三太郎さん
レビュアー:
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SF小説のタイトルで有名になった三体問題とは何だったのか。さらに相対性理論に基づいた三体問題の答えは。
三体問題というと評判になったSF小説のタイトルを連想します(僕は読んでいませんが)。ここでいう三体とは三つの互いに重力で引き合いつつ運動する天体で、これらの天体の運動を一般式で書き表せるか、というのが古典的な三体問題です。もとはニュートン力学の運動方程式を解いて一般解を得ようとしたもので、ニュートン力学では一般解はないことが証明されているそうです。
なぜ一般解が得られないかという話が初めから2/3くらいまで続くので、人によっては退屈するかも。僕が読んでいて戸惑ったのは、ニュートンの運動方程式は無論のこと、微分、二回微分や積分の説明まで極力数式を用いずに言葉だけで行っている点でした。数式が嫌いな読者への配慮かもしれませんが、いくら言葉を尽くして説明しても数式が一つ書いてある方が理解し易いのに、と思いました。
これらの古典力学の結果は後半に出てくる一般相対性理論によって一旦御破算にされるのですが、古典力学の三体問題からもいくつか面白い結果が得られていることを知りました。
数学者のラグランジュが見つけたラグランジュ点というのがあります。二つの天体(例えば太陽と木星)を結ぶ線分を底辺とした正三角形を作るとき、その頂点に当たる点がラグランジュ点ですが、この位置に三個目の天体があるとき、この三角形は安定に存在しうるというものです。そして実際にこの位置に小惑星がたまっていることが見つかったとか。
このラグランジュ点の応用として、地球と太陽とのラグランジュ点に巨大な重力波望遠鏡を設置する計画があるといいます。
さて残りの1/3はアインシュタインの一般相対性理論での三体問題です。一般相対性理論の式は複雑でそのままでは解けそうにありませんが、一般相対性理論に基づき天体の運動を記述する「EIH方程式」というものがアインシュタインと共同研究者によって導かれました。これを解くと一般相対性理論に基づく近似解が得られます。
驚くべきことに、EIH方程式から得られたラグランジュ点は正三角形の頂点から少しずれていました。古典的なラグランジュ点は相対性理論による補正がない場合の近似解だったとか。
最後は重力波の発生を考慮した三体問題についてです。重力波を考慮すると上の三角形は相似形を保ったまま次第に縮まっていくという計算結果が得られました。発生する重力波のシミュレーションも可能だとか。ただしまだ三体の恒星からの重力波は見つかっていないとか。
ところで、僕が三体問題と聞いて最初に連想したのはヘリウム原子核の周りを回っている二個の電子の軌道とエネルギー準位の計算についてでした。これは重力ではなくてクーロン力が支配する量子力学の話ですが、二体問題つまり水素原子(一個の原子核と一個の電子)のシュレディンガー方程式はそのまま解けるのに、三体問題つまりヘリウム原子では解けないのです。実際にはこれは摂動法という手法を使って計算できます。惑星の軌道計算でも摂動法が使われているはずですが、本書ではそのあたりの説明は省かれているようでした。
なぜ一般解が得られないかという話が初めから2/3くらいまで続くので、人によっては退屈するかも。僕が読んでいて戸惑ったのは、ニュートンの運動方程式は無論のこと、微分、二回微分や積分の説明まで極力数式を用いずに言葉だけで行っている点でした。数式が嫌いな読者への配慮かもしれませんが、いくら言葉を尽くして説明しても数式が一つ書いてある方が理解し易いのに、と思いました。
これらの古典力学の結果は後半に出てくる一般相対性理論によって一旦御破算にされるのですが、古典力学の三体問題からもいくつか面白い結果が得られていることを知りました。
数学者のラグランジュが見つけたラグランジュ点というのがあります。二つの天体(例えば太陽と木星)を結ぶ線分を底辺とした正三角形を作るとき、その頂点に当たる点がラグランジュ点ですが、この位置に三個目の天体があるとき、この三角形は安定に存在しうるというものです。そして実際にこの位置に小惑星がたまっていることが見つかったとか。
このラグランジュ点の応用として、地球と太陽とのラグランジュ点に巨大な重力波望遠鏡を設置する計画があるといいます。
さて残りの1/3はアインシュタインの一般相対性理論での三体問題です。一般相対性理論の式は複雑でそのままでは解けそうにありませんが、一般相対性理論に基づき天体の運動を記述する「EIH方程式」というものがアインシュタインと共同研究者によって導かれました。これを解くと一般相対性理論に基づく近似解が得られます。
驚くべきことに、EIH方程式から得られたラグランジュ点は正三角形の頂点から少しずれていました。古典的なラグランジュ点は相対性理論による補正がない場合の近似解だったとか。
最後は重力波の発生を考慮した三体問題についてです。重力波を考慮すると上の三角形は相似形を保ったまま次第に縮まっていくという計算結果が得られました。発生する重力波のシミュレーションも可能だとか。ただしまだ三体の恒星からの重力波は見つかっていないとか。
ところで、僕が三体問題と聞いて最初に連想したのはヘリウム原子核の周りを回っている二個の電子の軌道とエネルギー準位の計算についてでした。これは重力ではなくてクーロン力が支配する量子力学の話ですが、二体問題つまり水素原子(一個の原子核と一個の電子)のシュレディンガー方程式はそのまま解けるのに、三体問題つまりヘリウム原子では解けないのです。実際にはこれは摂動法という手法を使って計算できます。惑星の軌道計算でも摂動法が使われているはずですが、本書ではそのあたりの説明は省かれているようでした。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:講談社
- ページ数:0
- ISBN:9784065228449
- 発売日:2021年03月18日
- 価格:1100円
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