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たけぞう
レビュアー:
想像を超えた傑作です。
書誌情報では内容がよく分からないです。芥川賞受賞作なので、著者のインタビューなどのいろいろな情報が出回り、どうやら体のくっついた人の話らしいことが伝わってきます。著者が元医師だから、医学的に関心を持っていてという影響もあったのでしょう。そんな特殊設定にみえます。悪趣味だったら嫌だなと敬遠気味でしたが、よい評判もあったので読んでみることにしました。

傑作でした。驚きました。自分の想像を超えていました。専門的知見がある人が書くと、特殊設定でも冷静に伝えることができるのがよかったのだと思います。設定の奇抜さよりも、人間観察の深さにつながる部分があり、読み手が人間の尊厳について考えてしまうという、哲学的な思索を促すところが非常に気に入りました。

最近の芥川賞受賞作は特殊設定が多いように思いますが、大事なことは作品が人間性を書けているかであり、そういう意味で楽しめる作品が多いですね。設定に揺さぶられて作品世界に入れない読者もいると思いますが、なにがいいのかは難しいです。なにげない日常から構築している小説で、良作もたくさんありますし。まあ、特殊設定は読み手の受け幅を試してくるという意味で価値がありますし、芥川賞は新しさも求めていますし、この作品にも実際そういう良さがありました。

作品紹介や書評では、設定の詳細は明らかにされていません。読んでからの驚きを残しておきたいと皆さん思ったのでしょう。わたしも同じくです。

体がくっついているというと、ベトナムのベトちゃんドクちゃんを思い出します。作品中には、それ以外にもいることが書かれています。体が混じりあっていても、人格が二人なら、極めて距離の近い他人という関係になります。でも、食べ物の味は共有するし、熱い、痛いも共有です。しかし、感じ方は二人で違うという状態です。

文中では語り手が頻繁に入れ替わりますが、不思議と混乱しません。二人なのか一人なのか、混沌とした世界を見事に描いていると思うのです。途中、哲学的に思考が暴走する場面があるのですが、学術論文的なのに面白いという、不思議な読みごこちがありました。

著者の他作品も読もうと思います。先行書評で気になっているものがありますし。素晴らしい書き手の登場に拍手を送ります。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2024-11-23 16:40

    図書新聞掲載おめでとうございます。
    芥川賞受賞作品のレビューで載ってしまうところがまたすごい!?

  2. たけぞう2024-11-23 21:24

    >かもめ通信さん
    ををっ!? いま確認してきました。情報ありがとうございます。図書新聞さん、久しぶりですねー。Web媒体があることを今回知りました。これに載ると、図書館員さんが見てくれるので、嬉しいですね。

  3. くにたちきち2024-11-27 15:45

    たけぞうさん:「素晴らしい書き手の登場に拍手を送ります。」との最後の一言に、「図書新聞」がしびれて、とられたようで、なかなか書けない一言です。おめでとうございます!
    これからのさらなるご健筆を祈ります。

  4. たけぞう2024-11-28 14:17

    >くにたにきちさん
    ありがとうございます。書いているうちに自然と出た表現でして、伝わった感じがして嬉しいです。

  5. No Image

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