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ホセさん
ホセ
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第一次世界大戦の独仏戦に駆り出された、 セネガル人兵士の独白の形をとっている。 これは「長い悪夢」だ。 いや、「長い長い呪文」かもしれない。
636 ダヴィド・ディオップ 「夜、すべての血は黒い」

第一次世界大戦の独仏戦に駆り出された、
セネガル人兵士の独白の形をとっている。
これは「長い悪夢」だ。
いや、「長い長い呪文」かもしれない。

じわりじわりと新聞書評に滲んできたので、手に取った。

俺(アルファ)は徴兵されて、戦争に赴く。
同郷の友マデンバは、敵に腹を切り裂かれて死んでいった。

俺は敵を殺すたびに、その体から戦利品を取る。
一本、二本とそれは増えていく。
俺は、味方の奴らのトーテム(守り神)になった。

同じフレーズが、繰り返し現れる。
「神の真理にかけて、・・・」
「知っている、わかっている」

詩のようだ、と最初感じたが、そのうちラップに聞こえてきた。
ゆっくりと語ってくる、暗く重い声のラップだ。

敵兵を殺すシーンも、味方が死んでいくシーンも、とても淡泊に書かれている。
敵も味方も、果ては軍医の娘までも、同じ視線で見ている。

淡々とした、冷めた視線だ。
狩人が獲物を見る感じ?
いやいや、もっと冷めているというか、普遍的だ。
神が生き物たちをを見る視線は、こんな感じなのかもしれない。

唯一、アルファの視線の温度が人並みに上がるのは、
故郷ガンディオ村の族長の娘、
同じ年のファリー・チャムとのこと。

ファリーとの出来事は、白昼夢のようだ。
ここのところだけが、悪夢ではない。

戦争文学の誉が高いが、
もっと個人的な、
もっと自分の心の深く、
暗い底の方へ潜っていくような感じを覚えたよ。

自分の心の深淵を覗きに行きたい人には、
役立つ道具になってくれるかもしれない。

遊牧民ブル族のことわざを、アルファは引用している。
「夜明けにはすでに、その日のよしあしがわかる」

(2024/12/8)
PS 国際ブッカー賞(イギリス/ブッカー賞の翻訳部門)2021年受賞。
  同賞の2016年受賞作は、ハン・ガンの「菜食主義者」。
PPS 本著の影響か、私のブログも、ラップがかってしまったようだ・・・
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ホセ
ホセ さん本が好き!1級(書評数:667 件)

語りかける書評ブログ「人生は短く、読むべき本は多い」からの転記になります。
殆どが小説で、児童書、マンガ、新書が少々です。
評点やジャンルはつけないこととします。

ブログは「今はなかなか会う機会がとれない、本読みの友人たちへ語る」調子を心がけています。
従い、私の記憶や思い出が入り込み、エッセイ調にもなっています。

主要六紙の書評や好きな作家へのインタビュー、注目している文学賞の受賞や出版各社PR誌の書きっぷりなどから、自分なりの法則を作って、新しい作家を積極的に選んでいます(好きな作家へのインタビュー、から広げる手法は確度がとても高く、お勧めします)。

また、著作で前向きに感じられるところを、取り上げていくように心がけています。
「推し」の度合いは、幾つか本文を読んで頂ければわかるように、仕組んでいる積りです。

PS 1965年生まれ。働いています。

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