たけぞうさん
レビュアー:
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落語が好きな人、よっといで。ツクツクテンテン ツクテンテン
噺家の今昔亭三つ葉、本名では達ちゃんと呼ばれる主人公が、素で向きあう人情話だ。サマータイムを読んで、佐藤多佳子さんをたいそう気に入り、本作を選んだ。これは当たりだった。
わたしは落語が好きである。小学生のころから笑点は好きだった。
そのころ漫画で寄席芸人伝というシリーズに出会った。高座に上がる噺家たちの素の生きざまが描かれていて、食い入るように読んでいた。古い漫画なので今ではなかなかお目にかかれないが、間違いなく傑作である。ひょっとしたら、落語というよりもこの漫画が好きだからという流れかもしれない。
この小説も、同じく三つ葉という噺家の生きざまが、実に鮮やかに描かれているのである。それにしても、噺家が主人公というだけでなぜこんなに面白いのか。とても不思議である。
いとこの良が三つ葉に泣きつくところから話が始まる。
良はテニススクールのコーチをしていて、甘いマスクと抜群の技術があるのだが、どうにも心が優しすぎる。いくじなしで、どもりが出て、小学校のときにはいじめられもした。大人になって治ったはずが、テニススクールの場で再発するようになったのである。三つ葉はプロの噺家だから、治すのに協力して欲しいと頼みこまれ、そんなのは無理とすげなく断る。
ところがところが。後日、師匠がカルチャースクールの話し方講座に出張講演をすることになり、カバン持ちでついていくことに。これ幸いにとばかり、三つ葉は良にも声をかけ、良の悩みに一役買おうとする。
ここで黒猫と名付けた、傍若無人を絵に書いたような女と出会い、事態は急展開していく。三つ葉から見れば、アゴの尖った目つきの悪い女。良から見れば、二度と会えない骨格から美しい女。実にうまい書きわけだ。
おかしなきっかけで黒猫と口をきき、なぜか良ともども三つ葉に話し方を教えてもらおうという流れになる。
その後、まだまだ問題児が増えていくのだが、登場人物たちの個性が引き立っているのがいい。主人公の三つ葉のべらんめえ口調と短気具合がいい。全身で歩く人間落語になっているのである。
テンポよく物語は進み、最後まで期待通りの展開を見せてくれる。ちょっと漫画っぽい気もするのだが、それはそれとして、人情話を一本聞かせてもらった気がする。こんな文体で一話まとめられるだけでも、たいしたものだと思う。
わたしは落語が好きである。小学生のころから笑点は好きだった。
そのころ漫画で寄席芸人伝というシリーズに出会った。高座に上がる噺家たちの素の生きざまが描かれていて、食い入るように読んでいた。古い漫画なので今ではなかなかお目にかかれないが、間違いなく傑作である。ひょっとしたら、落語というよりもこの漫画が好きだからという流れかもしれない。
この小説も、同じく三つ葉という噺家の生きざまが、実に鮮やかに描かれているのである。それにしても、噺家が主人公というだけでなぜこんなに面白いのか。とても不思議である。
いとこの良が三つ葉に泣きつくところから話が始まる。
良はテニススクールのコーチをしていて、甘いマスクと抜群の技術があるのだが、どうにも心が優しすぎる。いくじなしで、どもりが出て、小学校のときにはいじめられもした。大人になって治ったはずが、テニススクールの場で再発するようになったのである。三つ葉はプロの噺家だから、治すのに協力して欲しいと頼みこまれ、そんなのは無理とすげなく断る。
ところがところが。後日、師匠がカルチャースクールの話し方講座に出張講演をすることになり、カバン持ちでついていくことに。これ幸いにとばかり、三つ葉は良にも声をかけ、良の悩みに一役買おうとする。
ここで黒猫と名付けた、傍若無人を絵に書いたような女と出会い、事態は急展開していく。三つ葉から見れば、アゴの尖った目つきの悪い女。良から見れば、二度と会えない骨格から美しい女。実にうまい書きわけだ。
おかしなきっかけで黒猫と口をきき、なぜか良ともども三つ葉に話し方を教えてもらおうという流れになる。
その後、まだまだ問題児が増えていくのだが、登場人物たちの個性が引き立っているのがいい。主人公の三つ葉のべらんめえ口調と短気具合がいい。全身で歩く人間落語になっているのである。
テンポよく物語は進み、最後まで期待通りの展開を見せてくれる。ちょっと漫画っぽい気もするのだが、それはそれとして、人情話を一本聞かせてもらった気がする。こんな文体で一話まとめられるだけでも、たいしたものだと思う。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:421
- ISBN:9784101237312
- 発売日:2000年05月01日
- 価格:620円
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