すずはら なずなさん
レビュアー:
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O.ヘンリほど日本で読まれていなそうなのは 感想文が書きにくいから...かも。
O.ヘンリの感想文を書くなら、主人公たちに誤解があってもすれ違っても、悲しい想いをしても、ラストは「良かったです」「感動しました」で締めくくれそうですが、サキはそうもいきません。
ブラックユーモア、風刺、皮肉、バッドエンド、冷笑、失笑。サキの短編には黒い感情がてんこ盛り。
それでも作者はそういう愚かしくも救いようのない「人間」が好きで、そしてそういう「人間」や、皮肉で悲惨だったりもする人生をも楽しんで描いているように思います。
この「短編集」は翻訳者の解説によると、サキの各種のテイストをまんべんなく読めるように選んだ作品集で「傑作選」というわけではないみたいです。なので、この本でサキの描く世界を気に入ったら、もう少し深堀りして他の作品も読んでみるとよいと思います。
作り話の上手なヴェラという.「伯母」と一緒に住んでいる若い女性が数作に登場します。作者は早くに両親を亡くした後、厳格な伯母と祖母に育てられたとのことで、この特に優しくも無く、愛想もなく、物語ににはそれほど関わってこない「伯母」の登場は作者の心の内の深い拘りを感じます。
とすれば、伸び伸びと作り話で客を翻弄し客がホラーなその話に仰天して逃げ帰った理由をまた、作り話で説明してしまうこの「姪っ子」は彼の姿を映したものか、彼の「理想」であったのかもしれないな、と思います。結構窮屈に育ち、想像力が彼の逃げ道だった、そんな気がするのです。
現実的な日常の話もある一方、ファンタジー的な作品もありラストまでそのテイストが解りません。
夢や想像、誰かの「作り話」で終わるかと思ったら、そう来るか?というものまで様々。
誤解があってもそれが解けたりすれ違いがあってもそれは相手を想うがこそ、というO.ヘンリ的な設定に近そうでも、その後にまた皮肉などんでん返しが用意されていたりも。
一篇目の「二十日鼠」では他人への気遣いや不要な心配を、次の「平和的玩具」では子供の「戦争ごっこ好き」を平和な遊びに導こうとする大人の無駄な努力を笑い飛ばし、そんな21編を読んでいく内、ただ笑っても居られないような展開の物語も登場します。
「おせっかい」は題名では解らないラストシーンです。(こんな題名でいいのか疑問でもあります)
作品に多く出て来る裕福な青年の領地に関わる長年のいがみ合い。窮地に追い込まれた二人がやっと和解して、幸せな未来を描いたところ…という終わり方は衝撃でした。
良い結果があると思っていたことが逆に、という話は他にもあります。人生はそうそう上手くいかないものだという作者の人生観がくっきり見えるように思います。
注目を集めたい一心で「作り話」をし失敗する平凡な男の話もあるところを見ると 物語を創作することですら絶対に人を幸せにするとも限らないという何だか救いようの無い作者の人生観をも感じます。また「作り話」と子供の登場では「話し上手」という一編もあり、列車に乗り合わせた騒がしい子供たちが聞いて面白がった話は、親の聞かせたがるような「教訓的で」「良い」物語ではなかったというのも、作者にとってただの他人ごとの話ではなさそうです。
でも、きっとそんな作品を書きながらも「自分」や「人間」を突き放せないんだろうな、とも。
ブラックユーモア、風刺、皮肉、バッドエンド、冷笑、失笑。サキの短編には黒い感情がてんこ盛り。
それでも作者はそういう愚かしくも救いようのない「人間」が好きで、そしてそういう「人間」や、皮肉で悲惨だったりもする人生をも楽しんで描いているように思います。
この「短編集」は翻訳者の解説によると、サキの各種のテイストをまんべんなく読めるように選んだ作品集で「傑作選」というわけではないみたいです。なので、この本でサキの描く世界を気に入ったら、もう少し深堀りして他の作品も読んでみるとよいと思います。
作り話の上手なヴェラという.「伯母」と一緒に住んでいる若い女性が数作に登場します。作者は早くに両親を亡くした後、厳格な伯母と祖母に育てられたとのことで、この特に優しくも無く、愛想もなく、物語ににはそれほど関わってこない「伯母」の登場は作者の心の内の深い拘りを感じます。
とすれば、伸び伸びと作り話で客を翻弄し客がホラーなその話に仰天して逃げ帰った理由をまた、作り話で説明してしまうこの「姪っ子」は彼の姿を映したものか、彼の「理想」であったのかもしれないな、と思います。結構窮屈に育ち、想像力が彼の逃げ道だった、そんな気がするのです。
現実的な日常の話もある一方、ファンタジー的な作品もありラストまでそのテイストが解りません。
夢や想像、誰かの「作り話」で終わるかと思ったら、そう来るか?というものまで様々。
誤解があってもそれが解けたりすれ違いがあってもそれは相手を想うがこそ、というO.ヘンリ的な設定に近そうでも、その後にまた皮肉などんでん返しが用意されていたりも。
一篇目の「二十日鼠」では他人への気遣いや不要な心配を、次の「平和的玩具」では子供の「戦争ごっこ好き」を平和な遊びに導こうとする大人の無駄な努力を笑い飛ばし、そんな21編を読んでいく内、ただ笑っても居られないような展開の物語も登場します。
「おせっかい」は題名では解らないラストシーンです。(こんな題名でいいのか疑問でもあります)
作品に多く出て来る裕福な青年の領地に関わる長年のいがみ合い。窮地に追い込まれた二人がやっと和解して、幸せな未来を描いたところ…という終わり方は衝撃でした。
良い結果があると思っていたことが逆に、という話は他にもあります。人生はそうそう上手くいかないものだという作者の人生観がくっきり見えるように思います。
注目を集めたい一心で「作り話」をし失敗する平凡な男の話もあるところを見ると 物語を創作することですら絶対に人を幸せにするとも限らないという何だか救いようの無い作者の人生観をも感じます。また「作り話」と子供の登場では「話し上手」という一編もあり、列車に乗り合わせた騒がしい子供たちが聞いて面白がった話は、親の聞かせたがるような「教訓的で」「良い」物語ではなかったというのも、作者にとってただの他人ごとの話ではなさそうです。
でも、きっとそんな作品を書きながらも「自分」や「人間」を突き放せないんだろうな、とも。
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電車通勤になって 少しずつでも一日のうちに本を読む時間ができました。これからも マイペースで感想を書いていこうと思います。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:225
- ISBN:9784102026014
- 発売日:1981年12月01日
- 価格:420円
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