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休蔵さん
休蔵
レビュアー:
「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる」とのことを理念にかかげたNIPPONIAの取り組みを紹介する1冊。理念実現のための具体的な事業が町をあげての宿泊事業である。
 人口減少に過疎化、少子高齢化、空き家問題など、現代的な問題は地方に大きな影響を及ぼしている。
 外国人観光客を取り込むことで外貨を稼ぎ、経済的な発展を推進する動きがあるものの、観光公害という現象として跳ね返ってきている始末で、有名な観光地への来訪者の集中を回避する工夫が求められよう。
 そんな様々な現代的問題への対応として、NIPPONIAという取り組みがあるそうだ。
 NIPPONIAの理念は「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる」とのこと。
 その理念を実現するために、町をあげての宿泊事業がある。

 NIPPONIAが取り組む宿泊事業は、新しい宿泊施設を建設するというものではない。
 集落にある複数の空き家を宿泊施設や飲食店等に改修するというもので、分散型ホテルという取り組みも行っているようだ。
 それを集落外の人材だけで推進するわけではなく、できるだけ集落内の人材で運営まで持っていこうというもの。
 自立した集落作りは、やがて集落に移住する人を呼び込むことにも繋がると期待される。
 そこまでうまく進むことができると、集落の人口減少や過疎化という問題を回避することに繋げることができる。
 そして、なにより空き家問題の解決にも直結する。
 稼ぐことができれば、少子高齢化問題にもメスを入れることになるだろう。

 この取り組みは、2025年までに50か所を目指すという。
 ちなみに本書が刊行された2022年8月時点で31か所が開発され、165棟の建物が宿泊施設や飲食店等に改修されている。
 そして、開発の分だけ雇用を生み出していることになる。

 さらに、本書では山梨県小菅村や兵庫県丹波篠山市、愛媛県大洲市での実践例を紹介する。
 NIPPONIAは地域の歴史的背景を活かした開発を心がける。
 そのため、空き家を宿泊施設に改修した分散型ホテルの造成という統一テーマで開発を進めたとしても、地域ごとにまったく違う特徴を有した取り組みに繋がっていることがよくわかる。
 東京一極集中という状況で忘れがちな日本各地の個性を再認識することもできる。
 そして、このことはNIPPONIAとしての開発がまだまだ広げていくことができることも示していよう。
 有名観光地にばかり観光客が集中する、なんとも残念な事態も回避することに繋がるに違いない。
 もちろん、ノウハウが蓄積されつつある現状においても、NIPPONIAとしての開発を進めていくこと、そして経済的成功を収めることは、相当困難だと思う。
 ただ、どんな地域にも開発の余地があることを示してくれた功績は大きい。
 
 NIPPONIAの取り組みの重要なところは、ビジネスとして成功させることを至上命題としていることだろう。
 その点、行政におんぶで抱っこ状態の地域開発とは一線を画す。
 外部から理想を掲げた枠組みを設置するだけの試みとも異なる。
 地域開発は、地域の経済的自立を実現してこそ評価されるべき。
 NIPPONIAは宿泊地の開発だけではないと著者は言う。
 地域固有の歴史や文化を背景としたさまざまなコンテンツを開発することができるはずで、その内容も千差万別となるのは当然だろう。
 
 最後には31か所の既開発地が日本列島の地図に落とされている。
 見ると、いま住まうところから車で行けそうな場所が複数ある。
 まずは訪問し、魅かれたら宿泊してみよう。
 
 

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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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