休蔵さん
レビュアー:
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神社なんかを建てるのは宮大工と思っていたけど、国宝・重要文化財(建造物)の修理の多くは文化財建造物保存技術協会の主任技術者が監理して進めるという。本書はその団体が開いたシンポジウムの記録集。
滋賀県湖南市の常楽寺には国宝の三重塔があるという。
その修理には4億円以上の資金を要するという見積もりが出されており、国や県の補助を受けたとしても寺は4000万円ほどを自己負担しなければいけなくなると報じられていた。
その多額の修理費を工面するため、寺は所有していた重要文化財の「絹本著色浄土曼荼羅図」を文化庁に2億円で売却することを決めたとのこと。
えっ?本当に?
国が接収もとい国に売却するのか?
信仰の対象として大切に守られてきたものを?
美術品として??
こんなニュースに接したとき、たまたま本書を読んでいた。
文化財建造物の修理に関するもので、文化財建造物保存技術協会が監修・編集している。
同協会で平成26~28年に実施した3回のシンポジウムをまとめて書籍化したものである。
初回のテーマは「保存修理の理念とあり方」、第2回目が「文化財建造物修理の新たなる展開~近代化遺産の保存修理」、そして「木造建造物保存修理技術の特色」で締める。
このなかで韓国の事例を紹介しており、国宝・重要文化財建造物の修理は、ほとんどの場合が国が費用を持つとあった。
しかも、修理期間も短くし、修理費も抑える特徴があるという。
それぞれの国でやり方はあると思うが、寺が国宝の建造物を修理するため、檀家さんたちが収めたと思われる重要文化財の絵図を国に売却せざるを得ない構図は、いかがなものか?
これは当たり前のことなのか?
本書の監修・編集をつとめた文化財建造物保存技術協会は、同協会のウェブサイトによると昭和46年に財団法人として設立してから国宝・重要文化財その他文化財建造物などの保存修理における設計管理業務に携わってきた団体とのこと。
保存修理の中核となる専門性の高い技術者技能者の教育・養成も行っているそうだ。
本書には保存修理の歴史と現状や理念、日本建築の特徴など、さまざまな観点からの報告が掲載されている。
先にあげた韓国の事例とともにヨーロッパにおける木造建造物の修理の考え方や実践の紹介もある。
本協会が多くの国宝・重要文化財建造物の保存修理に尽力し、それを私たちが楽しんでいることは間違いなく、ありがたいと思う。
国宝・重要文化財は国民の共有財産という。
しかしながら、それを維持管理し、時が来たら大規模な保存修理を行うのは所有者の責任となる。
もちろん、国や都道府県、市町村の補助を受けることになるようだが、適切な内容の修理が求められる。
そのため、所有者の考え方を凌駕するような内容の修理が行われ、その負担を所有者が負うことになるということもあるのだろう。
それが冒頭にあげた報道で、国宝建造物の修理のために需要文化財の絵図を国に売却ということに繋がったと考える。
国宝の三重塔も重要文化財の絵図も、寺院が勝手に建てたり、描かせたりしたわけではあるまい。
さまざまな立場の檀家の浄財という形で寺院にもたらされたもので、それを大切に守り継いできた。
そのために美術工芸品のほうは売却・・・
本書にこのような内容に対する解は記されていない。
国宝・重要文化財建造物を守り継ぐことは大切で、国民の共有財産と言う名目のもと、税金を投入することも仕方ないとは思う。
しかしながら、信仰の対象として寄進されたものを手放さざるを得ないのなら、少しばかり方策を練る必要があるのではないか。
文化財の保存修理でも特別に多額の費用を要する建造物に関わってきた本協会に、この現状に対する考え方を議論するシンポジウムを開催して書籍化する試みを期待したい。
その修理には4億円以上の資金を要するという見積もりが出されており、国や県の補助を受けたとしても寺は4000万円ほどを自己負担しなければいけなくなると報じられていた。
その多額の修理費を工面するため、寺は所有していた重要文化財の「絹本著色浄土曼荼羅図」を文化庁に2億円で売却することを決めたとのこと。
えっ?本当に?
国が接収もとい国に売却するのか?
信仰の対象として大切に守られてきたものを?
美術品として??
こんなニュースに接したとき、たまたま本書を読んでいた。
文化財建造物の修理に関するもので、文化財建造物保存技術協会が監修・編集している。
同協会で平成26~28年に実施した3回のシンポジウムをまとめて書籍化したものである。
初回のテーマは「保存修理の理念とあり方」、第2回目が「文化財建造物修理の新たなる展開~近代化遺産の保存修理」、そして「木造建造物保存修理技術の特色」で締める。
このなかで韓国の事例を紹介しており、国宝・重要文化財建造物の修理は、ほとんどの場合が国が費用を持つとあった。
しかも、修理期間も短くし、修理費も抑える特徴があるという。
それぞれの国でやり方はあると思うが、寺が国宝の建造物を修理するため、檀家さんたちが収めたと思われる重要文化財の絵図を国に売却せざるを得ない構図は、いかがなものか?
これは当たり前のことなのか?
本書の監修・編集をつとめた文化財建造物保存技術協会は、同協会のウェブサイトによると昭和46年に財団法人として設立してから国宝・重要文化財その他文化財建造物などの保存修理における設計管理業務に携わってきた団体とのこと。
保存修理の中核となる専門性の高い技術者技能者の教育・養成も行っているそうだ。
本書には保存修理の歴史と現状や理念、日本建築の特徴など、さまざまな観点からの報告が掲載されている。
先にあげた韓国の事例とともにヨーロッパにおける木造建造物の修理の考え方や実践の紹介もある。
本協会が多くの国宝・重要文化財建造物の保存修理に尽力し、それを私たちが楽しんでいることは間違いなく、ありがたいと思う。
国宝・重要文化財は国民の共有財産という。
しかしながら、それを維持管理し、時が来たら大規模な保存修理を行うのは所有者の責任となる。
もちろん、国や都道府県、市町村の補助を受けることになるようだが、適切な内容の修理が求められる。
そのため、所有者の考え方を凌駕するような内容の修理が行われ、その負担を所有者が負うことになるということもあるのだろう。
それが冒頭にあげた報道で、国宝建造物の修理のために需要文化財の絵図を国に売却ということに繋がったと考える。
国宝の三重塔も重要文化財の絵図も、寺院が勝手に建てたり、描かせたりしたわけではあるまい。
さまざまな立場の檀家の浄財という形で寺院にもたらされたもので、それを大切に守り継いできた。
そのために美術工芸品のほうは売却・・・
本書にこのような内容に対する解は記されていない。
国宝・重要文化財建造物を守り継ぐことは大切で、国民の共有財産と言う名目のもと、税金を投入することも仕方ないとは思う。
しかしながら、信仰の対象として寄進されたものを手放さざるを得ないのなら、少しばかり方策を練る必要があるのではないか。
文化財の保存修理でも特別に多額の費用を要する建造物に関わってきた本協会に、この現状に対する考え方を議論するシンポジウムを開催して書籍化する試みを期待したい。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント
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- 出版社:山川出版社
- ページ数:0
- ISBN:9784634520264
- 発売日:2019年04月14日
- 価格:12524円
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