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献本書評
休蔵さん
休蔵
レビュアー:
『火の環』のタイトルの意味、分かるとゾッとしました。決して絵空事ではないと気を引き締めて再読しようと思いました。
 物語はカナリア諸島からはじまる。
 突然の海底火山の噴火による大型クルーズ船ブリティッシュ号の転覆。
 この海底噴火はランサローテの空港を飛び立ったカナリア・ストリーム359便も巻き込む惨事となり、さらにはカナリア諸島でも多くの犠牲者が出ている。
 一見すると、カナリア諸島沖における海底噴火による災害で収束したかのような思った一連の事態は、世界中を巻き込む大惨事の幕開けに過ぎなかった。

 災害の連鎖は東アジアにも広がる。
 台湾、北朝鮮、インドネシア、そして日本。
 犠牲のあり方の詳細な描写は、少々辟易してしまった。
 日本における災害はことのほか詳細だった。
 日本では神奈川県南部を震源地とする大地震が発生し、さまざまな場面で被害が拡大していく様子が描かれる。
 驚くべきは物語の進み具合で、144頁までが「さきぶれ」で、次のページからは「はじまり」の章となる。
 そして、196頁から「発災」となる。
 ん?
 のんびりと読み始めてみたが、本書は“発災編”だった。
 なるほど、じっくりと進むわけだ。

 本書は世界規模のディザスター小説である。
 日本で展開する自然災害小説は日本列島内で終始する場合が多い。
 列島規模にすらならない場合がある。
 でも、本書は科学的な知見を織り込みながら地球規模の災害を描いており、絵空事として片付けることを許さない勢いがあった。
 タイトル『火の環』の意味には、相当にぞっとした。

 毎年、自然災害に翻弄されている日本列島。
 巨大地震もあれば、大雨とともに強風をもたらす台風も毎年必ず上陸する。
 線状降水帯という用語にもすっかり慣れ親しんでしまった。
 今年は豪雪被害も連日報道されたり、山林火災の恐怖も脳裏に刻まれた。
 いつ自分の身が危険にさらされてしまうか予想する術がない。
 しかしながら、日々の報道などを通じて災害について知ることは重要だろう。
 もちろん、小説も重要な教材たり得る。
 本書のような規模の災害は、どうしても想像の範囲外のもので、絵空事感が拭いきれない。
 しかし、世界規模ではなく、日本列島だけの描写に限ると、リアルな恐怖として迫ってくるはず。
 学ぶべきところも多いだろう。
 だからこそ、“発災編”以降の展開にも期待したい。
 
 
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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