弱い者へと刃を向ける。
全て前後は浅田氏の語りになっており
すうっと時代小説の中に入ってオチに突き当たった辺りで
浅田氏が「…みたいな話なんか作っちゃったりして~」と顔を出すので
ハッと目が覚める。(笑)
自分が好きなのは「安藝守様御難事」。
なんかもう全体的にゆるふわで、思わず吹き出してしまった。
かと思うとシビアなストーリーもあったりするのだが
やっぱりどれも浅田氏が最後に「…なんちゃって!」
みたいなカンジで出てくる。(※注:でませんよ)
時代小説と言うよりは、浅田氏のエッセイとして読んだ方がいいだろう。
いや、小説部分はちゃんと作ってあるのだが
そのプロットを作っている書斎を覗き見しているというか
完成と中途半端さの丁度間にあるようなカンジが
コチラも力を抜いて読んでいると、なかなかにジワジワくる。
実は浅田氏は、ずっと昔に現代小説を読んで
今一つ入り込めずにそのまま手に取ることがなかったのだが
今は読めるようになったのかもしれない…!(,,゚Д゚)✨
ううむ、偏見がとれたのは喜ばしい事なのだが
もう本棚のあ行の段とかぎゅうぎゅうなんだけど、どうすれば。
(引っ越しのときに本棚を整理してみたら、あ行・か行・さ行が何故かトップ3。
なんかの法則なんでしょうか。ちなみにか行は半分京極氏の所為ですが)
不人気な芹沢鴨に魅惑の変身を遂げさせてくれた浅田次郎大先生様。(超敬語)
他に時代物を拝読させていただこうと思っていた所存にござる。(敬語?)
「お腹召しませ」というスゴいタイトル。
6編の短編集だが、少し風変わりな構成になっており
いずれもエッセイのような浅田氏の文章から始まる。
浅田氏の家系は時代を辿れば武家であったのだとか。
また家庭の事情で祖父とふたりで暮らしていたことがあったらしく、
テレビもない家では、祖父の昔語りが娯楽だったのだという。
祖父の語る様子はつぶさに記憶にあるのに
その話の内容は曖昧であったり、
また祖父自身の語りが色んな話でまぜこぜになっていたりする。
浅田氏がさらにそれらを、自身のペンでなぞっていく。
「私ならこんな話にするだろう。そう例えば…」
それは時代考証もざっくりで、断片的なストーリーなのだが
「気楽に語られる時代小説」とでも言えばいいのか、
キッチリ書かれた小説では味わえないであろう
浅田氏の遊び心と言うか、雑談っぽさに味がある。
なんだか江戸時代の武士が、平成のサラリーマンたちに見えてくる。
お腹召しませ
何だかよく分からない理由で切腹を申付けられる武士。
上司どころか妻や娘ですら「お腹召しませ」などと言う。
大手三之御門御与力様失踪事件之顛末
昵懇にしている友が突然行方知れずに。
失踪するような原因も見当たらず、神隠しとか思えぬのだが…。
安藝守様御難事
いろんな因果で、一国の殿様になってしまった武士。
来る日も来る日も妙な稽古ばかりさせられるも、理由が聞けない。
女敵討ち
お役目でずっと国許を留守にしていた武士が、妻の不貞の噂を耳にする。
これが真実なら、己の手で間男と共に討ってやらねばならない。
江戸残念考
幕府が大政奉還をした頃の江戸城下。
無念の思いで江戸を見つめるのは、なんと主人公「浅田次郎左衛門」…!?
御鷹狩
御一新の世に、武士たちは生きる術を失った。
まだ前髪も下ろさぬ少年たちの葛藤は、市井の弱い者へと刃を向ける。
全て前後は浅田氏の語りになっており
すうっと時代小説の中に入ってオチに突き当たった辺りで
浅田氏が「…みたいな話なんか作っちゃったりして~」と顔を出すので
ハッと目が覚める。(笑)
自分が好きなのは「安藝守様御難事」。
なんかもう全体的にゆるふわで、思わず吹き出してしまった。
かと思うとシビアなストーリーもあったりするのだが
やっぱりどれも浅田氏が最後に「…なんちゃって!」
みたいなカンジで出てくる。(※注:でませんよ)
時代小説と言うよりは、浅田氏のエッセイとして読んだ方がいいだろう。
いや、小説部分はちゃんと作ってあるのだが
そのプロットを作っている書斎を覗き見しているというか
完成と中途半端さの丁度間にあるようなカンジが
コチラも力を抜いて読んでいると、なかなかにジワジワくる。
実は浅田氏は、ずっと昔に現代小説を読んで
今一つ入り込めずにそのまま手に取ることがなかったのだが
今は読めるようになったのかもしれない…!(,,゚Д゚)✨
ううむ、偏見がとれたのは喜ばしい事なのだが
もう本棚のあ行の段とかぎゅうぎゅうなんだけど、どうすれば。
(引っ越しのときに本棚を整理してみたら、あ行・か行・さ行が何故かトップ3。
なんかの法則なんでしょうか。ちなみにか行は半分京極氏の所為ですが)
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
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- 出版社:中央公論新社
- ページ数:298
- ISBN:9784122050457
- 発売日:2008年09月01日
- 価格:620円
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