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三毛ネコ
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吉川英治文学新人賞を取った警察小説です。
竜崎伸也は東大を出て、警察庁の総務課長をしている。古い考え方の人間らしく、夫は働き、妻は家のことをするべきだと思っている。息子の邦彦は、現役で一流私大に受かったのだが、竜崎は入学に反対して浪人させ、東大を受けることを勧めた。

本書の冒頭で殺人事件が起き、被害者は暴力団組員らしい。しかも、1980年代に起きた誘拐や殺人事件の実行犯の1人だった。しかし、竜崎のところにはその情報は来ていなかった。竜崎は警視庁の刑事部長の伊丹を呼んで不満をぶつけたが、伊丹は動じない。

実は、竜崎と伊丹は小学校の同級生で、竜崎はいじめられていたのだ。しかし、今では竜崎の方が上の立場にいる。

妻の冴子は、竜崎は変わっているという。世間は、テレビを中心にマスコミにコントロールされているというのが竜崎の世界観だ。国民ではなく、エリートである官僚が日本を動かしている。しかし、政治と官僚の仕事は関係ないという。国民が政治家を選ぶのだから、政治が良くならないのも国民が望んでいることなのだ。確かに、こんな建前ばかりで押し通す官僚は今では珍しい変人かもしれない。

そこへ新たな事件が起きる。最初の事件と同一の事案で逮捕された暴力団組員が銃撃された。大きな事件になると思い、準備をする竜崎だが、彼の出番は回ってこなかった。

一方、息子の邦彦は「気晴らし」と称してヘロインを使っていた。まあ、使いたくなる気持ちは分かる。勉強して一流私大に受かったのに、東大以外は大学とは認めないなどと言われては、やる気もなくなるだろう。キャリア官僚として警察庁で勤めてきた竜崎は、自分の人生は終わりだと絶望する。彼はどうこのピンチを切り抜けるのか。

キャリアというのも大変な仕事だとは思う。あまり感情移入はできないのだが、読み進めると、確かに冴子の言うように、竜崎と伊丹はいいコンビかもしれない。頭は良いが、世間からだいぶずれており、外交的ではない竜崎と、人当たりが良く、優れたバランス感覚を持った伊丹。

けっこうたくさんシリーズ作品が出ているようだ。続編も賞を取っているので、そのうち読むかもしれない。
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三毛ネコ
三毛ネコ さん本が好き!1級(書評数:873 件)

フリーランスの産業翻訳者です。翻訳歴12年。趣味と実益(翻訳に必要な日本語の表現力を磨くため)を兼ねてレビューを書いています。サッカーファンです。

書評、500冊になりました。これからも少しずつ投稿していきたいと思います。

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