書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

たけぞう
レビュアー:
落語が好きな人、よっといで。ツクツクテンテン ツクテンテン
噺家の今昔亭三つ葉、本名では達ちゃんと呼ばれる主人公が、素で向きあう人情話だ。サマータイムを読んで、佐藤多佳子さんをたいそう気に入り、本作を選んだ。これは当たりだった。

わたしは落語が好きである。小学生のころから笑点は好きだった。
そのころ漫画で寄席芸人伝というシリーズに出会った。高座に上がる噺家たちの素の生きざまが描かれていて、食い入るように読んでいた。古い漫画なので今ではなかなかお目にかかれないが、間違いなく傑作である。ひょっとしたら、落語というよりもこの漫画が好きだからという流れかもしれない。

この小説も、同じく三つ葉という噺家の生きざまが、実に鮮やかに描かれているのである。それにしても、噺家が主人公というだけでなぜこんなに面白いのか。とても不思議である。

いとこの良が三つ葉に泣きつくところから話が始まる。
良はテニススクールのコーチをしていて、甘いマスクと抜群の技術があるのだが、どうにも心が優しすぎる。いくじなしで、どもりが出て、小学校のときにはいじめられもした。大人になって治ったはずが、テニススクールの場で再発するようになったのである。三つ葉はプロの噺家だから、治すのに協力して欲しいと頼みこまれ、そんなのは無理とすげなく断る。

ところがところが。後日、師匠がカルチャースクールの話し方講座に出張講演をすることになり、カバン持ちでついていくことに。これ幸いにとばかり、三つ葉は良にも声をかけ、良の悩みに一役買おうとする。

ここで黒猫と名付けた、傍若無人を絵に書いたような女と出会い、事態は急展開していく。三つ葉から見れば、アゴの尖った目つきの悪い女。良から見れば、二度と会えない骨格から美しい女。実にうまい書きわけだ。

おかしなきっかけで黒猫と口をきき、なぜか良ともども三つ葉に話し方を教えてもらおうという流れになる。

その後、まだまだ問題児が増えていくのだが、登場人物たちの個性が引き立っているのがいい。主人公の三つ葉のべらんめえ口調と短気具合がいい。全身で歩く人間落語になっているのである。

テンポよく物語は進み、最後まで期待通りの展開を見せてくれる。ちょっと漫画っぽい気もするのだが、それはそれとして、人情話を一本聞かせてもらった気がする。こんな文体で一話まとめられるだけでも、たいしたものだと思う。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1462 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

読んで楽しい:4票
参考になる:24票
共感した:3票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. Tetsu Okamoto2014-01-05 07:11

    映画化とマンガ化がなされています。どちらも楽しめるとおもいますよ。

  2. たけぞう2014-01-05 07:30

    >Testu Okamotoさん
    やー、知りませんでした。マンガは興味あります。
    本屋さんで探してみます。
    ありがとうございます。

  3. 風竜胆2014-01-05 10:32

    最近、落語に限らず、古典芸能に興味を持っています。といっても、テレビで歌舞伎なんか視ていると、途中で飽きちゃうんですがww
    それでも懲りずに、せっせと録画していますw

  4. たけぞう2014-01-05 18:52

    >風竜胆さん
    古典芸能、素敵な世界ですよね。
    歌舞伎、能、芸妓遊び。
    いつか分かるようになってみたいものですね。
    落語は、寄席にも行ったことがありますし、いまのところ唯一理解できるので気に入っています。

  5. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『しゃべれどもしゃべれども』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ