DBさん
レビュアー:
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聖人の死を描いた絵画の本
闇の西洋絵画史、最後のテーマは「殉教」です。
殉教した聖人と同じように強い信仰を持つべきという教えのためか、宗教画のテーマの中でも重要な地位を占めていると思われる。
死を甘受する殉教者の姿が、人間の罪を贖うために自ら進んで命を犠牲にしたイエスの受難に重なるというが、最初に紹介されているのは「幼児虐殺」の凄惨なシーンだ。
キリストの誕生を三博士に聞いたユダヤの王がベツレヘムの三歳以下の男の子を皆殺しにしたという伝説ですが、殺された幼児や我が子が犠牲になった親にとっては殉教の気持ちなどなかったはずで、こうしてみるとキリスト教って死に彩られた宗教だなと思ってしまった。
そして殉教者たちのお手本となったキリストの磔刑は、ルーベンスの「キリスト昇架」の迫力ある絵が紹介されていた。
キリストの死の前に先鞭をつけた殉教者は洗礼者ヨハネで、牢内で首を切られるシーンを描いたカラヴァッジョの絵が生々しい。
ここから殉教者となった聖人の列が続くが、最初に登場するのは聖ペトロ、ローマカトリックの初代教皇であり天国の鍵を持つキリストの最初の弟子だ。
ペトロが逆さ十字にかけられて十字架が起こされる瞬間をとらえたカラヴァッジョの絵からは、躍動感と迫力が感じられる。
そして十二使徒と並んで崇拝される聖パウロは、ローマ市民だったからか斬首に処せられていた。
他にもエチオピアで王の怒りに触れて暗殺者に殺された聖マタイ、インドで布教し生皮を剝がされて殉教した聖バルトロマイ、中央アジアで布教した後に小アジアで二人の信心深い娘と共に殉教した聖フィリポ、エルサレムで殉教しなぜか800年後にスペインで遺体が発見されてサンティアゴ・デ・コンポステラ聖堂が建てられた聖大ヤコブ、イエスの兄弟か従兄弟とみなされていて撲殺された聖小ヤコブ、インドで布教し異教徒に槍で刺殺された聖トマス、X十字架で殉教した聖アンデレ、殉教したアレクサンドリアから遺体がヴェネツィアに運ばれて水の都の守護聖人となった聖マルコ。
そんな中で唯一、イエスが愛していた弟子の聖ヨハネだけは煮立った油釜に投げ込まれても毒を盛られても死ぬことがなく天寿を全うしたというのも興味深い。
さらにローマ時代から始まって中世に至るまで殉教した聖人が大勢いるが、カタリ派を弾圧して返り討ちにあい暗殺されたヴェローナの聖ペトロまで列聖されているのはどうなんだろう。
ちなみにローマ帝国の次に殉教者を多く出したのは実は日本で、江戸時代までに日本で殉教した宣教者や信者の数は四万を下らないという。
これに宗教戦争の死者も加えれば、信仰のために死んだ人たちで天国は溢れかえっているのだろう。
殉教した聖人と同じように強い信仰を持つべきという教えのためか、宗教画のテーマの中でも重要な地位を占めていると思われる。
死を甘受する殉教者の姿が、人間の罪を贖うために自ら進んで命を犠牲にしたイエスの受難に重なるというが、最初に紹介されているのは「幼児虐殺」の凄惨なシーンだ。
キリストの誕生を三博士に聞いたユダヤの王がベツレヘムの三歳以下の男の子を皆殺しにしたという伝説ですが、殺された幼児や我が子が犠牲になった親にとっては殉教の気持ちなどなかったはずで、こうしてみるとキリスト教って死に彩られた宗教だなと思ってしまった。
そして殉教者たちのお手本となったキリストの磔刑は、ルーベンスの「キリスト昇架」の迫力ある絵が紹介されていた。
キリストの死の前に先鞭をつけた殉教者は洗礼者ヨハネで、牢内で首を切られるシーンを描いたカラヴァッジョの絵が生々しい。
ここから殉教者となった聖人の列が続くが、最初に登場するのは聖ペトロ、ローマカトリックの初代教皇であり天国の鍵を持つキリストの最初の弟子だ。
ペトロが逆さ十字にかけられて十字架が起こされる瞬間をとらえたカラヴァッジョの絵からは、躍動感と迫力が感じられる。
そして十二使徒と並んで崇拝される聖パウロは、ローマ市民だったからか斬首に処せられていた。
他にもエチオピアで王の怒りに触れて暗殺者に殺された聖マタイ、インドで布教し生皮を剝がされて殉教した聖バルトロマイ、中央アジアで布教した後に小アジアで二人の信心深い娘と共に殉教した聖フィリポ、エルサレムで殉教しなぜか800年後にスペインで遺体が発見されてサンティアゴ・デ・コンポステラ聖堂が建てられた聖大ヤコブ、イエスの兄弟か従兄弟とみなされていて撲殺された聖小ヤコブ、インドで布教し異教徒に槍で刺殺された聖トマス、X十字架で殉教した聖アンデレ、殉教したアレクサンドリアから遺体がヴェネツィアに運ばれて水の都の守護聖人となった聖マルコ。
そんな中で唯一、イエスが愛していた弟子の聖ヨハネだけは煮立った油釜に投げ込まれても毒を盛られても死ぬことがなく天寿を全うしたというのも興味深い。
さらにローマ時代から始まって中世に至るまで殉教した聖人が大勢いるが、カタリ派を弾圧して返り討ちにあい暗殺されたヴェローナの聖ペトロまで列聖されているのはどうなんだろう。
ちなみにローマ帝国の次に殉教者を多く出したのは実は日本で、江戸時代までに日本で殉教した宣教者や信者の数は四万を下らないという。
これに宗教戦争の死者も加えれば、信仰のために死んだ人たちで天国は溢れかえっているのだろう。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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